第2話 絶望の中にある希望

 部屋を出た俺はあてもなく夜の街を歩く。

 目的地なんてどこにもない。多くの人が行きかう街の中をフラフラと歩いていた。



「これからどうしよう」



 死ぬとは言ったものの、どうやって死ねばいいんだろう。

 その為の道具も揃えないといけないし、中途半端に実行した結果病院で蘇生処置を受けて、生き返ってしまっては意味がない。



「とりあえずコンビニに入るか」



 コンビニなら何でも揃ってるし、俺が求めている道具が売っているかもしれない。

 そんな安易な考えで俺は店の中へと入った。



「いらっしゃいませ!」



 色々と店内の商品を物色する中、たまたま目に入った雑誌コーナー。そこで売っていたとある雑誌が目に入った。



「あれ? この雑誌‥‥‥」



 乱雑に置かれている書籍コーナーの中にあった雑誌。

 その中で少年誌の表紙を飾っていたアイドル達が自然と目に入った。



「この表紙に映っているグループは、比良坂49のメンバー‥‥‥」



 既に引退を発表しているまゆりんは載っていないが、ここに載っているメンバーは比良坂49の主要メンバーである。

 そのメンバー達は俺が苦しんでいるのにも関わらず楽しげに笑っていた。



「何でこいつ等は俺が苦しんでるのに、こんな楽しそうに笑ってられるんだよ!!」



 仕事とはいえ、楽しそうに笑っている彼女達が憎い。

 彼女達はアイドルなんだから、ファンに一時の夢を見させるのが仕事。それは俺も十二分にわかっている。



「俺が愚かで馬鹿な奴なのはわかっている。それでものうのうと笑って、ファンに恋愛禁止と言っているこのアイドル達が許せない‥‥‥」



 たぶんこの表紙に映っている人達の中にも、俺がこうしてもがき苦しんでいる中、彼氏と夜の営みに励んでいる人もいるだろう。

 それなのに俺はこんな所で何をしているんだ? それにさっきから何でこんなに涙が止まらないんだよ、くそ!!



「くっくっくっ。あ"ぁ"っ"はぁっはっはっはっは!!」



 周りに人がいるにも関わらず狂ったように笑う。

 レジにいるコンビニの店員も俺の事をおかしな人を見るような目で見ているけど、そんなの関係ない。

 雑誌コーナーの前でひとしきり笑い終わると、さっきまで流していた涙がいつの間にか止まっていた。



「あ~~~あ。なんだか死ぬのが馬鹿らしくなってきた」



 よくよく考えてみれば事前に何の予告もなくファンを裏切って結婚報告をするようなビッチの為に、何故死ななければいけないんだ。

 俺にはもっと他にやるべきことがあるだろう。あの結婚して幸せそうに笑っているビッチより、絶対幸せに暮らしてやる。



「そうと決まればこんな所で油を売ってる暇はない」



 俺が幸せになる為には今のバイト生活を脱却して、正規の仕事を見つける必要がある。

 まずは人並みの生活をする事から始めないと、まゆりんより幸せにはなれない。



「よし!! 俺は決めたぞ!! 絶対にあのビッチ達よりも幸せになってやる!!」



 決意を新たにして、俺はこの日を境にバイト生活をやめ就職活動にいそしむことになる。

 成果が出たのは1ヶ月後。とある会社から内定をもらい、俺は久々にスーツを着てボロアパートを出た。


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