第10話 おぎゃロミとおぎゃジュリ1
翌日。
終礼が終わると俺は迷いのない足取りであの教室へ向かっていた。昨日のインパクトが強すぎたせいか、体が行く道を覚えてしまっている。
今日は正式な部活動の日。何をするのか知らないが少しだけ、ほんの、ごく僅かにだけ楽しみにしている自分が心の中にいる。俺だって男子だし、
付き合う付き合わないはともかくとして、女子と同じ空間に居られることを嫌がる男子なんていないというのが世の
可愛い子なら尚更だ。
何だかんだ言いながらも俺は彼女に
あるいは……。
昨日と同じく左から数えて四番目の窓の前に彼女はいた。本日もまた遠く遠く、
「よ」
「おはほよよん、久しぶりっ♪」
俺が声を掛けるとスケートでもしているかのようにくるんっと軽やかな半回転を決め、手を振りながら返事をしてくれる。
「たかが一〇分ぶりだろ」
「だね。でもこういう機会って何回あっても楽しくない?」
「一日一回で十分だ」
入ってきた扉側の机に鞄を引っかけ、椅子を引いてゆったりと座る。俺が座るのとほぼ同時のタイミングで
「多分嬉しかったんだと思う。部活、来てくれるって信じ切れてなかったからさ」
「ま、気まぐれが三割五分四
「打率良いねえ、四番バッターみたい。ちなみに残りの六割四分六厘は?」
「言わない」
「言えない?」
「言わない」
「そういうことにしといてあげる」
「ならそう言うことで───」
「なんて私は言わないからね?」
彼女ははにかみながら腕を伸ばしてきて、俺の頬に指を押し込む。冷たくて、小さくて、優しい手。恐らく爪を立てないように調整してくれているのだろうが痛みはなく、手触りというか肌触りというか、柔らかくもっちりとしたお餅のような感触がある。
気持ちが良い。
「そんなまじまじと私の事を見つめちゃってどしたどした~?
「
「ほよ、遠慮しなくてもいいのに」
遠慮とかの問題じゃ無いと思う。それに会って間もない男子に対して自分の肌を触っても大丈夫とか、月涙さんの頭の方が大丈夫かと少し心配だ。警戒心が無さ過ぎると言うか何というか。
スキンシップが多く、そういったことを深く気にしない女子はいると思う。けど、その行為が男子にとって大きな勘違いを引き起こす元であることは、深く心に刻んでおくべきだ。
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