24 マナと魔素 2
「もしも、聖樹が元気になったら魔素も昔みたいに綺麗なマナになるのかな?そうしたらアルバの病気も治ったりしないかな?」
「前例がないのでわからないですね」
『そろそろドラの葉っぱも乾いてきたし、お水欲しいドラ!早速行動開始ドラ!』
このタイミングだ! と思って手汗の気になっていた手を解いた。こっそりと手をグーパーして確かめてみた感じ湿ってなくて安心した!
シュンと残念そうに眉を寄せるアルバ。白銀のショートヘアがサラリと流れて左の金色の瞳が完全に隠れて、右の緋色の瞳が際立って見えた。まるで寂しそうなうさぎさんみたいだよ。
「人気のなさそうな場所に一旦止めてもらう?」
「いえ、外では誰が見ているか分からないですから、神殿に戻ってからの方がいいかと」
「そっかぁ、そうだよね」
「ハナの治癒力については既にグラス村に
「えっ」
箝口令? いつの間に。
「祖父……教皇様と同等、もしくはそれ以上になるかと。教皇様が直接治癒するのは貴族中心、その活動は教会の資金源の重要な役割をしています。教会上層部の耳に入れば、ハナはおそらく神殿から一歩も出られなくなるでしょう」
苦い表情を浮かべるアルバ。
「えええーっ!?」
「教皇様が治癒するのは、『教皇様に直接治してもらった』と箔をつけたいだけの、高いお金を払って腰痛や肩コリを治しにくる者ばかり。その反動でしょうか、母様が自分の休日を返上して、私財で炊き出しを行っているのは……」
あの炊き出しって、ロサさん個人のボランティア活動だったんだ。
「なので、ハナの癒しの魔法は当面使用を控えた方がいいというのが、母上と私の見解です。ハナの能力は限られた者にしか見せない方が良いでしょう」
「……分かった。色々考えてくれてありがとう」
「監……が良……も……ませんね」
アルバからボソッと何か危険なワードが聞こえた気がしたけど聞き間違いかな。体は大して疲れてないけれど、初めて行った村でお料理手伝って治療活動で大騒ぎが起きて……精神的にちょっと疲れて、眠気が……。
すぅ……。
「着きましたよ、ハナ」
アルバの優しい声。ハッ! いつの間にかアルバの肩にもたれかかって寝ちゃってたみたい。
「私、いびきかいてた?」
「さぁ、どうだったでしようねぇ」
クックッと笑うアルバ。アルバってこういう所あるよね。小悪魔みたいになる所!
「えーっどっちー!」
冗談を交わしながら馬車を降りると、誰かが神殿の入り口からこちらに向かって走ってくるのが見えた。だんだんとそのシルエットがハッキリしてくる。
ふわふわな赤茶色の髪にアクアマリンの瞳。そしてワンコ顔に細マッチョというミスマッチな体。
「どうしたのレオっち!」『レオっちドラ!』
「やぁやぁハナっちにドラっち、ほんの少し前にロサ様から団長がつがいの希少種を倒したっていう話を聞いて、ここで馬車が到着するのを待ってたっス!」
「その呼び方は失礼だろう、『様』を付けて呼ぶように。団長命令だ」
レオのみぞおちに軽めのパンチをするアルバ。
「グエッ。それでどうだったんスか?希少種は……」
「ハナを部屋まで送り届けた後に話そう。仕事に戻れ」
「オレも一緒に送るッス!」
「いいから仕事にモ・ド・レ!」
「ちぇっ、二人きりになりたいからって……グエエ!戻りまーす!」
レオはみぞおちを抑えながら去っていった。
アルバに部屋の前まで送ってもらい、別れの挨拶をすませた私はバスルームへと直行!
「ドラ、バスルーム行くよ」
『ドラ〜』
バスタブは綺麗に磨かれていて中は空の状態だ。トコトコついてきたドラの脇の下に手を入れて、ヒョイっとバスタブの中へ。持ち上げるとすごく軽い!10kgも無さそう。
「部屋の中だと床が濡れちゃうからここでやろう」
『ドラ!』
水やりはドラの頭の葉っぱが湿るくらいでいいみたいなので今回はちょっとだけ水の入ったジョウロをイメージ。ポンッと胸の前に現れた金のジョウロを両手で受け取る。
ジョウロをほんの少しだけ傾けて、チョロチョロと中の水をドラに向けて注いだ。体に流れていった水がそのままスーッと肌に吸収されていくのが見えた。
『ドラー!』
突如、ドラの頭の葉っぱが光り輝いた。頭の葉がどんどんと大きくなってさらには新しい芽が出て来て均等な大きさに育っていく。三枚の葉っぱが頭を包んでまるで茄子のガクの部分っぽくなった。
「わぉ!」
『成長ドラ~♪』
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