第6話:婚約者候補

『今回は参上してくれてありがとう。ルトランド候爵』

『いえ、ありがたく参上させて頂きました。国王陛下』


 いつもの父とは違い、とても厳しい雰囲気を漂わせる。そして、国王。現国王は、私が生まれる2年前に即位している。

 今年で即位して11年目になる筈だ。


『そこに居るのが侯爵の娘か……』

『ルトランド候爵第3子……セラス・エヴィ・ルトランドと申します。国王陛下』


 熟女並みの綺麗な姿勢で挨拶をする。

 このカーテシーには母もメイド長も舌を巻いていた。


『ほぉ……コレは綺麗な挨拶だ。こんな綺麗な挨拶を見たのは初めてだ。さすがだな、候爵』

『お褒めに預かり光栄です』

『さて、ココに居るのが私の息子のフォルスだ』


 その瞬間、私はその少年を見た。

 現国王と同じ金髪碧眼でとても綺麗な美少年だ。


『……父上。俺は婚約なんて嫌です』


 と、国王の服を掴んでそのように言う。

 その顔は本当に嫌そうな顔だ。

 しかし、国王はそれで引いた様子はない。


『……フォルス。我儘を言わないでくれ。それに、この話はお前のお祖父様からなんだ』


 それを聞いた途端、第三王子は駄目だと諦め、早足で部屋から出て行った。


『……済まない、候爵』

『いえ、ただ……今回の婚約の話はなかったことでいいでしょうか?』


 さすがの父もご立腹だ。あんな仕打ちをされたのだ。

 それに、家は没落寸前でもないので婚約者は王族でないとダメでもない。


『……そうもいかない。父上がどうしてもルトランド家の子を取り入れたいと言うのだ。私の時にそれが叶えれば良かったのだが……側室を入れる気がなかったからな。それに、王妃が4人も王子を産んだ為、それ以上必要なくなったからな』


 と、申し訳なさそうな顔で言ってくる。


『マンユエですか。マンユエは結婚願望がありませんからね。話が上がっても受けていなかったでしょう』

『そうだろ』


 クスリ、と口元を隠して笑いながらそのように言う。


『それでは私共はコレで失礼します』

『あぁ……ただ、気おつけろよ候爵』

『……分かっております』


 そう父が言い、私たちは玉座の間を後にした。

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