04 花巫女のお仕事 1

 花巫女の衣装を身に纏い、最後に髪飾りをミィにつけてもらうと、改めて自分がゲームキャラの一員になった気がした。嬉しいような、森野ハナという存在が消えてしまったみたいで悲しいような複雑な気持ち。

 

「巫女様、こちらのイヤリングもお付けいたしますね」


 金の金具のついた丸いシンプルな翡翠のイヤリングだ。

髪の毛が邪魔にならない様に、髪を耳の後ろにかけようと耳を触った時に、耳の形に違和感を覚えた。


一回り大きく感じるし、先端がとがっている。

そういえばステータスにハーフエルフって出てたっけ。

金髪で緑眼だし見た目はまんまエルフって感じなのね。

 

「巫女様、まもなくアルバ様が参られますよ」


「ミィ私ね、ハナっていうの。これからは巫女様じゃなくてハナって呼んでもらえると嬉しいな」


「かしこまりました、ハナ様」


「様はいらないんだけどなー」


見た感じミィの方が歳上のお姉さんなのに、様付けで言われると何やら申し訳ない気持ちになってしまう。


コンコン、ガチャ。


ノック後、返事をする間も無くドアが開く。


「こんにちは、昨晩はよく眠れましたか?」


アルバだ。この人いつもこういうドアの開け方するのかな。イケメンなので許されますが。


「は、はいっっ」


「それはよかった。花巫女の衣装よく似合っていますね、とても可愛らしい。」


 ――か、かわ?!?!(可愛いらしい可愛らしい可愛いらしい……リフレイン)


 確かに鏡で確認した私の今の姿は自分で見ても可愛かったけど、異性から正面から可愛いと言わると、社交辞令やお世辞であっても、恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。


「ありがとう……ございます」


 思わずキョドってしまい小声になる。乙女ゲーで鍛えてきたはずなのに、どうしてこうも耐性がないのか。


 アルバの両手が私の両手を上から包み込んだ。


 ふぁっ?


「巫女様には、今から聖樹の様子を共に見に行っていただきたいのですがよろしいですか」


「よろしくお願いしますーっ」


 私、チョロすぎー!


 ピコン! と突如電子音が鳴り半透明のウインドウが浮かび上がる。


 生命力――アップ↑――


 そうか! 攻略対象と接触したからだ。

 アップするのはいいけれど、逆に攻略対象と仲良くなれずに、触れ合うことすらできなくなればこの体は長く持たないのだろうか? 

 

「巫女様?いかがなされました?」


 手を包んだまま、上から顔を覗き込ませるアルバ。


 髪の毛が流れて、隠れがちだった金色の眼が顕になる。金色と緋色のオッドアイと目が合い、その美しさに飲み込まれそうになった。


 互いの顔が近いせいで自分の鼻息がアルバにかかってしまうのでは無いかと変な不安がよぎって焦ってしまう。


「何でもありませんー!」


 数歩後退りしてしまった。


「アルバ様、私のことはどうかハナとお呼びください」


 巫女様と言われても自分が呼ばれてる実感が湧かない。


「分かりましたハナ、では私のこともアルバと呼んでくださいね」


 ピコン!


 生命力――アップ↑――


 私も大概チョロかったけど、アルバもチョロかったりするのだろうか? ゲームの進行よりも親密度の上がるペースが早く感じる気がする。


「では参りましょうか、聖樹のもとへ」

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