第20話 作って売るよ!!
「ん〜……」
兄さんのチームYouMa放送の後、千里から絵の書き方を学んで、全力で練習をして、兄さんの作品、思い出を乗り越えての漫画を私は書き始めた。
「とは言え……むっずかしぃ〜……」
まぁ、簡単に書けるとは思っては居ないし、絵自体もまだまだ全然ではあるし……はぁぁ。
「ラフは何とか書けたけど、ここから清書して……」
簡単に考えていた訳では無いけど漫画家さんって凄いなぁ〜。
「書けたのは、最初と……日常パートの部分。数話ってところかな?」
せめて、単行本一冊分とは言わないまでも続きを楽しみにして貰える位には出来ないとね。
私は独り言ちてPCへと向き直った。
…………………………………………………………
コンコンッ
集中していると部屋の扉をノックする音がして私は画面を見たまま、「は〜い。どうぞ〜。」と声を返す。
ガチャりと音を鳴らして扉が開き兄さんが中に入って来た。
「どうだ?菜月。進んでるか?」
お盆にお茶とお菓子を載せて兄さんが私を覗き込みながら聞いてきた。
「はい。何とかですけどそこそこ形にはなって来たと思います。」
「どれどれ〜?」と、言いながら部屋のテーブルにお茶とお菓子を置いた兄さんは私が作業していたPCを見る。
「あむっ……簡単にかんがえていた訳では無いですけど、本当に漫画家さんって凄いです。」
お菓子とお茶を楽しみながら一息を付きながら兄さんに零した。
「楽な仕事は無いさ。後は楽しめるかどうかだろ。菜月がこの作業を楽しんでやり遂げられるかだな。」
「それは……私も分かりますけど……」
画面を真剣な目で見ながら話す兄さん。
普段から格好良い自慢の兄さんだけど、真剣な顔も見惚れちゃいますね。
「……うん、良いと思う。最初の回想から彩音を助ける所まで、書いてない日常パートも増やしてるし、良く書けてると思う。キャラクターの特徴も捉えているし、話も上手く書けてるね。」
「良かった……兄さんにそう言って貰えたならこのまま書き進めても良さそうですね。」
「そうだな。何処まで書くんだ?既に数話分は書けてるだろ?先に書いた部分を完成させたらどうだ?」
「その方が良いですかね?小出しになりすぎませんか?」
「寧ろ小出しで良いだろ。余り一度に出しても勿体無いと思うしね。」
それもそうですね……小出しで時間かけながら出した方が私の作業的にも楽ですね。
「分かりました。先ずは出来てる分を完成させます。」
「頑張れよっ。」私の頭を撫でて兄さんは部屋を後にしました。
「良しっ!やるぞぉ!!」
気合いを入れ直した私はPCの前に座り直し……数日かけて完成まで持っていくのでした。
…………………………………………………………
~夏の祭典~
「ふう……これで良いかな?」
応募が通ってしまいました。
参加出来れば良いな?位で抽選に参加したらブースの一つを手に入れてしまって困惑しています。
「菜月ー!こっちは準備良いよ!そっちは?」
「こっちも終わったよ、千里。」
オープニング曲……メモリーズ
エンディング曲……~それから~
テーマソング……思い出に変わる君
3曲のカラオケバージョンの合計6曲入って……500円。
千里が開場前の商品を並べるのを終わった事を知らせてくる。
「全部物凄く素敵な曲ですしね。500円で良いのかなこれ……」
「先輩からの指定だし良いんじゃ無い?私も良いの?って思うけど……」
「はぁぁ……不安だけど、売りましょう!売れ残ったりしたら兄さんに合わせる顔がありません!」
「そこは間違いないね!絶対に完売させる!!!」
私の千里のやり取りを近くのブースの人達や隣の人達とめっちゃ見られてる……と言うかグッズを睨み付けてる……兄さん……助けて……
…………………………………………………………
「ぬいぐるみ一つ!キーホルダー一つ!」
「は、はい!!!直ぐにー!」
「私は全部一つずつ!!!」
「お、お待たせしました!!!すいません!!!」
ひぃぃぃぃ!!!忙しいよぉ!!!勢いがヤバい!!!
「こ、このCDはまさか……?!聞いた覚えの無いタイトル!!!まさか新曲?!」
「は、はい!!兄さんが思い出を乗り越えてに合わせて作った奴でして……」
「か、かかか、かかかか買います!!!」
「ありがとうございます!!!」
助けてぇぇぇぇ!!!人が人がぁぁぁ!!!
開場した瞬間からおかしかったんです……ドドドドドって地面が揺れるんじゃないかって位の速度で沢山の人が私達を目掛けて押し寄せて来て直ぐに大混乱の売り場になってしまって……スタッフさんが直ぐに駆けつけて列の整理まで始めて……
「さ、流石……YouMa効果……初出店なのにこれは……」
「う、うん……在庫大丈夫かな……てかお手伝い早く来て欲しいなぁ……」
「すいませんー!お会計でー!」
「はいー!?直ぐにー!!!」
助けてぇ……兄さん……
…………………………………………………………
「すっげーなぁ……反対側のブース。流石はYouMaさんの妹さん。」
今、この日本でYouMaを知らない人は居ない。
そう言えるくらい下手な芸能人なんて目じゃない位に知名度と影響力のある高校生……好き嫌いは別にしてな。
その妹さんが書いた漫画、学園祭で上映した映画、思い出を乗り越えての漫画を描いて出してる。
「YouMaさんだけじゃ無く妹さんの知名度も凄いし、ある意味、チームYouMaとしての最初のオフライン活動か。」
「凄いねぇ……流石はYouMa様関係。」
俺の隣では姉さんがお客さんをさばいた後に俺と同じ様に反対側を見て感想を零してる。
「まぁ、同じ会場だからこっちも見て貰えてるんだろうけど、それにしたってね?初出店であれはヤバい。ね?
YouMaを姉さんから知って最初は反発してたけど直ぐに魅了された。
そこから2年、俺はYouMaさんを追いかけてる。
学校も違うしそもそも、住んでる県だって隣の県だから接点は無い。
唯のファンって立ち位置だけど……俺にとっては恩人なんだ。
母さんや姉さんとの付き合い方が分からなくて悩んでて、八つ当たりばかりで……そんな俺に道を示してくれたのがYouMaさんの存在。
そして、そんな背中を追いかける内に俺も表に出る様になった。
YouMaさんが前に言って居た言葉に俺は変わる切っ掛けを貰った。
迷うくらいなら止まるな。
何度間違えても良い。
全力で決めたゴールまで走り続けろ。
限界を超えられるかは自分次第なのだから。
「俺がこんな所に居るなんてなぁ……妹さんと話せないかな?YouMaさんに感謝してるって伝えて欲しいな。」
「ん~?本当にそれだけかなぁ?菜月ちゃんと仲良くなりたいんじゃないのぉ?」
ニヤニヤと姉さんが俺に聞いてくる。
「ばっ?!///何言ってんの?!///俺なんかが釣り合う訳無いじゃん!!!」
「へぇぇぇ、仲良くなりたいのは否定しないんだねぇ?」
「なぁっ?!///う、うるさいな!!!ほら!お客さん来てるよ!!!」
「ほーいっ。いらっしゃいませー!」
このぉ……確かに菜月さんが可愛くて綺麗なのは認めるし、そりゃぁ……あんな子と仲良くなれたらって俺も思うけど……俺何かじゃなぁ……どうしても自分に自信が持てない。
こうやって大勢の人の前に出て来る事は出来る様になったけどそれとはやっぱりねぇ。
「でも、仲良くなれたら嬉しいかな……」
商品を袋詰めしながら俺はそんな言葉を零した。
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