第19話 気合
木曜日の終礼終わり。
挨拶が終わるやいなや、我先にと
最近ではこんな光景が日常茶飯事だ。恐怖しかない。
ファッションの話、食事の話、アニメの話、学校の話、好きな人の話。
彼女に振られる話は総じてバラバラで、ジャンルも
現実逃避と言ってしまえばそれまでだが気持ちは分からなくもないので、気が済むまで勝手にやれば良いと思う。俺は部室で彼女を待つべく、鞄の中に教科書やら筆箱やらを仕舞っているとそこに
「セッティングありがとよ。俺先に特別準備室に行って待っとくから、月涙さんの手が空いたら伝えといてくれ」
残らないといけなくなってしまった……。まあ仕方ないか。
「分かった。ちゃんと場を作ってやったんだから約束守れよ?」
「心配するな、もう消してあるぜ」
「やけにあっさりしてんだな、大事なもんじゃなかったのか?」
「大事だったし、辛かったぜ。二一八人の月涙さんを殺してしまうようで、身を
「身を切る思いだろ!」
月涙さんの写真見て
「まあ見てろ。彼女らの死は無駄にしない」
「死んでねえよバカ。さっさと行ってろ」
やけに自信満々な顔に腹が立つ。
しっしっと追い払い月涙さんの方へ向き直る。この談笑が終わるまで待たなくてはいけない。暇を持て余した俺は顔を机にどっぷり浸け、浮上してきた死体のような体勢でどんな会話が成されているか
「
「違う違う、そんなんじゃないからっ!そういう
「このあと時間ある?今から俺と学内カフェ行かない?」
「この後用事があるの、ごめんね
「その髪型似合ってる。すっごく可愛い!」
「ありがとう~。
「是非一度北館横の部室棟へ足を運んでいただけないでしょうか?我々クリムゾンティアの面々は貴方がお越しになるのを心待ちにしているのです」
「ねえ
平均的に容姿についての
普段は胡桃色の髪をポニーテールに結わえている月涙さんだが、珍しく今日は
この後のことを知っている身としては気合いを入れるための勝負髪型なのだろうと予測出来るものの、そうじゃない奴にとってはイメチェンか何かだと勘違いするのも無理はないだろう。
彼女は歓談に
背中をさする心地良い春風のなすがままに俺はスッと目を閉じた。
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