16 教皇様とご対面 2

 先代の花巫女がいてこの衣装を着ていた?

 

 ぞわりと鳥肌が立つ。

 

 初耳だ、花巫女って私のために作られたゲームの設定じゃないの?

 

 花巫女の衣装着てる時、初対面で花巫女って呼ばれてたのってこの花巫女スタイルが一般常識として広まっていたからなのかもしれない。

 

 私が前に図書館でみた絵本の『神に愛されし少女、光り輝く。ユグドラシルと共にあり』ってページにイラストがあったんだけど、少女は光の表現でどんな姿してるのか描かれてなかったんだよね。

 

 エルフって長寿で数百年生きるって聞くし、教皇様のお父さんのさらに小さい頃ってなると、何百年も前って事になるよね。


「その『先代』さんは、どんなことをされていたんですか?」


「花巫女はな、この国では枢機卿と同等に扱われ……つまりワシの補佐的な立ち位置でな」


 サンジェルマン卿がウインクをする


 花巫女の知名度がいまいちピンとこなかったけど、アルバのお父さんと同じ地位ってことは、


 神聖教国ステラ

 教皇パウロ=総理大臣

 サンジェルマン枢機卿=副総理A

 花巫女ハナ=副総理B


 って事?!いやいやいやいや、ないないないないーー!


「当時は他国に巫女の力を貸し出し、荒れた土地を蘇らせたり、水を浄化したりと、主に外交に力を入れていたと聞く。しかしどこかの国に行ったっきり戻らなくなったのが最期のようでなぁ。その出来事がきっかけで、我が国は他国とあまり関わらなくなってしまった」


 力を使いすぎて、そのまま亡くなってしまったんだろうか。


「そうだったんですね……私には何が出来るんだろう」


「ハナちゃん、教会にはね医師にかかることのできない貧困層がやってくるのだけれど、癒し手がなかなか見つからなくて人手不足なのよぉ。それでね、明日グラス村で教会の炊き出しがあるのだけど、癒しの魔法の練習も兼ねて一緒に行ってみない?」


 ロサさんからの提案。


「うまくできるか分かりませんがやります! 是非教えて下さい、お願いします!」


「明日の朝食後に使いの者を送るわ」


 ロサさんがバチバチッとウインクをアルバに送る。


「お任せください、教会までハナの安全は私が保証します」


 やった! アルバとまたお出かけ出来るんだ!


「うーむ。リーフタウンの噴水の浄化や願いヶ丘に咲いた新種の花についての報告に上がっておるんじゃがあれはハナの仕業じゃろ? 花巫女と緑色の言葉を話すモンスターの噂がすでに周辺地域にまで広がっておる。」


『ドラーー!?』


 教皇様の言う噂の中のモンスター扱いに不服の声をあげるドラ。


「正直、花巫女の政治的価値は計り知れないものがある。しかしワシはな、生前の父が花巫女を悲しそうに思い出す姿をなんども思い出すんじゃ。ハナには聖樹様のお世話をお願いしたいがそれ以外は望まん。この国にいてくれるだけでありがたい! だが教会で活動すればハナの噂はさらに広まることになる……」


「確かにそうね、私が安易に誘って悪かったわハナちゃん、明日の話は無かったことにしましょう」


 ――え!?

 

「なぁ爺さん、人の噂に戸は立てられねぇ。鳥籠に入れて大事にしたい気持ちも分かるが、肝心のハナさんの気持ちはどうなのか聞いてみねぇと。俺は逆にハナさんをお披露目するための祭りでもやって、改めて花巫女としての地位を確立させたほうが、ハナさんを国として守れることになるんじゃねぇかと思うんだがな」


「うーむ、それも一理あるのぅ」


 祭でお披露目されて花巫女として大々的にアピールするか、ひっそり正体を隠しながら生きて行くか・・・・・・。


「ハナはどうしたいかの?」


 ・・・・・・私は、もっと広い世界をみてみたい。

 癒しの力で誰かを癒してあげれるなら癒してあげたい。

 先代の花巫女がやっていたように、この国のために、他国で私に出来ることがあるなら協力したい。


 元の世界にいたとき、将来の夢について考えた時、なんとなくお父さんの花屋を継ぐのかと思ってたから、それが私のやりたい事なんだって思ってた。

 

 でも、誰かの役に立って喜んでもらいたいって思った今の気持ちを大切にしたい。私が本当にやりたい事がこれから見つかる気がする!


「私は……」

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