第20話 一世一代、驚愕の告白1
小さな手が背中を行ったり来たりする感覚に
「おはほよよん」
まぼたい
何度も出る欠伸を噛み殺しながら問うてみる。
「それ恥ずかしくないの」
「何が?」
「……何でもない」
本人が気にしていないなら特に問題ではないしな。
「もう変態には会ってきたのか?」
「それ定着しちゃってるの……⁉今から一緒に行こうと思って
「待たせたのは
ぼやきながらも立ち上がり、
着いてみると机と椅子が二つから三つずつになり、平時なら月涙さんが座っている席はそのままに、入室する側の席の配置が変わっていた。対面型から三角形になっている。そして現在地から見て左、つまり教室で言うところの後方側に礼儀正しくきちんと座っていた。
まるで面接を受けに来たみたいだ。
「遅くなってごめん!かなり待たせちゃったよね」
月涙さんの声を聞いた
「全っ然待ってないです。つい数十秒前まで腹が痛くて、トイレに
「
「よし颯希、お前はもう用済みだ。帰れ」
「お前覚えてろよ」
やはり今から起こるのはそういうことなのか。ならば実際こいつにとってこの数分の出来事は戦場も同然なのだろう。
ただならぬ気配を感じ取ったのか月涙さんも真剣な面持ちで尾棘の前に行く。俺達の短い会話とこの場の雰囲気だけで自分がどう動くべきなのか理解出来るなんて、彼女がこんな場面に場慣れしている証拠だ。
告白された経験が一六三回というのは伊達じゃない。
「席外しててくれる?」
「へいへい」
教室を出る直前、月涙さんの方を見ると目が合った。しかしそれも刹那の出来事で、すぐに彼女の視線は尾棘の方に戻っていく。
変な奴だが俺とて短い時間でも関わりがあった身。せっかくなら難攻不落らしい月涙さんをあいつに落として欲しいと願う。
席を外すよう頼まれたもののやっぱりどうなるのか知りたくなり、扉を閉めるとそのままその場でもたれかかった。背徳感も相まって胸が高鳴り、ドアに寄り添って聞き耳を立ててしまう。
俺が離れるのを待っているのだろう。一分、二分とそよ風だけが舞う。
そして始まる。高校生活で最も熱い最高の瞬間が。
「月涙さん!」
「はい」
湧き上がる興奮。吹き荒れる激情。
さあ告白は成功するか───。
「俺に尾行許可と撮影許可をください‼」
告白。そうそれは告白には違いなかった。
ただ愛の告白ではないという一点を除けば。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます