02 夢の中の、夢? 1
……う……ん?!
頭がズキズキする。ゲームのやりすぎで寝落ちしちゃっった?!
目覚めるとそこには見知らぬ景色がひろがっていて、自分の部屋じゃないことは確かだ。
「え、何ここ、山の中?」
立ち上がって周りを見渡すとどこか知ったような風景に頭がクラクラする。デジャブってやつ?
そして一際存在感を放つ、枯れかけの大きな大きな樹に目を奪われた。
もしかしてこの樹はユグドラシルなのではないだろうか……?!
毎日水やりをしていたのだ。こんなに大きくて威厳のある大樹が他にあるものか。
でも、こんなに弱々しくて、元気のない姿は見たことがなかった。水をあげなきゃ! ふとそう思ったその時、空中に金色のジョウロが現れ手のひらにストンと収まった。 私はゲームのやりすぎで夢を見てるのかもしれない、やけにリアルな夢を。
ゲームではジョウロのアイコンをタップして水やりしていたけど、今は夢の中なのでユグドラシルの根っこにむけて空っぽのジョウロを傾ける。
すると胸の中が熱く感じはじめた。ジョウロに水が溢れ透き通って光輝く水が流れでた。
ユグドラシルから光が溢れ、あたり一面に目が眩むような強い輝きが放たれる。
水を与えた後具合が悪くなったハナは、その場に倒れ込んで意識を失ってしまった。
「なんだなんだ?」
「聖樹から強い光が!」
尋常ではないことが起こった、と、近くにいた神官の服装に身を包んだ男性二人が急いでユグドラシルの様子を見に行くと、今までどんな試みをしても衰弱していくのを止められなかったユグドラシルから、若芽が芽吹いており、その近くで金色のジョウロを持って倒れている金髪の美しい裸のエルフの少女がいたので、花巫女が現れた!という大事件となった。
「巫女様、お目覚めでしょうか〜?」
ふにゃっとした、知らない女の人の声がした。
ミコ? わたしはハナですが!
夢の中でさらに夢を見て私は目覚めたのでしょうか。
いつのまにかネグリジェ着てるし。
「側仕えとして仕えさせていただきます、ミィと申します。お髪を整えさせていただきますね」
明るい茶髪で短めのツインテールがぴょこぴょこ跳ねて可愛いタレ目のメイド服のエルフだ。
そっとネグリジェの上にガウンをかけてくれた。
肩につくかつかないかの長さの黒髪ボブのはずの私の髪の毛が何故か金髪に染められて、胸まで伸びた長さになっている。生まれてこの方髪の毛染めたことがなかったのにいきなり金髪? しばらく伸ばしてたら根元が真っ黒でプリンになってしまうんじゃ? と混乱していると、ドアのノック音が響き渡った。
「入りますよ」
この、美声は!!!
返事をする間もなくガチャリとドアが開き、現れたのはゲーム画面で何度も見たことのある青年の姿。
うさぎさんっっ!
一見白く見える髪はよく見ると月のようにキラキラと銀色に輝き、肌は陶器のように白い。ショートヘアで左目が前髪で少し隠れているけど、サラサラとした髪が揺れるたび金色の瞳が見え隠れする。存在感のある右眼は緋色、オッドアイって私は好きなんだけどなぁー。本人はコンプレックスみたいで前髪で隠してるのよね、嗚呼勿体無い。
細身の体に白と金をベースにした騎士服(自称神殿騎士と名乗っているけど、王子様なんだよね)の装いで、ゲーム的にみると聖属性といった雰囲気だ。
この人は心のなかでうさぎさんと呼んでいたキャラクターのアルバだ! 最初の攻略キャラクターでチュートリアル的な存在な彼は主人公に優しくしてくれるの!
ゲームの中では、大事なイベントシーンでしかボイス有りになっていなかったので、「入りますよ」という、今まで聞いたことのないセリフが聞けただけで、わたしのテンションはすこしどころかかなりあがっていた。
「我が国に花巫女様があらわれるとは、これも聖樹のお導きでしょう。私の名前はアルバ・セレスティアル、聖樹ユグドラシルを護る神殿の者です」
自身の胸に手を当ててニコッと笑うアルバ。
今の笑顔、スクショさせてください……!
スマホも何も持っていないことに絶望する。
「どうぞゆっくりお過ごしください、具合が悪そうなので、また明日お伺いします」
アルバが私の手を取り甲にキスをする。
メイドのミィは、あらあら! キャ〜! と顔を赤く染めてその様子を見ている。
「うぇっ!?」
生まれてこの方、家族以外の男性とスキンシップをとったことがなかったのにいきなり手の甲に唇の感覚がきたのでおもわずへんな奇声が飛び出てしまった。
キスされた事と、自分から出た変な声が恥ずかしくて顔が火照る。
すると、ピコンっ! と聞き覚えのある電子音が頭に鳴り響いた。
そして目の前に一瞬出た半透明のウインドウに書かれた文字。
生命力――アップ↑――
直後にズキズキとした痛みのあった頭が軽くなり、体から元気が溢れてくる。
すご! ゲームの設定まんまじゃん。
さっき出た半透明のウインドウで今のステータス見れないかな? と思うと、ピコン! とステータス画面が現れた。
――――――――――――――
ハナ ハーフエルフ 十六歳
「転生者」「花の巫女」
癒しの魔法 レベル7
好感度 アルバ 30%
――――――――――――――
「ね、ねぇミィ、私の目の前にある四角いの見える?」
「巫女様の目の前の、四角ですか?」
どの四角をいっているのだろう、と部屋にある家具や小物などから四角いものを探そうとするミィ。
「ごめん、今の気にしないでいい!」
自分にしか見えない系ですね。なるほどなるほど。
それにしても私の苗字どこいった! 森野が抜けてただのハナになってるしハーフエルフて! 人間扱いじゃないんかい!
それに好感度! アルバと一瞬しか会ってないのに好感度0から30%まで一気にあがったのもなんだかおかしい。
好感度1%あげるのにゲームの中の世界で一日くらいかかるのに……。
それにしてもこの夢長いしめっちゃ疲れる!
他の推しも夢の中で動くの見たかったけど、ちょっと……休ませて………………。 ………………。 …………。 ……。
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