第6話 嫁いびり
幸子の嫁入り道具の洗濯機が壊されたのは、嫁いでそう何日も経たないころだった。
「ねぇさん!弁償しろ!」
その日は、朝から武雄の叫び声が聞こえた。
「絶対に許さない!」
隣で鬼の形相で睨みつけていたのは幸子だった。
「洗濯物は手で洗うものよ」と梅子さんを始めとする姉さん方3人は全く取り合わず、洗濯を始めていた。
「幸子ごめん」と武雄は言った。
「あいつら許さない。絶対に同じ墓には入らない!」幸子はそういうと、朝食の片付けを始めた。
武雄はその頃実家に便所を作っていた。当時は慣習として外に便所があったが、遠いうえに、冬は寒い。武雄は寒がりの幸子のために、家の中に新たに作ろうとしていた。
しかし、便所は外にあるべき、と梅子さんらが、譲らず、武雄が作っては壊され、と応酬が続いていた。その度に武雄と幸子は憤慨した。
そんな日が何日も続いた。朝起きると、喧嘩から始まる。飽きて終わると、武雄は仕事か畑に行き、幸子や梅子は家の仕事をし、お昼時にはまた喧嘩。それでも、幸子は武雄の取ってきた野菜を丁寧に調理すると、姉らにも振る舞う。そんな生活を、俺には理解し難かった。
「なんで毎日喧嘩をするのに一緒に暮らすんだろう」と俺は言った。
「畑も田んぼもあるし、人手が必要なんでしょ」と瑠璃は言った。
しばらくすると、姉2人も他家に嫁いでいった。一家は、曽祖父母、武雄、幸子、梅子の5人暮らしになった。
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