第4話 十七歳の誕生日
今日は僕の十七歳の誕生日だ。
「キヨト、生まれてきてくれてありがとう」
母は毎年僕の誕生日を祝ってくれる。
今年も僕が食べられそうな材料で豪華に飾り付けられた手作りのケーキを用意してくれた。僕は食事制限が多いし、実際にはほんの少ししか食べることができないのに。
こんなに素敵なケーキを用意してくれて、ありがたいしとても嬉しい。
そして、母は僕の誕生日にはいつも『生まれて来てくれてありがとう』と言ってくれた。
こちらこそその何倍にも返して言いたいよ。
『育ててくれてありがとう』って。
そういう気持ちを少しでいいから伝えられたらいいのに、といつも思っている。僕は嬉しい表情もできないし、言葉で伝えられないけれどいつも心の中は感謝で一杯なんだ。
父親は僕が五歳の頃、離婚して家を出ていった。母は、重度の麻痺状態の僕の世話にかかりきりになって、父との距離が離れてしまった。
だんだん、二人の仲は噛み合わなくなり修正不可能なぐらいになってしまったようだった。
昔は僕のせいで二人は離婚したんだと自分を責めていた時期もあったな。
父は手間のかかる僕のことを受け入れられなかったんだ。「おまえなんかいなければよかった」と何度も言われた。
当時は父に言われた心無い言葉で傷付いていた。
でも、ある時わかったんだ。自分が自分を本当に愛していたらどんな言葉からも自分を守ることができるってこと。
僕がなりたかった『どんなことも受け入れられる強い人』は『どんな時も自分を愛せる人』だと思う。
だから、どんな時も自分を愛せる人で在りたいな。
僕は十七歳になった。あまり長く生きられないと言われていたから、こんなに長く生きられたことは、僕にとってはすごいことなんだ。母もそう思ってると思う。
僕にはまだやることがあるということだろう。
僕は体の重度の麻痺の他にも心臓や腎臓など体中の臓器に先天性の疾患があった。いつもどこかが不調で低位安定の状態だ。血液の状態も悪くていつも貧血の症状があった。生まれた時から、いわゆる医療的ケア児として母に支えられてきた。
風邪を引いただけで入院になってしまう。咳き込む力もあまりないし、吐いたら窒息死するかもしれない。僕は調子が悪くても伝えられず、なかなか気付いてもらえないので、これまでに何度も死にかけたこともあった。
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