25 ドラの記憶
よいしょっとドラをバスタブから引き上げる。水分を吸収したドラの体は少しも湿っていなかった。
バスルームを後にしてソファに腰を下ろす。水やりの後といえば体から血の気が抜けたような脱力感があったけど、今回は水の量が少なかったせいかちょっと疲れたなぁくらいのだるさで済んだ。
私の後をついてきたドラが抱っこを求めて両手を上げてソファの隣に座らせてくれるのを待っている。
発光体で飛んでからソファに座ればいいじゃん、と思いながらもそんな野暮なことは言わずドラを隣りに座らせた。なんだかんだでドラのことは甘えん坊の弟ができたみたいで可愛く思っているんだよね。
本来なら日が暮れるまで治療活動して、村で夕食をいただいて帰るはずの予定が、私がやらかしちゃったせいで早く帰ってこれた。
「ねぇドラ、私の中にマナがあるって言ってたよね」
『ピカピカのマナたくさんドラー』
「私が水やりに使ってる力って何の力を使ってるの? マナ? それとも魔力?」
『マナドラ! 回復につかったのもマナドラ』
「マナがなくなるとどうなるの」
『死んじゃうドラ』
なんとなくそうなんじゃないかとは思ってたけど、やっぱりそうなんだ。はっきり言われると改めてショック……。ふとアルバが魔力は生命力と同等なんだって言ってたのを思い出す。マナを使いすぎると命の危険があるということね……。願いヶ丘で水やりした時、たくさんのマナを消費したから寝込んだんだ。ゲーム感覚が抜けず、水やりを安易に考えてたあの時の行動が自殺行為に等しかったのが今になって分かってゾッとする。
『初めてハナに会った時、マナがすごく少なかったドラ』
確かにこっちの世界に来て目覚めた時、頭が割れるように痛くてしんどかった。
「アルバからよく魔力もらってるじゃない? 私の中には魔力とマナの両方あるの?」
『アルバと一緒でハナにとっても魔素は毒ドラ〜。体の中に魔力とマナがあるのって危ないドラ。でも安心するドラ! 今はマナしか感じないドラ!』
「貰った魔力ってどうなっちゃってるの、体の中でマナに変わってるって事?」
『ドキドキ! ドラー。ハナがドキドキしてる時、魔力がマナに変わるドラ! ドキドキでマナはキラキラドラ』
何ですとー――――ー!?
手をパチパチ! と叩くドラ。
「そんなことが出来るなら、最初っから魔素を取り入れて体の中で魔力をマナに変換って出来ないのかな?」
『ハナはドラと同じドラ! 悪い魔素は体が弾くドラ』
ちょっと待って。魔素を弾く体ってことは、エネルギーの自給自足出来ないって事? この先ずっとアルバから魔力貰ってドキドキしないと生きていけないの?
「何で私の体でそんなこと出来ちゃってるの?」
『それはハナがドラと一緒だからドラ』
「一緒って何が!?」
私のステータスにハーフエルフって出てたからてっきりエルフと人間のハーフだって思い込んでたけど、違うの?私もドライアードって事?
『さっきハナからマナが注がれた時、色んなこと思い出したドラ! ドラはずーっと昔からユグドラシルの中に意識だけで存在していたドラ。ドラはハナから
「他にも何か思い出したことはある?」
『ドラ以外にもたくさんの意識があったドラ。皆はあの場所を聖域って呼んでたドラ。ドラも皆も光ってるだけで体が無かったドラ。ド……ドラ! 思い出したドラ! その中にハナがいたドラァー!』
――!!??
「私の意識がそこあったって事?」
『ハナの体が聖域にあったドラ!』
この体の持ち主について、ずっと疑問に思っていたけど、ユグドラシルの中で眠っていたって事!?
『なんで聖域にハナがいたのかドラには分からないドラ』
「その時の私ってどうだったの?」
『皆が呼びかけても返事はなかったドラ、眠ってるみたいに静かだったドラ』
「そうなんだ……」
あ〜もう情報整理しきれなくて頭がぐちゃぐちゃ。ってか、聖域ってどうなってるのーー!
『ただドラの仲間達はハナの事を愛し子って呼んでたドラ』
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