三人称編
第12話 悟
「おっと、今日は当たりだ!」
「え、何だって?」
しかし蒼也は空いたカウンターレジを悟に譲って、隣のカウンターに向かった。
蒼也が向かう先に驚くほど可愛いらしい女子店員がいた。
悟はすぐに理解した。蒼也は美少女に目がない。
ここはハンバーガーショップ。悟たちは六時からの塾の授業を受ける前に小腹をいやすためにこの店に入ったのだった。
「いらっしゃいませ、こんにちは。店内でお召し上がりですか?」
「はい」
「では、ご注文をどうぞ」
「ヒューストンバーガーのセットで」
悟と蒼也はほぼ同時に注文を始めた。いつものセットメニューだ。
飲み物はいつも氷無しコーラだけれど、今日はどうしようかな。
「お飲み物はいかがなさいますか?」隣の可愛らしい女子店員が蒼也に訊く。
「これで」蒼也は何やら紙切れを彼女に見せた。
クーポンとか持っていたのか?
「承知しました。お会計は六百円です」
しかし値段はいつもと同じだった。
その日はそれほど混んでいなかった。ふたりはその場でセットが揃うのを待った。
蒼也は何やら落ち着かぬ様子だった。
悟が先にトレイを受け取り、テーブルへと移動しようとしたとき、蒼也も少し遅れてトレイを受け取った。
「お待たせしました。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」
可愛らしい女子店員がにっこりと笑い、蒼也を見送るのが見えた。
テーブルについた。悟はハンバーガーを頬張った。しかし蒼也はドリンクを蓋越しにじっと見つめていた。
少ししてから、蒼也はドリンクの蓋にストローを挿し、ハンバーガーには目もくれず一気に飲んだ。
「……だよねー」
「ん?」
何が「だよね」だか悟にはわからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます