34 温泉だー! 2
「あらミィに気を使わせちゃったわね」
ミィの姿が見えなくなった後、ロサさんはそう呟いた。
それにしてもロサさん、アルバを産んだとは思えないナイスバディである。森野ハナだった頃なんて胸にバスタオル巻いても固定できずにずり落ちちゃってたもんね。
「ミィなら大丈夫ですよ。それにしてもすごい温泉ですね、全てが檜で出来ていて驚きました。石鹸やシャンプーが色々あって選ぶのも楽しかったです」
「まあぁ嬉しいわ! ここはね、私の亡き祖父が当時の花巫女さんから聞いた温泉の話を参考にして作った自慢の大浴場なのよ。十年ごとに檜のメンテナンスが必要で手間がかかるのだけど、家族全員この檜の香りが好きなのよね〜」
……まてよ当時の花巫女さんってアイビーが『それで、寝ている森野ハナを一旦仮死状態にしてこっちの世界のハナの体に魂を戻して、朝までにはこっちに戻すっていうリハビリを何度かしてたことがあって』って言ってたよね。
……私じゃん! 檜風呂伝えたの私じゃん!
「蜂蜜石鹸もそうなんですか?」
「そうなのよー! それまでは石鹸は臭い物だったらしいのだけど、蜂蜜やハーブを入れるようになったみたいなの! 蜂蜜石鹸いいわよねー、ハナちゃん使ってみた?」
……私じゃん! 蜂蜜石鹸伝えたの私じゃん!
「はいとても良かったです。ミィは白薔薇石鹸で喜んでましたよー、ロサさんは白薔薇が特にお好きなんですか?」
何気なく問いかけた質問に、いつも明るくいロサさんにしてはめずらしく神妙そうな面持ちで話をはじめた。
「アルバが小さい頃、私達の元を離れて暮らすようになってから、屋敷から明るさが消えて寂しくて塞ぎ込んでいた時期があったんだけれど、その当時白薔薇をみてアルバを思い出す話を夫にしたら、たくさんの白薔薇に囲まれたら私達の慰めになるんじゃないかって提案してくれて、そこから庭師に相談して庭園を作り変えていくうちに白薔薇の魅力にハマっちゃって……」
「そうだったんですか、いつも思ってましたけど本当に素敵なご家族ですね」
うぶっ!!!
「ハナちゃん! うちの子になりなさい!」
ロサさんの色っぽい体にむぎゅー!と抱きしめられて苦しくなる私。やめてー、のぼせちゃう!
「遠慮します……」
♦︎
温泉の後、ロサさんの案内で彫像や絵画が飾ってある画廊へと案内された。ここの絵画はロサさんが支援している画家達が描いたものらしく白薔薇の絵やこの屋敷を描いたものもあった。もしかしたら温泉で薔薇の話をしたからこの絵を私に見せたくなったのかもしれない。
小さいアルバを抱いたロサさんとサンジェルマン卿の肖像画の中のショタアルバが可愛くて眼福でした。
♦︎
お屋敷の夕食にお呼ばれして食堂にやってきた私とドラ。アルバのご家族との食事会はこれで二回目。
教皇様は別の屋敷に住んでいて、週末はこちらの屋敷に泊まりに来ることもあるけれど、ほとんどは教皇庁や神殿に寝泊まりしているらしく、今日も教皇庁に泊まっていくということで、私と一緒に夕食を食べられないことを残念がっていたという話をサンジェルマン卿が話してくれた。
「ハナさん、今日のスピーチ立派だったよ」
「ええ本当に、さすが私達の娘だったわよねぇ」
「…………」
スピーチ後にご夫婦からは労いの言葉をいただいていたと思うんだけど、再びサンジェルマン卿が褒めてくれた。
ロサさんからの娘圧にはスルーを決め込む事にした私。アルバは私が褒められたことを喜んでくれたのか笑顔をみせていた。
サンジェルマン卿はいつもの司祭服姿ではなく、首元に白のフリフリとしたジャボのついたブラウスに黒のスーツ姿、ロサさんは濃紺のマーメイドラインのドレス。アルバはサンジェルマン卿とは対照的に白シャツ黒ズボン姿で、首元には黒のジャボ。この家族が揃うとホント、絵になるなぁ。私はピンクのエンパイアラインのドレスにレモンイエローのストールを。ミィにコルセット要らずのものを選んでもらった。
テーブルの上にはトマの実サラダにクリームシチュー、ガーガー鶏の丸焼き、焼きたての白パン、ミートパイ、ステーキに葡萄やチーズなどのごちそうが並んでいる。どれも本当に美味しそう。
私の向かいに座っているアルバのナイフとフォークの使い方がとても綺麗で、食べ方が綺麗な人って素敵だなぁって見惚れてしまった。私の視線に気づいたアルバが、私が一口食べたがってるように見えたのか、ガーガー鶏の丸焼きを食べやすいように取り分けて、小皿に乗せて私に渡してくれた。食い意地張ってるように見えたのかなぁ、ショック! ……おいしいっ! モグモグ。
隣で子供用の椅子に座っているドラは基本何も食べないんだけど、普通に口から水を飲んだり木のみを食べることが出来る。子供用のコップで水をのんだりナッツ類を食べたりしてみんなのと夕食を楽しんでいる様子だ。
「アルバ、さっきロサとハナさんが一緒に温泉に入ったらしいぞ、俺達も後で一緒に入るか?」
「嫌ですよ、そもそも一緒に父様と風呂に入ったことなんて無いじゃないですか」
サンジェルマン卿にいじられたアルバは心底嫌そうな顔をしていた。
「アナタ、アルバにフラれて可哀想に……」
「なぁに冗談さ! ハッハッハ! ちょっと寂しいけどなぁ」
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