「お飲み物はいかがなさいますか?」④ (三人称小説 語り:無人称 視点:神 主体:高校生たちと女子店員たち)
「おっと、今日は当たりだ!」と
「え、何だって?」
蒼也は質問に答えず、最初に空いたレジに悟を向かわせた。
クイーンズサンドのレジカウンターには三人の女子高生バイトが立っていた。一番レジに
三番レジの愛梨は、蒼也の声を聞いて(やっぱりあいつだ)と思った。愛梨と蒼也は一度絡みがあった。蒼也はそのことを覚えていないだろうが、と愛梨は思う。
最初に空いたレジは一番レジだった。一番レジの
「いらっしゃいませ、こんにちは。店内でお召し上がりですか?」
「はい」
「では、ご注文をどうぞ」
「ヒューストンバーガーのセットで」
二番レジ、三番レジが順に空き、まるで
「お飲み物はいかがなさいますか?」
その返事に悟も蒼也も少し時間をかけた。
「これで」と答えたのはほぼ同時だった。
「承知しました。お会計は六百円です」
同じメニューだから値段も同じだ。
蒼也がドリンクの注文に時間をかけたのはレジの絵智香に紙切れを見せたからだ。そこにデートの誘いを書いておいた。OKならコーラが出てくるはず。
そのやり取りを盗み見た愛梨は(またそれかよ)と思った。かつて自分も同じ紙切れを見せられたことがあるからだ。果たしてその紙切れと選択肢は愛梨が見たものと同じだった。
蒼也が紙切れを見せたとき、強盗かと身構えた絵智香は、それがナンパの一種だと知って安堵した。この手のナンパには慣れている。絵智香は「お断り」の選択肢をとるべく、愛梨にウーロン茶を用意してもらうように告げた。
愛梨はただのウーロン茶だと面白みに欠けると思っていた。そしてふと閃いて、ウーロン茶とジンジャーエールのカクテルを作った。
「お待たせしました。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」
にっこりと見送る絵智香から離れ、連れとともにテーブルについた蒼也は、ドリンクの中身を見透かそうとした。
(コーラ……ではないな)
ストローを挿して飲み込んだ瞬間、蒼也は落胆した。
「……だよねー」と叫んだ舌がどことなく苦いような辛いような味を感じた。
「ん?」悟が不思議そうな顔を蒼也に向けた。
その様子を遠くから見ていた愛梨はしてやったりという顔をした。そして心の中で叫んだ。
(二度と来るな、バカ!)
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三人称神視点です。他サイトに公開したものの引用です。そこでは字数制限があったので無理やり詰め込んだだめ説明的な文になってしまいました。
神視点と客観視点(観客視点)との違いは、登場人物すべての心の中が見えるということ。漫画の手法ですね。ふきだしを使ってキャラがツッコミをいれるやつです。
最近のラノベでも男女の心のつぶやきをそれぞれ( )書きにして、すれ違いを面白おかしく見せる作品が目立つようになりました。とても面白いですね。
神だから何でもわかるというわけですが、よほど慣れていないとうまく書けません。
今回はただの説明になってしまいました。
コミックだから許される手法のように思います。
以上、三人称小説について、一視点、客観視点(観客視点)、神視点を例にあげましたが、他にも特殊な技法がいくつかあります。
二人称小説、人称の混在、視点の交代、語り人称の偽りなど、叙述トリックにもよく使われるものがあります。
これまでと同じシナリオ「お飲み物はいかがなさいますか?」でそれらを紹介していきたいと思います。
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