お行儀良くね?
時間も時間なので、鼎さんを探す。ドアを開けて、とりあえず階段を降りた先に鼎さんがこっちに向かって来るのがみえた。
「あ、いたいた袴さーん、レストラン全員揃ってからって言われて探しましたよ?」
どうやら自分の方が探されていたらしい。子供の頃、二階に居ても
「宇宙~ご飯よ~」
という呪文が聞こえて食卓に走って夕飯を食べたのを思い出す。
レストランの中は世界一周する事を容易くできそうな人達がこちらに圧がかかるくらいしゃんとした態度で夕食を口に運んでいる。咄嗟にスマホの検索サイトを開いて食事のそういったマナーを覚えられるだけ頭に入れる。3分間の全力の記憶はどこまで通用するか。どこまで綺麗に食事をすることができるか。
しかし、いざ入ってみると、先客たちが食べていたのは、ハンバーグやオムライス、カレー、グラタンなどと意外とファミレスなどで出てくるような、比較的馴染みのある食べ物が多かった。3分間の努力返してくれ。
メニューを渡され、美味しそうだったのでカレーを注文する。
「失礼な話をしますが、意外といっぱい食べるタイプなんですか? さっきもそっちから誘ってましたし、注文したものもステーキ定食で高カロリーだったんで、、」
「はっ、悪い癖が出ちゃいましたね。家あんまりお金無かった方なんで、食べられる時にしっかり食べる、、ってこんな話聞いたら、美味しく食べられなくなっちゃいますね。気にしないで下さい。別に今は困ってませんし、収入の為身体売る、なんてこともしていないので。」
そうこうしているうちに、ホールスタッフがカレーとステーキを持ってきた。食欲をそそる匂いが鼻を通る。
「では、冷める前に食べましょうか。「「いただきます。」」
コクの深いルーと口に入れた瞬間に溶けてなくなってしまう牛肉。福神漬けも、甘さが丁度よく、スプーンが止まらない。鼎さんも、女性とは思えない速度で、大きなステーキ肉を切って口に運ぶ。
なんか見ていて幸せな気持ちになる。スマホを覗くと、まだ水曜日であと二日はテレワークだ。百日近くの有休が取れたことに感謝しよう。
部屋に入って、彼女のカバンの中身を蟹の身を取るくらいの勢いで鼎さんが話しかけてきた。
「ねぇ、袴さん、勝負しようよ、なんちゃって」
と言って、取り出したのは、、、
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