第3話 神さまとの約束
僕はどうしてこんな身体で生まれてきたんだろう。
このことはこれまでに何度も何度も考えていた。
母は僕を産んだ直後に、僕に重度の障害があることを知った。母は最初のうちは僕の障害を受け入れられなかったようだった。そして、こんな身体に産んでしまったのは自分のせいだと自分を責めていた。
僕は小さな頃の記憶も少し残っている。小さいながらに、母の感情である自責の念や自己否定感を感じていた。
自分の感情と母の感情の区別がつかなくて、その自責や自己否定の感情を自分のものとして受け入れ、取り込んだ。
自責や自己否定は僕の心の奥深くに痛みを伴う傷を作った。その傷は心の深い深いところに刻み込まれて今も時々疼く。
でも、これって僕の人生のためにはすごく必要な傷で痛みなんだ。これはこの世界で体験するための自分で考えた設定でしかない。
この傷は、神さまからもらったギフトだった。
それが分かってからは、僕はもう自分を責めることも自分を否定することもしなくなった。
ただただ、今あるものを受け入れて感謝するだけ。
僕は生まれる前に神さまと相談したんだ。
僕は『どんなことも受け入れられる強い人になりたい』です。
神さまは「じゃあこんなのはどうかな?」と今の僕の身体を見せてくれた。
正直大変そうだな、と思った。もっと楽な道もあるし、ただただ楽しむっていう人生もあっていいと思うけど。
「これはちょっと……僕には大変かなぁ」
僕は困難な人生を想像し、思わず躊躇した。
「大丈夫。君が望むことは全部実現できるよ」
神さまはにっこり微笑んで言った。
そうだ。
僕の今回のチャレンジは
『どんなことも受け入れられる強い人になる』
ことなんだから、これぐらいでちょうどいいのかもしれないな、と思い直した。僕は結構負けず嫌いなんだ。
神さまは言った。
『君はこの人生を通して沢山の人に光を届けることができるよ』
人生で出逢う予定の色々な人たちとあらかじめ魂の約束をしていた。中でも母とは特に大きな魂の約束を交わした。
こんな大変な身体の僕を育ててもらわないといけないからね。生半可な覚悟では乗り越えられないだろう。
そして、それは同時に母のチャレンジでもあった。
そんな母に、僕は毎日毎日感謝している。
僕たちはこの人生のステージで自分自身を生き切るんだ。
ちょうど俳優が一本の映画を演じ切るように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます