第19話 進路4

「それじゃぁ……悠馬くんは獣医を目指したいと考えてるのね?」


「はい。色々と考えたんですけど、動物が好きなのと今回の1件で昔の夢を思い出しまして、目指してみようと思いました。」


とある平日、学校の進路相談にて俺は担任の水無月先生を真っ直ぐ見ながら話をしていた。


「そう……獣医を……」


「向いてないと思いますか?」


「ん?あっ!そうじゃ無くてね?YouMaとしても成功しているしそっち関係の道に進むと思っていたから、獣医と言うのが意外でね?」


「その道も考えはしましたけど不安定だなと思いまして、今は人気があるけどこれから先も続くなんて都合の良い事は無いですし、愛央達との事もあります。将来を考えたら皆の親を安心させる意味でも定職は必須だと思いまして……」


この世界で俺なら人気が無くなる事は無いとは思うし、無くなっても大丈夫な位の蓄えは既にあるとは言え、それはそれだと思う。


「まぁ……その心配はいらないとは思うけど立派な考えだと思うわ。うん……分かりました!時期的にも大変だとは思うけど先生は応援します!頑張ってね!まぁ、悠馬くんの成績と人気ならあっちこっちから声はかかると思うけどね。」


「ありがとうございます!つくづく俺の担任が水無月先生で良かったと思いますよ。」


「も、もうっ!嬉しいけど恥ずかしいなぁもうっ!」


沢山の事を面談で話して学校の事なんかの資料を集めてくれると約束してくれたり充実した面談を終わらせて俺は相談室を後にした。


さて、次は帰ってから母さんにかな?許可……でるかな……


…………………………………………………………

「獣医を目指すの?音楽関係じゃ無く?」


「うん。駄目かな?」


「だめな理由わけ無いでしょ!でも何で獣医なの?悠ちゃんの今までの活動的に音楽関係かな?って予想してたんだけど。」


先生への相談の後、母さんも家に居て夕飯の後、リビングのソファーで俺は母さんにやりたい事、進路を改めて話していた。

俺の足元と母さんの足元には引き取って来た子犬達がじゃれついていてわさわさと撫でたりしながら話してる。少し離れた場所では菜月が母犬をブラッシングしながら俺達の話を聞いてる。


「私も兄さんは音楽系かな?って思ってました。予想が外れちゃいましたね。」


「そっちも考えたんだけど今やってるYouMaの活動はやっぱり趣味なんだよね。趣味を仕事にしても上手く行くビジョンが見えないんだ。まぁ、既に莫大な利益出ているだろって言われたら言い返せないんだけどさ。」


「とは言え何時まで続くかは分からないし、悠ちゃんもオジサンになったら流石にねぇ?大丈夫な気もするけど……」


「俺の後追いだって出てくるだろうからな。それを考えたらやっぱり仕事は必要かな。」


「でも何で獣医なんですか?医師では無くて。」


悠馬と俺の夢だから……とは言えない。

実は昔からなんて言っても違和感は持たれると思う。

だからこそ……自意識過剰の返答をする。


「先ず大前提として動物が好きだからってのがあって、それと普通に医師になるのも良いとは思うけど、病気でも無く来院して一日中居たりする人も出てきそうだからね?動物病院からその部分は少しは緩和されるかなって……」


「あぁ……確かに居そうねぇ……」


「ですね……」


通っちゃった……かなり自意識過剰な答えなのに……


「まぁ、そこは余り気にしてないのが本音なんだけど、個人的に動物を助けたいって今回の事で思ったのが強いんだ。それと……」


言った方が良さそうな気がするし、言っておくか……


「昔は、獣医が良いって考えたのを思い出したんだ。だから、それなら目指そうって、成れるのかは分からないけど、その事を思い出したのと今回の事でやれるところまでやってみたいって思ったんだ。だから……」


「うん、目指してみなさい。応援するし協力して欲しい事があれば言ってね?」


「良いの?」


「当たり前でしょっ。悠ちゃんが目指すものを邪魔する理由なんて無いわ。」


「兄さんが獣医かぁ……これでお前達に何かあっても安心だねぇ。」


わんこをなでなでしながら菜月が優しい顔で俺を見詰めて来る。

母さんも一安心って顔して俺を見てる。


「ありがとう。頑張ってみるよ。」


その後は、わんこ達と母さんも俺も遊んで夜が更けて行った。


…………………………………………………………

「獣医ですか?悠馬さんが?」


「あぁ、親子を助けて、昔に目指してみようって思った事を思い出してさ。この間の本屋で獣医学書を買ったろ?目指してみようかなって思ったんだ。」


「そっかぁ。悠馬が獣医かぁ!それじゃぁ……」


「愛央?」


「悠馬が獣医師を目指すなら私は、お姉ちゃんみたいに看護師になる!迷ってたけど悠馬が動物を助けるなら、私は人を助ける!」


拳を握りしめながら愛央は俺達にそんな宣言をするのをぽかーんとした顔で俺は眺める。


「ぷっくくく……あはははははっ!何その気合の入れ方。あぁ~……笑ったわぁ。」


「なんでぇ?なんでそんなに笑うかなぁ!!」


「今のは笑うよっ。そんなに気合いいれて言う事じゃ無いじゃないっ。」


愛央の反論に清華が笑いながら答える。


「むぅ……いいもーんっ!私の進路はそう言う事で!!!」


「うん、愛央の看護師姿を楽しみにしてるよ。俺も頑張る。志保はステイルを継ぐ事、清華はそのまま音楽の道?」


「そうだねぇ。音楽の教師とかも良いしピアノ教室を開いても良いしねっ。」


「これからは私達の本当に大変な時間が続きますね。それぞれの未来の為、夢の為、目標の為……」


「お互いに支え合いながら、励まし合いながら……」


「私達4人の未来の為……」


「どんな事があっても俺達なら大丈夫。何があっても俺達は乗り越える。俺達は今までもこれからもずっと一緒だ。」


俺は左手を3人の前に出す、その手に愛央が、志保が、清華が手を重ねる。


「そして、私達の一番の夢……」


「何よりも大切な夢……」


「悠馬くんのお嫁さんになる事っ!」


「「「絶対に叶えるんだから!覚悟してよ!」」」


「あぁ!俺も3人と結婚する!その為にも……」


「「「「頑張ろう!!!!」」」」


笑顔で俺達はこれからの事を話し合う。

勉強の事もだけど、卒業したら一緒に住みたいって話も出て来て、確かに俺もその話には大賛成だったけど……母さんと菜月の説得が大変そうだなぁ……


あぁ、それと……子犬達だけど俺のクラス、愛央と志保のクラス、健司達、優理ちゃん達のクラス、雪村家とあっちこっちに声をかけて3匹とも引き取られて行った。

母犬だけは家で面倒みる事になったけど、引き取った子犬達もちょくちょく遊びに来ては家の庭で走り回って遊んだりしながら家族ぐるみの付き合いが増えて行くのだった。


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