第2話

穴を掘る。それが仕事だ。地球の冷却のために出る廃棄物を処理するために、穴を掘る必要があるらしい。なるべく深く、なるべく広く。



地球は今や地獄だ。水が干上がってしまうなんて。かつて、持続可能な社会を目指すと謳い、環境に配慮したシステムを作ろうとしていた時代があったらしいが、その恩恵を受けているようには、思えない。いや、あるにはあったか。日頃飲んでいる水は、どうもそういった研究の末にできた技術を使っているものらしい。地獄にいると、生きていくことに執着してしまい、そんなことはわすれてしまう。しかし、ガスを使った地球の温度調整に失敗し、水はどんどん蒸発し、挙げ句、宇宙に飛んでいってしまったらしい。とても信じられないが、政府はそう言っている。大気のエネルギーが増大したとかなんとか、様々な理由があって、どんどんと水が消えていった。そう聞いている。皆、そう聞いているし、受け入れる他ない。




その失敗のツケで、このザマだ。人間は何をやってきたのか。こんなに自らを首をしめる事態になるまで放っておくなんて。資源は限られ、そのために、恩恵を受ける人間を選別している。住む場所は限られ、遠くに行くことも難しい。荒野で迷うことは、そのまま死に至る他ない。このような悲惨さを、目の当たりにすると、どうして、こうなる前に気づかなかったのか。気づくことができなかったのか。先人たちへ、責める気持ちを、おさえることができない。



人の生きる環境を維持するために、ゴミがでる。水がなくなっちまったって状況でも、変わらないらしい。それを押し込める場所を作るのが、おれたちの仕事だ。穴を掘って、ゴミを隠す。ゴミで埋め尽くされた様子は見たことがないが、そのためにすることだと言われているのだから、そんなものだろう。それが仕事というものだ。全体の一部であることが重要で、やっていることが何のためのものなのか理解する必要はあまりない。理解することを求められないのだ。



ただひたすら、穴を掘り続け、人の生きるために出たものに蓋をする。人が生きるために。



それをやってきたから、地球はこんなことになったんじゃないのか。同じだ。同じ過ちを繰り返していくしかないんだ。



諦めながら、今日も労働に励む。生きる水を得るために。


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