第22話 菜月と暁斗

「こんにちわっ。初めましてYouMaです。先程はお騒がせしました。」

「菜月です。私の不手際で皆様にご迷惑をおかけしてすいませんでした。」

「いやいや!そんな!そんな!寧ろ聞けて嬉しかったです!高岡暁斗って言います!」

「新曲素敵でした!姉のともえと言います!」

「気に入っていただけたなら良かったです。それでお詫びって訳でも無いんですけど……こちらをどうぞっ。」


二人に今回のCDを渡す。

他の人と同じくケースにはサインをいれてある。


「こんなのがお詫びになるとは思ってませんけど、気持ちとして良ければ……」

「いい……んですか……?サイン入りって……やばぁ……」

「あの、無理しなくて良いんですよ?話せただけで俺達は十分ですよ。」

「そう言って貰えるのは嬉しいけど、それはそれだしね?俺と同じ男子で表に出てるから個人的にも気になったのがあってな。暁斗だったよな?」

「は、はい!俺はその、昔から絵を書く事が好きで、でも何かをして来た訳じゃ無かったんです。それに、姉さんや母さんに辛くあたったりもしてて……」

「誤解しないでくださいYouMa様。暁斗は確かに言葉遣いとかは乱暴になりましたけどは一度も振るってません。」

「そこは兄さんと同じですねっ。兄さんも暴力は振るったりしなかったですし。まぁ、暴言も無かったですけど……なんて言うか私達にどう向き合えば良いのか分からないって感じでした。」


俺の事は良いんだよ!恥ずかしい事をバラすなっての!

俺の顔が苦笑いになってるのを見た暁斗も同じ様に苦笑いしてる。


「そんな中で、YouMaさんが現れて放送を見てる内に話してた言葉ややって来た事で、回りにどんどん友達が増えて行くのを見て、あぁ、そうか……ってそれならやれる事を少しずつやって行こう!って思って……今に至ります……はい……」

「そっか。俺が暁斗の力になれて、背中を押せたなら俺は嬉しいよ。」


俺の言葉と自分の話した内容で照れくさそうにはにかんだ暁斗。

そんな暁斗を菜月はぽけーっとしながら見詰めていて……


「菜月?どうしたんだ?暁斗をそんなぽけーっと眺めて。」

「えっ……あっ……はい……その、何でも無いです…よ?」

「それなら良いが、熱中症とかでは無いんだよな?」

「はいっ!兄さん、そろそろ……」

「あぁ、そうだな。それじゃお互い頑張りましょう!」


俺達はそう言って隣のブースに移動する。

でも、菜月がなぁ〜……なんか何処か名残惜しそうなんだけど、マジでどうした……?


…………………………………………………………

SIDE 菜月


はぁぁ……どうしちゃったんだろ?私。

高岡暁斗くん……開場前から男の子が居るのは気付いて居ましたし、お姉さんと仲が良さそうなのも分かってました。

反対側とは言え真正面なので目に入りましたからね。

兄さんの妹としてそれなりに有名になってますし、放送にも出たりしてますから顔も知られてます、会場のあっちこっちから視線は感じてましたから間違いは無いと思う。

暁斗くんも私に気付いてお姉さんと何かを話していたのも見えましたから自惚れる訳では無いですけど学校でも告白されたりもありますし、外を歩いていれば男女問わず声をかけられたりもするので人気?も多分それなりあると思います。

その中には勿論、男性も居ますしお断りする事もありますから兄さん達以外の男性にもそれなりには慣れてるし、側に居るのが兄さんなので他の男性は通り過ぎる人でしか無い……筈なのに……


「何故か暁斗くんは、もっと仲よくなりたい、もっと知りたいって思いました……」

「どうした?疲れたか?」

「あぁいえ……疲れはしてますけど、そうじゃ無くて……」

「ふむ……キツイ時はちゃんと言えよ?それにしても暁斗かぁ〜……中々良さそうな奴だったな。」


ドキンッと、兄さんの言葉に私の心臓は大きく鼓動して、少し顔が赤くなる。


「よ、良さそうって……?どういう事ですか?」

「真面目そうだし意思も確りしてるみたいだし健司よりは先を見据えては居ないみたいだけど目標?はあるみたいだしさ、こんな会場にも出て来て頑張ってるじゃん?健司だってこう言う所にはまだ出たこと無いから、凄いなってね。まぁ……健司ともまた違うけど。」

「そ、それは……はい……凄いと思います。」

「だよなぁ~……健司達に良いお土産話出来たわ。」


兄さんの言う通りこう言う会場に出て来てるのは凄いと思います。

稲穂くんの場合は学園祭って言う他に友達や警備員、教師とか何かがあっても守られる場所でですしね。

チラチラと暁斗くんを気にしながら私と兄さんは他のブースへの挨拶を終えて自分達の場所へと戻る。

そこはさっきよりも戦場で義姉さん達も加わった事で更に大変な事になっていた。


「これは……完売も早そうですね……」


兄さんを筆頭に義姉さん達の人気を再確認しながら私はどんどん押し寄せて来るお客さんを捌いていくのでした。


…………………………………………………………

「買ってくれてありがとねぇー!サインは必要かな?」

「良いんですか?!宜しくお願いします!」


愛央と志保に清華と菜月と千里で商品を並べたり会計をしたりした後で俺は買ってくれた人にサインをいれたり、一緒に写真を撮ったりとサービスしていた。

殆どって言うか全員が希望してくれるのは予想外だけどこれくらいのサービスなら別に……ね?


「ありがとうございますっ!宝物にしますねっ!」

「こちらこそありがとうねっ!」


沢山の人、本当に沢山の人が菜月の出したブースの物を買ってくれて俺も沢山のサインを書いたり写真を撮ったりと忙しく過ごしてた。

結局、補充した分も完売して数時間程度で完売して最後まで走り抜けた。


「お疲れ様ー!完売おめでとう!ってぐったりだな……」

「やり切りました……凄すぎです……」

「予想以上だった……流石は先輩の効果ですよ……」


俺は後からだから菜月の力だろこれ?元々は菜月の作品がメインなんだしさ。


「菜月ちゃんの漫画の効果もあったし、悠馬の新曲とか本人の登場とかも効果あったんだろうけどヤバかったね……」

「私達の手伝いも効果があった様で良かったです。」

「本当に菜月ちゃんも千里ちゃんもお疲れ様!」


それじゃぁ……ぱっぱと撤収してお疲れ様会だな!予約してるお店もあるし暁斗達も誘うかな!


「ちょっと離れるね!少しこの後の事で声かけたい人居るからさ!」

「ちょっと?!悠馬!待って!待って!私も一緒に行く!志保さんと清華さんはそっちお願い!」


俺が歩き出すと直ぐに愛央が隣に来る、こう言う速さは愛央が何時も早い。流石は最初の恋人だ。


「誰に声かけに行くの?」

「ほら、丁度反対側に居る二人組だよ。高岡巴さんと暁斗くんって言う姉弟。来るかは分からないけど打ち上げに誘おうかなって思ってさ。」

「珍しいね……男の子がこんな所に出て来てるなんて。悠馬効果?」

「悠馬効果は止めろ……すっかりと世間に浸透してるけど、何か恥かしいし大袈裟だっての。」


昔からそうだよ……悠馬効果ってなんやねんっ!偶々、俺が最初に色々と動いただけで、世間に出てるのが俺が最初って訳じゃ無いっての!


「まぁ……私も大袈裟だとは思うけどね?別に世の中に出たのが悠馬が最初では無いんだし……そう考えたら何で言われる様になったんだろう……?」


ほんとにそれなぁ……とか言ってたら暁斗達の前に着いたっと。


「悠馬さん……?お疲れ様でした!どうかしましたか?」

「お、お疲れ様です!!!えっと、一緒に居るのは愛央さんですよね?綺麗……」


分かる分かる。愛央は本当に綺麗になったからねぇ……当時の清華みたいに見惚れる人が沢山になったからな!可愛いから綺麗に進化!って感じ。


「あはは……ありがとうございます。私は、悠馬の付き添いです。」

「えっとさ、二人はこれから何か予定ある?俺達は打ち上げするんだけど、もし良ければ一緒にどうかな?って誘いに来た。」

「うえぇぇ?!マジですか?!この後は、ホテルに戻って休むだけなので予定は無いと言えば無いですけど……」


暁斗の言葉に巴さんも驚いた顔をしながらウンウンと頷いてる。


「なら良かった。それなら付き合わない?折角知り合えたしさ。どうかな?」

「良いんですか……?」

「俺が誘ってるんだから良いんだよ!じゃー、撤収作業終わったら裏で集合って事でよろしく!後でな!」


俺と愛央で手を振りながら二人から離れて戻るけど、愛央が不思議そうな顔をして俺に聞いてきた。


「良かったねっ!でも、やっぱり不思議だなぁ。何で誘ったの?」

「幾つか理由はあるけど、こんな所に出て来る男子だから気になった事。もう一つは、菜月が気にしてたからかな。」

「?!……そっかぁ……菜月ちゃんがねぇ……」

「何を考えてるか分からんけど、何か気にしてたんだよね。だからって訳でも無いけど、俺も気になるし菜月が仲良くなれたらそれで良いかなって思ってな。」

「お兄ちゃんーっ!可愛い妹が取られちゃうかもよぉ?」

「うっせっ!揶揄うなっての!」


愛央と馬鹿な話をしながら俺達は、ブースまで戻り皆に暁斗達の事を話したら皆して喜んでくれて、菜月は顔がになって俯いたのだった。


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