第10話 絶世の美少女
「(まさか俺の担当する配信者がこんな可愛い子だとは思わなかった)」
ちょっと体の線が細すぎるように見えるけど、その事を差し引いてもおつりが出るぐらい依子は可愛い。こんなに可愛い女の子を俺は今まで見たことがない。
容姿や体形を見れば、普通に女優やモデルとして活躍できる姿をしている。正直見た目だけでいえば俺好みの女の子だった。
「かっ、かわ‥‥‥」
「かわっ? 何がいいたいの?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
危ない危ない。仕事相手に対して、思わず可愛いと言ってしまいそうになった。
ここで機嫌を損ねたりしたら大変なことになる。現に目の前にいる美少女、
「啓太、もしかして今私の事を見て可哀想って言おうとした?」
「そっ、そんなわけないだろう!?」
「それなら今なんて言おうとしたのよ?」
「‥‥‥黙秘します」
「わかった。それなら今すぐこのドアを閉めるから。今日はもう帰って頂戴」
「わっ、わかった!? ちゃんと言うから、ドアを閉めるのだけは勘弁してくれ!?」
せっかく依子と会うことが出来たのに、これでは元の木阿弥だ。
だがここで俺の素直な感想を言って引かれないか心配だ。下手をすればセクハラ扱いされて、2度と会いたくないと言われる可能性がある。
「言いたいことがあるならいいなさいよ!! さっきみたいに私に対して思う事があるなら、はっきり言えばいいじゃない!!」
「わかった。依子がそこまで言うなら、俺が思った事を素直に話すよ」
「やっと啓太も自分の腹の内を見せる気になったのね」
「あぁ。その代わり俺がどんな発言をしても絶対に引くなよ」
「もちろんよ。これでも私、メンタルは強い方だから。何を言われたって大丈夫!」
そんなにメンタルが強いなら引きこもってないで外に出ろよ。相馬さんがめちゃくちゃ心配してたぞ。
でもこうなったら仕方がない。俺が依子に対して思っていたことを素直に言おう。
彼女も俺がどんな発言をしても引かないと言っていたし、何とかなるだろう。
「かっ‥‥‥」
「かっ?」
「かっ、可愛いと思ったんだよ。初めて依子の姿を見た時、正直テレビに出てる女優やモデルと同じ‥‥‥いや、それ以上に可愛いと思った」
「あっ、あんた!? 初対面の相手に何を言ってるかわかってるの!?」
「だから言うのを躊躇したんだよ!! 言い切る寸前で言葉を止めた俺の気持ちを少しは察してくれ!!」
これではただの軽薄なナンパ男だ。今の一連の発言のせいで、俺の印象が地に落ちたに違いない。
「(しかも仕事相手に対してナンパをするなんて、かなり悪質だ)」
もし相馬さんがこの光景を見ていたら、即刻クビになっていたかもしれない。
いや、かもしれないじゃないな。この事を依子が会社に報告したら、良くてマネージャーの交代。最悪の場合会社をクビになっていただろう。
「そう‥‥‥私が可愛い‥‥‥か」
「依子? どうしたんだよ? 1人でぶつぶつ呟いて?」
「何でもないわよ。それよりも早くうちに入って。こんな所で騒いでたら、近所迷惑になるでしょ」
「それもそうだな」
どうやら依子は俺が可愛いと言ったことに対して、何も思っていないようである。
彼女の顔が少しだけ赤くなっていたのもたぶん俺の気のせいだろう。今も頬に両手を当てながら、ぶつぶつと独り言を呟いている。
「さぁ入って入って。少し手狭かもしれないけど、2人でご飯を食べるぐらいのスペースはあるから」
「はいはい。お邪魔します」
手狭なんて嘘に決まってる。この前気になって依子が住んでいるマンションを調べてみたけど、俺が住んでいるアパートよりも格段に広かった。
部屋もワンルームしかない俺の部屋とは違い、風呂とトイレを除いて7部屋もある。
1番安い部屋がこういう間取りなので、高層マンションの角部屋に位置するこの部屋はもっと広いに違いない。
「(こんな立派な部屋に住んでいて、手狭なわけがないだろう。さすがに謙遜が過ぎる)」
この時の俺は依子が謙遜しているだけだと思っていた。だけど玄関に入ってすぐ、その言葉が嘘じゃない事がわかった。
「なっ、なんだこれは!?」
俺は目の前に広がる光景が信じられなくて何度も目をこすり、これが現実なのか確かめてしまう。
「痛っ!?」
「ちょっと啓太、なんで自分の頬をつねってるの?」
「悪い。何でもないから気にしないでくれ」
試しに頬をつねってみたら痛みを感じたので、今目の前で起きている事は現実世界の出来事で間違いない。
俺は目の前に広がるこの惨状を見て、その場に立ち尽くしてしまった。
------------------------------------------------------------------------------------------------
ここまでご覧いただきありがとうございます
続きは明日の7時に投稿します。
最後になりますが、この作品が面白いと思ってくれた方はぜひフォローや星評価、応援をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます