第14話 尾棘綱道脅しの儀式3
「なんで
「彼女の姿を見ているとバリッときたんだ」
「ビビッとじゃねえのな」
電流強すぎだろ。
少し照れ臭そうに、いかにも普通の恋する男みたいな雰囲気を
しかも顔面偏差値は悪くないため、余計に残念感が増している。
俺の勝手なイメージだが、もし二人が付き合ったとして
「月涙さんのどういう所にバリッときたんだ?」
「あの目、あの髪、あの体。声音に仕草にあの表情。照りつけるような瞳の眩しさに焼かれ、滑らかな
「と言うと?」
「ほら、これでもお前よりかは顔のレベルが高いだろ?これまで何人かと付き合ってきたけど、そんな熱を帯びて付き合うほどの相手は居なかったんだよな」
「お前一旦元カノ全員にしばかれてこい」
そんで俺の顔をさらっと普通みたいに言うな。
「勘違いするなよ?俺は別に元カノ達に対してぞんざいな扱いをしたことは無いぜ」
「そういう問題じゃないだろ」
どれだけ丁寧に接していたとしても本人達にしてみれば、相手の端々から漏れ出る興味の無さが感じ取れてしまうのではないかと思う。
付き合った事なんて無いから知らんけど。
「ならお前は他に何で
「予測できないところ、自由なところ」
「自己紹介か?」
「はっ、俺が自由だと?」
「飛べない鳥がストーカーなんて出来るか」
「違う。俺は空を飛んでるんじゃない、海を泳いでるだけだ。アニメやドラマのように完璧超人ってのは違うにしても、無難に、
「彼女が出来ずにあくせくしている男子中高生にぶん殴られろ」
そこに苦しんでいる学生がどれだけ居ると思っているのだろうか。中学や高校時代に付き合ったことがあるってだけでも相当誇れることだと思う。
その筈なのだが
「面白みがないのさ。人は辛いこととか苦しいことは避けたがるかもだが、そういうのがあってこそ、乗り越えたときに達成感や喜びを感じられる。けど大抵のことが思い通りに進む俺にはそれが無かったんだ」
思うがままの人生。自由な人生。それは
「だから俺の思い通りにならなさそうなところが素敵だし、彼女が大勢の人に詰め寄られて、半分泣きそうになりながらオロオロしている姿を見ると自由だなって思う。俺はそういうのを適当に
ある程度の自由が確約できてしまう故の不自由さ。それがこいつの悩みであり、
「それにこれは写真家になって分かったことだけどな、月涙さんはお前と居る時だけに見せる類いの表情があるんだ。多くの学生は彼女の容姿や可愛さばかり見て惚れ込んでいるんだろうが、大多数が気づかないような彼女のそんな一面も多くの人に知って欲しい。ほら、自分の趣味とか好きなモノとかを他人にも共感して貰いたくなるあれだ」
俺の前でだけ見せる表情とはどんなものだろう。喜びや悲しみ、楽しみなどなど表情にも多種多様な分類がある。
それと俺はお前を写真家だとは絶対に認めない。
「まあお前が月涙さんに入れ込んだのは分かったけど、俺としてはどうでも良いんだわ。それよりあの写真はよ消せ?」
「ああ、あれは消してやるよ。代わりにお前に頼みたいことが二つある。一つは月涙さんと会う約束を取り付けること、もう一つは彼女との繋がりを結ぶことだ。出来れば話してやる」
「最初にそういうのは直接頼めって言わなかったか?」
「そうじゃなくて二人で会う場面を作って貰いたい。話したこともない奴からいきなりそんなことを頼まれたら月涙さんもビビると思うし是非頼む。場所は何処でも良いけど、とにかく誰も入ってこない場所がいいな。時間はそうだな。今日が月曜だから今週の木曜、宿泊部あるだろ?その時間帯でどうか聞いておいてくれ」
「俺が断ったら?」
「明後日の朝一で月涙さんを抱いてる写真の
「月涙さんに断られたら?」
「明後日の朝一で赤ちゃんボイス、甘噛みボイス、通常ボイスの三点お買い得ボイスセットをCDに焼き増ししたものがクラスメイト全員の手元に渡る未来が見える」
俺も月涙さんも
こんなの拒否してもクラスメイトが得するだけじゃねえか。ほぼほぼ巻き込まれただけの彼女が最も
「ああ、あと月涙さんが俺との約束を受けてくれるようなら、撮った写真と動画は消すってのも伝えといてくれ」
「分かった」
「脅したからな」
「そこは嘘でも頼んだからなって言っとけ」
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