03 夢の中の、夢? 2

 スマホのアラームが聞こえないくらい熟睡してたのだろうかぐっすり寝てしまった。


 アラームを五分刻みでスヌーズにしていても両親からスヌーズの音がうるさいから早く起きなさいと直接言われるまでなかなか起きれない体質なのだ。


 むくり、と起きて辺りを見渡すと、自分が寝ていたベッドに違和感を覚える。枕は固め派な低反発を愛用していたはずなのに羽毛でフッカフカ。布団もフワッフワ。そしてこのベッド天蓋まで付いてます。


 小学校からずっと使ってた愛着のあるわたしの勉強机やコツコツ集めてきた私の宝物である乙女ゲー達で埋め尽くされた三段ラックの姿は無い。


 私の宝物達よどこへ行った……。


 真っ白なレースのテーブルクロスの掛かったテーブルには色とりどりの花が飾られた高そうな花瓶が置かれいるし、座り心地の良さそうな革張りのソファーに、ドレッサーもある。西洋インテリアといった感じだろうか。


待てよ、ドレッサー? 鏡っっ!!


「………誰これ」


 鏡には全く別人の姿があった。


 真っ黒でちょっと癖っ毛があって朝のセットに時間のかかっていた肩まで伸びてきていた髪の毛が金髪になっているし、胸までの長さになっている。


 艶やかな髪におそるおそる手櫛をとおしてみると、シャンプーのCMみたいにサラッサラだ。


 瞳は緑色で目が大きくてクリクリしているしまつ毛はマツエクしたかのようにフサフサ。唇はリップも塗っていないのにほんのりピンク色に染まっている。


 しかもウエスト細い〜! 手足なんて加工後の画像みたいに細いよ〜! それなのに胸は元の私の体よりもある……! この体の持ち主はモデルだったのかもしれない。

 うーむ。平凡そのものだったはずの自分がスタイル抜群の超がつくほどの美少女に生まれ変わってしまった。


 ということは、昨日の出来事は夢じゃない………?


 真のエンディングが解放された後わたしの体がどうなったのか記憶がない。どういうことだよお母さん!


 乙女ゲーの冒頭でよくある主人公が死んだことがきっかけでゲームや本の中に転生しちゃうってやつ?

 私ってば母の作ったゲームの世界に転生しちゃったの? もしそうだとしたら私の体はどうなったんだろう。


 驚愕!女子高生!森野ハナさん(16)乙女ゲームのやりすぎで死亡!!ってニュースを想像して落ち込んだ。


 お父さんとお母さん今頃どうしてるんだろう。私の葬式をしてたりするんだろうか。


「……っ……うう……」


 涙があふれてきてとまらない!


 今はわからないけれどもしかしたら帰る方法だってあるかもしれない。ここは魔法もあるファンタジーの世界なのだから。

 

 それに悲しいだけじゃない、ここは本気で遊び尽くそうとしていた「ハナ恋」の世界!


 リアル推し活ができるなんてプレイヤー冥利につきるというものじゃない?


 不安に押しつぶされそうな心を、乙女ゲーパワーで鼓舞する。外見が変わっても私は私だ!がんばれ私!


 コンコン。


「ミィです。朝食をお持ちしました」


「どうぞ」


 考えがまとまらない中、朝食の良い香りが部屋のなかに漂った。


 パンとチーズと野菜のスープだ。異国情緒あふれる食事ではなくて、見慣れたものばかりで安心して、食が進んだ。スープがあったかくて美味しい。


 お腹が膨れて改めて思った、これは現実なのだと。


 カチャリ、空になった器をワゴンに載せていくミィ。


「朝食を下げてまいりますね、すぐ戻ります。」


「ありがとう」


 ミィが出て行った後、用意されていた着替えの袴に手を伸ばす。


ゲーム内で見たことのある黄緑色の花巫女の衣装だ!


 いざ広げてみたものの、着方がわからないので、戻ってきたミィに着替えを手伝ってもらった。

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