第4話:200年前のある姉弟
懐かしい夢を見た。200年前の私の夢だ。
『姉様。今日も剣術教えてよ!』
当時、私は俗に言う天才と言われていた。文武両道であり、並大抵のことができていた。
その為、政治的価値も高かったがその類まれなる賢さで政治事を掻い潜ってきた。結婚は絶対にしない宣言もし、弟、妹達の面倒を見る毎日だ。そして、先程から私に剣術を教えてと迫ってくるのは今や伝説と言われている賢王だ。
とても賢く知識人とてしても有名な私と同じ母親を持った子がどうして賢王となったのか。
賢王誕生には少し悲しい昔話になる。
『今日はお前達に集まって頂き感謝しよう。1週間後、我々は現国王に反旗を翻すつもりだ。此処に居る全ての者がそう思っていることだろう』
その瞬間、周りもとても喜ばしい宴のように声を上げる。私はそんな者達を呆れながら見ている。ここはある屋敷の舞踏会。そして、そう声を上げる人物を見ながら私はワインを煽る。
その時だ。扉が急に開きそこにいた者達は驚いた顔で見ていた。そこに、騎士団がいたのだ。それも、国王お抱えの。そのリーダーは後の賢王と言われた私の可愛い弟だ。
今回反旗を翻す気だった者達を束ねていたのは私と同じ年に生まれた義理の兄だ。本当に呆れてしまう。差程賢くもなく剣術も強くない。全てにおいて劣っている彼には一つだけ才能があった。それはカリスマ性だ。
しかし、それを発揮することはなく表舞台から消えるだろう。そう、腹違いの弟によって。
『此処に居る者達を全て捕らえよ!』
その弟の掛け声と共に騎士達は次々と捕らえていく。私はそんな弟の元に行こうとする……その時だ。
ある男が弟に向かい刃物を持って迫った。私は一目散に弟の前に行き、食い止めた。
───グサッ
しかし、刺し所が悪くもうダメそうだ。その時の皆の顔は驚いていた。
その理由は2つ……1つは仲間だと思っていた私が弟を庇ったこと。そして、もう1つ……それは。
『ね、姉さん……姉さん! どうして俺なんかの為に庇ったんだよ!』
『ふふ……最後に貴方の顔が見れてよかったわ。本当に……お母様にそっくりな顔。ふふ……』
それは、血も涙もないと言われた私の可愛い弟が泣いているからだろう。
『姉さんが言うなよ。姉さんの方が似てるだろ? 姉さん。俺、絶対強い男になるよ。そして、最高の王になることを誓うよ』
『あら、頼もしいわね。それなら、私は貴方に1つ祝福をあげるわ……貴方が最高の王になりこの世が、この国がある限り語り継がれることを願うわ』
『!? ……姉さん。それは、』
『ふふ……分かってるの。だから、どうか泣かないで……この国を民を……よろ、しく、ね……』
それが私の最後の記憶だ。この話は賢王の成り立ちでよく知られている。ただ、私が天才だったと言うことなどは流石に書かれてはいない。
このようなことがあってから、王位継承権を与えられるのは王族の象徴である碧眼を持った子供全員ということとなった。それは、男女関係なくだ。この国の建国は女王からとなっているので、さほど可笑しくもないので直ぐに周知の事実となった。
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