「お飲み物はいかがなさいますか?」③ (三人称小説 語り:無人称 視点:客観 主体:高校生たちと女子店員たち)

 夕刻のバーガーショップ。この時間帯は近くにある予備校に通う高校生が集まってくる。その日は比較的空いていた。

「おっと、今日は当たりだ!」一人の男子高校生が発した言葉に連れが「え、何だって?」と返した。

 カウンターにはアルバイトの女子店員が三人立っていた。空いたレジから順に男子高校生を迎え入れる。

 「天野」という名札をつけた女子店員の前に先ほど「……当たりだ!」と発した高校生がいた。

「いらっしゃいませ、こんにちは。店内でお召し上がりですか?」

「はい」

「では、ご注文をどうぞ」

「ヒューストンバーガーのセットで」

「お飲み物はいかがなさいますか?」

「これで」と彼は一枚の紙きれを取り出して女子店員に見せた。

 女子店員は、しばらくその紙に目を通し、わずかに首肯した。

「承知しました。お会計は六百円です」

 オーダーを受けた女子店員たちがトレイを用意してバーガーやらポテトやらを揃えていた。混雑時は受け取りが専用の窓口になるのだが、今はそれぞれが用意して客に渡すことになっていた。

 男子高校生たちはオーダー品が揃うのを落ち着かぬ様子で待っていた。

「お待たせしました。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」

 トレイを受け取った男子高校生たちは同じフロアの少し離れたテーブルに移動した。

 テーブルについてバーガーを頬張る男子高校生たちの中、天野という店員からトレイを受け取った男子高校生がため息をつきながら「……だよねー」と言った。

 連れの男子高校生は「ん?」と怪訝な顔をした。

 カウンターの裏の台に一枚の紙きれがあった。それにはこう書かれていた。


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* こんど遊びに行かない? 返事はドリンクで返して。           *

* 「よろしくね❤」→コーラ                       *

* 「あなたのことまだ良く知らないわ。だから保留。また誘って」→オレンジ *

* 「タイプじゃないわ 二度と誘わないで」→ジンジャー          *

* 「私、彼氏いるの。だからダメ」→ウーロン               *

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 今回は三人称客観視点(観客視点)です。

 観客席から舞台を観るかたちです。

 最近この形式の小説は少なくなっていると思われます。私の勝手な思い込みかもしれませんが。


 クリアしなければいけない問題点がいくつかあります。


 まずは登場人物の名前の出し方です。


 これがテレビドラマなら画面に登場人物の名前を出すこともできますが、舞台観劇ではそうしたことができません。ですので、はじめは「男子高校生」とか「女子店員」といった書き方をしています。

 厳密には男子高校生かどうかなど見ただけで判断できるのかといった問題がありますが、そこはスルーです(笑)


 こうした場合、登場人物の名前を出すにはセリフで呼び合うしかないでしょう。今回は「天野」という名札をつけた女子店員、のような書き方をして、以降「天野という店員」といった呼び方をしています。


 この程度の短い短編なら最後まで名無しでも成り立つと思います。


 そして前回の三人称一視点の時にも書きましたが、登場人物の心の声や感情についての記述ができません。視点が観客なのですから、役者の演技をみて苦しそうとか悲しそうといったことを推しはかるしかないのです。


「落ち着かぬ様子で待っていた」とか「怪訝な顔をした」とかはギリギリセーフといったところでしょうか。それすら書けないとなるとかなり苦しいですね。



 次は視点の位置です。

 観客席なら、舞台の隅に置かれたメモまで見えないはずですが、ドローンにとりつけたカメラが対象を捉えるかのように名札の文字やメモの字まで見えることは許されると思っています。



 他にも欠点はあると思いますが、私が現時点で気づいているのはこんなところでしょうか。

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