第6話 思い出の白黒写真を見つけるにゃんこ族
本を移動させて掃除をしていると。本の間に白黒の写真が挟まっています。静かに取り出すと写っているのは小さな御主人様と両親です。
「メイルさん、休憩して下さい」
突然、中二階の部屋にメイド部長さんが入って来ます。
「は、はい!」
私はビックリして写真を思わずポケットにしまいます。
「朝から仕事、仕事で疲れたでしょう、チーズケーキにハーブティーが用意できたわ」
このメイドお仕事の良い所は時々優雅な休憩時間が有ることです。さて、この写真はどうしよう……。
せっかくなので御主人様に見せてみようか?私が長考していると。ラメさんが寄って来ます。
「クンクン、恋の臭いがする。御主人様に手を出してはいけませんよ。代わりに私が慰めてあげる」
「ち、違います、痴女のラメさんと一緒にしないで下さい」
「大丈夫です。まだ、媚薬が残っています」
ダメだ……このガチ百合と話していると調子がくるう。
「では、メイルさん、この後の仕事は御主人様のお部屋の掃除をお願いします」
「中二階の掃除は?」
「あそこは何時でも掃除ができるので、御主人様のお部屋を綺麗にすることを優先するのです」
「はい」
どうしよう、いきなり、御主人様に写真を見せる機会を得てしまった。
そして、御主人様の部屋に着くと私は掃除を始めました。
……。
一瞬の沈黙の後で、私は白黒の写真を取り出します。
「この写真は何処で……?」
「中二階の本の間に有りました」
その後、御主人様は言葉を失い。明らかに悲しそうです。
「御主人様は悔しくないのですか?」
「あぁ、僕の両親は魔導列車の事故で死んだ。世間では暗殺とか面白おかしく言われているが事故死だ」
「では、何故、御主人様は軟禁されているのですか?」
「……少し、独りにしてくれないか?」
御主人様は私の問いに目をそらして呟く。ダメです。今の御主人様では何も出来ないです。
私は自室に戻ると布団をかぶって現実逃避をします。この自分自身に対する嫌悪感は白黒の写真を見つけた時点で予想されていました。
それは御主人様への愛でした。
ダメだ……お仕事の時間だ。私はベッドから、渋々はい出るのであった。メイド部長さんに頼んで他の仕事をしないと。私はメイド控室に向かいます。
すると、ラメさんがネイルアートをしています。
「ラメさん、お仕事はしなくていいのですか?」
「えー今日は有給を取る」
「では、ラメさん担当の玄関周りの掃除をしますね」
「そっか、御主人様と何かあったのね。メイド部長さんには上手く言っておくから仕事お願いね」
私は返事を返すとお仕事を始めます。そこに秘書のシラセさんがやってきます。
このタイミングでの何を話せばいいのだ。
「話しは聞きました、貴女が写真をみつけたようですね」
「やはり、御主人様の両親は暗殺されたのですか?」
「私の言葉は政府見解と同じで事故死です。しかし、悲劇なのは事故死によって御主人様に同情が集まり。結果、クーデターの旗になる可能性が出てきたのです」
「あくまでも、暗殺でないと言うのですか」
「はい、事故死です」
確かにシラセさんの話には筋が通っています。政治なんて結果がすべてです。
なら、きっと、御主人様の軟禁も解かれる日も来るはずです。
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