08 デートに着ていく服が無い!

「うーーーーん」


 クローゼットの中にはヒラヒラしたドレスがずらりと並んでいた。パーティーに出席するわけじゃないんだよぉ~!

 花巫女の衣装も可愛いよ?でも、デートだよ、デート。

 

 デートに着て行く服がなぁぁぁーーーい!助けて……。


 そしてコンコンと鳴るノック音。


 え、まって、まだ着替えてないよぉ。


「ハナ様、ミィです」


 救世主、現る。


「どうぞ」


「ハナ様、先ほどは最後までご案内出来ず申し訳ございませんでした」


 ペコリと頭を下げるミィ。


 休憩時間なのにわがままに付き合ってもらったわけだし、謝るのはこっちなんだけどね。

 

「あのねミィ、お願いがあるんだけど……」


「お願い、ですか?はい、私にできることでしたら何でも」


「ん、今、何でもっていった?」


「はい」


「お願い!ミィの私服、借してほしいの!」


「私の私服を、ですか?」


    ♦︎

 

 ジャーン!


 ミィの私服、借りちゃいました!


 白のシンプルなフリル付きのブラウスに、水色のジャンパースカート。ブラウスの襟元にはスカートの色に合わせた、水色のリボンがかかっている。


「本当にありがとう! この服すっごく可愛い!」


 元の世界の私は楽な服装が好きだったから、地味色のトレーナーやパーカーにズボンを合わせるのを好んでいて、スカートって持ってなかったんだけど、こうしてフリル付きの可愛い服を着て、ふわっと裾が広がるスカートを履いてみると、服の力で自分まで可愛くなれたような気持ちになるし、気分が上がる!


「サイズが合って良かったです。ところでハナ様どちらにお出かけですか?」


「うん! これからアルバと街に出かけるんだー」


 ピクピクッ! お昼寝していたドラが目覚めた。


『お出かけドラ〜?ドラも行くドラ!』


 コンコン

 

 ノック音が鳴ったあと反応する暇もなくドアが開く。


 返事もする間もなくこの人はーっ!

 

何か文句の一つでも言おうかと、じっとアルバを見据えると、いつもと違った私服姿に目を奪われた。


グレーの襟付きシャツに黒ベストに黒ズボン。腰からぶら下がる細身の剣。

 普段の真っ白な騎士服もいいけど、このシックな色合いもすごくいいー。

 アルバの私服姿に何か気の利いたことを言いたいんだけど、本人を前にして格好いいですね、なんて恥ずかしくてとても言えない!

 

「ハナはなにを着ても可愛らしいですね」


 ――恥ずかしげもなく言ってるし!!!

 

まだ出かけてもいないのに今からこんなにドキドキさせられてしまって私の心臓大丈夫なんだろうか。


『可愛いドラもいっしょに行くドラー』


 ……スン。

 そうだ、二人きりのデートじゃなかった!


 「では、行きましょうか」


 

 アルバの手配してくれた馬車に乗り、いざ隣町のリーフタウンへ。

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