第31話 女、女ども!
リチャードは傷病室に入るとすぐに、忠臣リー・トマスの方へ
リー・トマスは寝床の白いシーツの上で
「リー、無事で何よりだ。傷病室は気に入ったか?兵士のために作ったのだが。命を懸けて戦ってくれている」
リチャードが気さくな口調で言った。
「壁も天井も何もかも真っ白で気が
リーが
たしかに部屋の中は全て白だった。死人も病室があまりに
「おかげで傷も早く治った。明日には妻と娘を連れて領地に帰るつもりだ」
リーはそう言い放つと、チラリとリリィの方を見た。そう言えば彼はまだ皇女に
「ずいぶん急だな。アビゲイルもメアリーも連れ帰ってしまうのか。それは困るな。ヘレナが許すはずがない」リチャードがそう言って、静かにしてる娘の方を振り向いた。「リリィ、お前もメアリーと別れるのはつらいだろう?どうして二人を都から連れ去ろうなんて思い立った?いや、俺だってお前が
「問題は
リリィはリーの嘆きように不穏な顔をした。アビゲイルを妻としてめとったのが間違いだった、なんて。ひどく残酷な言葉だ。だが、リーの言ってること全部は理解できなかった。知らない真実があるらしい。
「アビゲイルを正妻にするよう
リチャードが文句をさえぎった。
リーが呆れるよ、とばかりに首を振る。
「どうやら二人で話し込んでいるようですね。僕たちは先に兵士たちの見舞いにまわっていましょうか」
アレックスがリーの言外の拒絶と悪意を
リリィは救われた気がした。アビゲイルやメアリーのことを思うと悲しい。父とリー・トマスに
リチャードはリリィと兵士たちの見舞いをアレックスに任せた。リーとの対話はどうやらまだ続くらしい。
「リーに何か言っちゃいけないことでも言ったの?まるでお兄さまを憎んでるみたいな顔してたわ」
リリィが歩きながら言った。
アレックスは
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