第19話 テレパシー
でも、そのうち時間が経つにつれ、こんなおかしな状況にも変に慣れてきて、また暇になった。
僕は、暇つぶしに相手から発されるエネルギーを読んだりして気を紛らわせて遊んでいた。これは誰かが周りにいる時で、暇なときなどにたまにやっている遊びだ。
相手が自分に向かって発するものは、ある程度は勝手に読んでもいいと思っている。それは相手から僕に向かうメッセージだからね。
ちょっと読み取ってみたら、やっぱりこの子も気まずいって思ってるみたいだった。お母さんなんとかしてよーって発してる。
僕と同じだ、と思ったら少し親近感が湧いた。
でも、心の中までは見ないようにしている。これ以上はやらない方がいいな、と思って遮断した。
誰でも、無断で心の中を覗かれたり踏み込まれたりすることは嫌に決まっているから。その線引きはきちんとしているつもりだ。
でも、たまに事故のように見えちゃうこともあって……それが正に今だった。
遮断したはずだったのに、不意に意識がシンクロしてしまって、ワァーっと僕の中に大量の情報が雪崩込んでしまったんだ。
この子の生まれた時からの重要な出来事や感じてきたこと、心の傷などが手に取るように理解できてしまって、これは困ったなと思った。
僕はそういうことを知ったところで、何もしてあげられないし。故意にやった訳ではないけど、プライバシーの侵害になっちゃうのかも。
見た目には無言で無表情の僕の中で、まさかこんなことが起きてるだなんて、母達もこの子も思いもしないだろうな。
『ごめんなさい。見えちゃった』
って僕は心の中でこの子に一応謝っておいた。
まあ、僕の勝手な気休めだけど。
そしたら、
『何が見えちゃったの?』
って聞こえた気がした。
『もしかして、僕の声が聞こえるの?』
こんなこと、本当にあるのだろうか。
僕は半信半疑で聞き返した。
『うん。聞こえる。すごいね。こんなの初めてだよ』
と女の子が言った。
『僕も初めてだよ。すごい、これってテレパシーだよね?』
『そうだね』
時々上手くいかないで混線した。
それは、話の内容に迷いが出たり、知られなくないことを思いついたり、直感的に隠し事したくなると、伝わらなくなるようだった。
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