第24話 撮影依頼
「で、俺は何が悲しくてお前とデートしないといけないんだ?」
昼休み。
「言った筈だぜ。もう一つは彼女との繋がりを結ぶことが出来れば話してやるってな」
「それがこないだの告白
「そういうことだ。晴れて俺も宿泊部に入信することが出来たし、本格的にやりたいことをやろうと思ってな」
「入部な」
宗教はクリムゾンティアだけで十分だ。
俺達は今、客観的に見て学校における不良生徒と化している。
理由は単純明快。普段は立ち入り禁止場所に設定されている屋上に、無断で入っているから。
しかし俺が思うに、これに関しては学校側も悪いと思う。屋上は基本的に閉鎖されていることもあり一度は立ち入ってみたくなる場所。そんなところにたかだか一メートルやそこらの鍵付きバリケードが有ったとて意味を成すとは思えない。せいぜいここからは入ってはいけませんよと意味づける、目印程度の役割だろう。
そんな場所で俺達は二人並んで寝そべっている。柵なども特にないため安定した楽な体勢を取るためにはこのくらいしかなかった。相手が女子なら、授業を抜け出して二人で……的なデートっぽさも出るのに、よりにもよって何故コイツが相手なのか。
折角の好シチュエーションも台無しである。
「前に少し話したんだが、俺は
「そう言えばそんなことも言ってたな」
「だろ?そんで俺は思ったんだ。ここは月涙さん専属の写真家としての俺の才能を
「俺は断固としてお前を写真家だとは認めないからな」
正直な話、腕前だけで言うなら本職の人間にも劣らない才能の持ち主だとは思う。遠近感、画角、撮影箇所に至るまで大いにセンスは感じられたからだ。ただ単純に認めたくないだけ。
てかいつの間に専属のカメラマンに昇格したんだよ。
「そう言うなよ。んで、お前に頼みがある」
「断る」
「お前は俺から渡す小型カメラで月涙さんの表情を下から撮影してくれ」
「俺にも盗撮しろってか」
「堂々と撮影しても良いぞ」
「そういう話じゃねえし、まずお前がしろよ。それこそ入部したってんなら出来るだろ?」
「お前は俺の話を一言一句覚えてないのか?」
「五言絶句程度しか覚えてねえよ」
「二〇文字か。お前のしょぼい脳みそじゃ、所詮その程度が限界か」
「今からやろうとしてることを警察に話して、しょっ引いて貰ってもいいんだぞ」
「ほう、困るじゃないか」
困るのかよ!警察に話すと危険であることは承知しているらしい。
「ただ、今回ばかりはお前にしか出来ないことだぜ。月涙さんが自然な表情を見せるのはお前と居る時だけだからな。遠目から写す場合は問題ないんだが、下からの画角となると接近する必要が出てくる。こればかりは俺もどうにもならねえんだわ」
「じゃあもうやめちまえ」
盗撮を止めてしまえば一時が万事、全て解決だ。何も苦労することはないし、困ることもない。
何の話をされるのかと思い付いてきたが、そろそろ昼休みも終わる時間。いい加減これ以上付き合っても居られないので立ち上がる。
それに従って
「さて、
「それ、顔に出るやつな。言うとすれば生命線だ」
「いいから手ぇ出せって」
言われるがまま手を出すと……。ちゃっかり小型カメラが手渡された。
「決行は今日の放課後からだ。俺は部活の時以外月涙さんの視界に入らないところからズームアップして写真を撮るから、颯希は彼女の側に居る際できる限り多くの素材を集めてくれ。それじゃ三日後のこの時間、この場所で落ち合おう。頼んだぞ」
「勝手に決めてんじゃねえ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます