第23話 コンプレックスブラザーズ
「かんぱーーーいっ!!」
かんぱーいっ!と予約して居た店の一室から沢山の声が響く。
最後まで作品を売り切り完売と共に時間前に閉店となったチームYouMaの出店。
会場で新しく出会った暁斗と巴さんの姉弟も共に俺達の打ち上げに参加している。
「うぅぅぅ……憧れのYouMa様と同じ空間に居られるなんて……ぐすっ。」
「泣かないでくださいよ!こうして知り合えたんだから一言でも多く話しましょう!巴さん。」
「そうですよ!これも縁ですし!楽しまないと損ですよ!」
俺の言葉に続く様に愛央が補足してくる。
「さっ!どうぞ!確り食べて飲んで話して楽しんでください。」
志保も御酌したり料理を取り分けたりしながら接待みたいな事をしてる。
その隣では、暁斗を菜月と千里ちゃんが挟んで話してる。
「へぇ〜……悠馬先輩の活動を見てなんだ?」
「う、うん。俺もこのままじゃ駄目だって凄く思ってさ。それで……」
「それであんな場所に出てきたんですから凄いと思います。尊敬しますよ。」
「い、いやいや!俺なんて全然!!悠馬さんみたいに何でも出来る訳でも無いし。」
「凄いと思います。だって兄さん程じゃ無くても色々出来る人でも何もしない人が沢山居るのに、自分に出来る事が少ないと分かりながらもこうやって行動出来ているんですから!」
「そうそう!菜月の言う通りだよ!行動出来ない人が多いんだからそれなのに、こうして動いたんだから誇って良いよ!」
「ですね!暁斗くんは凄いと思います!稲穂くん達と同じですよ!」
菜月達の会話が聞こえて来るけど菜月の態度が違う……?今までの連中と違ってテンションが高い気がするし外向けの顔じゃ無く身内向けの顔をしてる様な気がする。
そんな菜月の様子が気になり気にしていたら愛央と清華がコソっと声を掛けてきた。
「菜月ちゃんの事が気になるのは分かるけど暁斗くんなら大丈夫だよ。悠馬くんが心配する様な事は無いって。」
「そうそう。菜月ちゃんの態度が違うから気になるんだろうけどここは見守ろう?お兄ちゃんも妹離れしないと駄目だぞぉ?」
妹離れって……人をシスコンみたいに……いや、まぁ……余り否定出来ないかも知れないけどさぁ。
一人でぐぬぐぬしながらも俺は菜月達に意識を向けながら巴さんと話し続けた。
…………………………………………………………
SIDE 菜月
「くすくすっ。ほんとですか?」
「ほんとだよ。マジでアレには困ったよ〜。」
「へぇ〜……姉弟だとそんな事がねぇ〜。」
「門倉さんは一人っ子?」
「そだよー。菜月を見てると羨ましいって思うんだけど悠馬先輩と菜月みたいな関係になれるのか?って考えたら自信無いなぁ。」
「兄さんと今みたいな関係になったのも兄さんが進学する少し前ですからねぇ。」
あの時、兄さんが病院に運ばれて目を覚ましてから全てが変わった。
まるで中身が入れ替わったみたいに……
それでも優しい兄さんである事は変わらないから前の兄さんも今の兄さんも私にとっては大好きな兄さんである事には変わりが無い。
兄さんには話しては居ないけど、最初の頃にママと話した事がある。
兄さんが実は別人なのでは?って……私ですら感じたのだからママはもっとだった筈。
それでもママは……「どちらにしても大切な息子なのは変わらない。私がお腹を痛めて産んだ子よ。」と……。
その気持ちは私には分からなくて、でも何も言えずに俯いて居た私にママは、「悠ちゃんは変わった?そんなに悩む程、変わっちゃった?」と聞いてきた。
だから私は改めて思い出す、ここ数年は距離が空いて居たけど兄さんの優しさは変わらなくて、暴言や暴力も無くて、お風呂で逆上せた私を助けてくれたり困っていたら助けてくれたり……「明るくなったり精力的になったりはしたけど基本的なところは変わってない……」、そう呟いた。
そして、私とママの出した結論は頑張ろうとして居る兄さんを見守る事、何があっても応援する事に決まった……変わろうとしてるんだから別人の様になってもおかしく無いだろうし家族である私達が兄さんから距離を取ったら本末転倒だと。
だから、私とママの出した結論は仮に別人だったとしても家族として兄さんを支えて行く事と結論付けた。
「菜月?どうかした?」
「え?あぁ……ごめんね。ちょっと疲れ出ただけ。」
「無理しないでね?話せるのは嬉しいけど無理されるのは嫌だからさ。」
「うん。ありがとう、暁斗くん。千里もありがとね。」
今は暁斗くんとのお話を楽しまないとですね!学校の男の子とは違う男の子との時間ですしね!
…………………………………………………………
ふむふむ……菜月側は問題は無さそうだね。
暁斗もやっぱり大丈夫そうだし、心配は無さそうな気がする。
俺は菜月達を気にしながらも巴さんとも話をしてる。
別に俺はシスコンじゃ無いし?気にはなるけどそこまで気にしてる訳じゃ無いけど?これは兄として妹を心配してるだけで別に普通の事だし?
「暁斗がすいません、悠馬さん。」
「え?いやいや!寧ろ菜月達の相手をして貰えて助かってますよ。」
巴さんが謝ってくるけど実際には助かってるのも事実だ。
それと様付けだと俺が嫌だし年下だから呼び捨てで良いと言ったけど、それは恐れ多いと言われてさん付けに落ち着いた。
「会場に居た時も暁斗は菜月ちゃんに見惚れたりしてて自分じゃ釣り合わないとか言ってたけど仲良く慣れたら良いなとは思ってたみたいで……」
「むっ!菜月と付き合いたいなら俺を倒して……」
「はいはい……お兄ちゃんは少し落ち着きましょうねぇ〜。」
愛央が俺に突っ込みながら頭を撫でて落ち着かせようとしてる……マテ!これじゃ俺がシスコンみたいじゃ無いか!違うぞ!断じて違う!
「悠馬さん……諦めも大切ですよ?それに良いでは無いですか。」
「そうそうっ!菜月ちゃんもブラコンなんだしねー。お互いに!」
「はい……?呼びましたか?」
自分の名前が聞こえたのか菜月が俺達に向き直る。
「気にしなくていいよー?菜月ちゃんがブラコンって話してただけだからっ。」
「な、なぁ?!///私はブラコンじゃっ!!!」
「え?自覚が無い訳では無いですよね?菜月さん。」
「そんな否定しなくても皆が知ってる事だよ?」
「ですね……ファンの間でもブラコンなのは有名ですよ?」
「それと悠馬さんがシスコンなのもですね。」
「菜月も悠馬先輩も諦めよ?とっくに知られてますよ。」
「「ガ~~ンっ!!」」
菜月は真っ赤になりながら知られてたなんて……と涙目になってるし、俺は俺でシスコンって事に気付かされて落ち込んだ。
「悠馬ってば自覚無かったんだ……意外。」
「でも悠馬くんって変な所で鈍いし自覚無くても驚かないかも?」
「そうですね。悠馬さんは自分の事だと変な所で鈍いですし。」
「……ごふぅ……」
婚約者達からの突っ込みで血反吐を吐いた様な反応をした俺はそのままテーブルに突っ伏す事しか出来なかった。
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