接待かガチか。

ゲーム機だった。

「格ゲーで勝負しませんか? 先に選んどいてください。お酒持って来ますね。」

 よし、何もしなくても、鼎さんが酔ってくれそう。

期待を込めながら、いつも使用しているキャラを選択しようとする。

(あれ、これって接待か? それともガチ潰しか? 接待だったら気不味くなるし、かといって本気を出しても、)

 「選ばないんですか?」

選べないんですよ。いろんな意味で。

「子供の頃よくやったな~って思って、ここまで進化しているのかって。めっちゃ画面綺麗だし、」

 流れるような嘘。定時後、対戦していました。

「新キャラも追加されましたしね。私このキャラで、VIP入り目指して頑張っています!」

 よし、第二サブキャラでいこう。と思い、そいつを選択する。しかし、それ以上に、『なんかすごい動き』をして、話題を盛り上げたい、と言う気持ちが強かった。そして保険として、乾杯をして、僕と鼎さんに酔いを回しておいて、少しやりすぎても、どうにかなるようにしておいた。

 結果はだいたい勝率60%くらいで、意外と鼎さんが強かった。

「袴さんほんとに久しぶりですか!? 空ダもコンボも初心者じゃないですよ!? 」

「正直に言うとサブキャラで魅せプ狙いでした。」

「メインは予測しますと意味の無い空前の着地の後隙にAとBの同時押しってことは、あいつですね? 」

「はい、あいつですね」

 癖が抜けてないのバレてたか。

「というか、鼎さんめちゃくちゃ強くありませんでした? キャラの性質とか見抜いてバッコバッコストック落としてきたじゃないですか!」

「反転攻撃しか勝たんなので。」

 と言って、缶の中のお酒をクイっと飲み干す。酔ってくれないのは結構残念だったけど。

「残念そうな顔ですね。もう一戦行きましょう!」

違うんだ、酔ってくれれば良いんだ。と思いながら、いつも使っているキャラを選択して、バトルを始める。

ボコボコにしたのは言うまでもない。

「久しぶりにオフでやりました。2,3年ぶりですかね。」

「分かります。ずっとオンラインですね。いや~メインキャラにした瞬間ボッコボコでしたよ。」

「明日も仕事なので、寝ますね」

「はーい、おやすみなさい。」

目をつむり考えていると、鼎さんの使ったキャラの必須テクニックをしていなかった事に気付く。

 どうやら接待されていたのかもしれない。

今度ガチで闘いたい。

 そう思いながらソファーの上で意識が遠退いていく。

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