豪華客船あるある山手線ゲーム
さっき食べたフォアグラで胃がもたれてしまったので、レモンティーを鼎さんがカップに入れて持ってきてくれた。
「袴さん、大丈夫ですか?これ、レモンティーです。」
と言う彼女からカップを受け取る。まだ、飲むには熱過ぎるので、少し冷めるまで待つとしよう。
「そういえば、袴さん、下のお名前なんて言うんですか? 聞いてなかったな~って思って」
「宇宙です。宇宙って書いてソラです。」
「素敵なお名前ですね」
この「素敵なお名前ですね」って言葉、他に返し方あるのだろうか。
「僕も、鼎さんのお名前聞いてなかったですね。なんて言うんですか? 」
「鼎透陽歌って言います。それとは全く関係なく、蟹座です。」
名前を聞き出せた喜びで、胃もたれは消え去っていった。そろそろ入れてくれたレモンティーが程よい温度になるころだろうか。カップに口をつけたが、まだ熱くて飲めなかった。
「さっき、youtubeのショートで、あるあるゲームを見たんですよ。一緒にやりませんか?」
断れない、断りたくない、断り方がわからない、と言う三つの意味で、やることになった。
「私から行きます! 豪華客船あるあるゲーム! 部屋が広い!」
「そ、そ、外寒い!」
「ほぼ金持ち!」
「ひ、ひ、人が死ぬ!」
「めっちゃ暇!」
「沈む!」
「なんか疲れる!」
「クラスター?」
「ん!? 最初は良かったけど、人が死ぬのは定番ネタ! 沈むのはタイタニック号!クラスターは、なんだっけ? 」
はい。ツッコミありがとうございます。
「鼎さん。」
「はい」
彼女の分のレモンティーを口に含みながら答える。
「スピカさん、って呼んでもいいですか? 」
すると、驚きのあまりか、口に含んでいたレモンティーを吹き出す。そして、僕の顔にかかる。
「熱っっ! 熱い! 熱い! 水! 水! 水! 」
洗面所に走って、顔を水で濡らす。火傷しかけた。そして、なんて見覚えのある流れだろうか。漫画やアニメじゃあるまいし。
「すいません。大丈夫ですか? 宇宙さん。」
そして、どうやら、いいみたいだ。
「ええ。なんもないですよ。透陽歌さん。」
なんか、恥ずかしい。自分で呼んでいいか聞いたのに。
明日は、待ちに待った休日。何をしようかと迷っている。就職後、初めて「一日中寝ていよう」なんて考えなかった日かもしれない。
翌日、起きてみると、布団が恋しく、結局起きる気になれないのである。
「宇宙さ~ん、今日は避難訓練をするらしいですよ?」
「と言いますと?」
「沈没した時や、ジャックされた時、乗客や乗務員はどう対応するか、だそうです。」
結構不安になる話だな。いつぶりだろうか。地震、火事以外の避難訓練なんて。1番新しい記憶だと、机でバリケードを張った不審者以来だ。
死んだら困るので、参加するとするか。
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