第24話 閑話:こんな未来があるかもしれない


 ……三年後、『ククリ山』にて。


 ぴりりり! ぴり、ぴりりーッ!

 今日も『ククリ山』山腹の訓練地に、甲高い笛の音がこだまする。


「こら! 勝手に入っちゃだめじゃないか!」

「で、でもここに来れば、運気が上がって王国騎士団に入れるって!」


 去年の卒業生たちが全員、王国騎士団ならびに某公爵家の騎士として就職を果たしたのは、もはや騎士科の伝説となっている。


 少しでもゲンかつごうと、今日も騎士科の生徒達は聖地巡礼に訪れていた。


「類をみないパワースポットだって……!!」

「そんなわけあるか! だめだだめだ、不法侵入だぞ!?」


 その時ゆらりと影が差し、一人の男が現れた。


「熊も出るこの訓練地に土足で踏み入れるとは、いい度胸だ。心身ともに死ぬ気で鍛える覚悟はできているのだろうな……!」


 ずもももも……!


 おどろおどろしい効果音をバックに現れたのは、フランシス公爵家の紋章をつけた騎士。


「俺は長期休暇の間、この地の守護を任されたフランシス公爵家の騎士、レナード。死ぬ覚悟があるならば、俺がお前達を鍛えてやろう!!」


 着のみ着のまま、自給自足でがんばれ!


 怯む騎士科の生徒達へ、例の『誓約書』を手渡し、自署でのサインを強制する。


 あの頃と違うのは、訓練に係る一切の情報を口外しないという【守秘義務】が課せられていること――。


「よし! お前達の覚悟は受け取った。俺が守護を任された三日間、これより山籠もりを開始する!」


 楽しくキャッキャ聖地巡礼に来たはずなのに、突然始まった恐怖の山籠もり合宿……!


 だが解放される頃には各段に実力がアップした巡礼者達――。


 その成長ぶりに皆がこぞって何があったのかを尋ねたが、恐ろしい訓練の内容を思い出すのもはばかられ、守秘義務も相まって、震えながら口をつむぐばかりである。


 謎に包まれたそのパワースポット『ククリ山』はヴェールに包まれ、たまに神隠しにあうという伝説を残したまま、今もなお騎士科の聖地として伝えられている。


 そして訪れた騎士科の生徒達の実力が目覚ましく成長し、これにより王国の軍事力が格段に上がったのは、また別のお話――。



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