わたしはいつもしにたい

ゆきのともしび

わたしはいつもしにたい


今日もしにたかった一日の夕暮れ

自転車に乗りながら、空を仰ぐ。


電線のチョコレートのような影と

淡い光の層がわたしをみている。



彼らがかたる


「どうやらきみはしにたがっているようだが、

いまこの瞬間、君はわれわれに、こころを震わせてくれた。

きみはいきている。そしてわれわれはみている。きみのことを。」



わたしはこたえる。



「わたしは信じられるものがないんだ。

私は世界から置いてけぼりにされているんだよ」



「いいか。

きみがわたしにこころをつかってくれている限り、

わたしはきみのことを、見捨てはしない。

狂っているのは世界だ。

きみはその透明なこころとわたしを、信じていればいい」



声をきく。



坂を下る。


車が通る。


人々は上を向いていない。


いったい人々は、何を考えている。


わたしはどこで、呼吸をしている。


わたしはどこで、いのちを燃やしている。





駐輪場についてしまって、声がきこえなくなる。



わたしは自転車に鍵をかける。




リュックを背負って、夕食の買い出しに向かう。




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わたしはいつもしにたい ゆきのともしび @yukinokodayo

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