第12話 陽依里を救った人に救いの手を

ガヤガヤと騒がしい園内を俺と陽依里ちゃんの二人ははぐれ無い様に確りと手を繋いで歩いて行く。

YouMaとバレて騒ぎになりそうなものだけど、幾らYouMaでもここまでの人混みに無防備に現れると思われて無いのか、?!と驚かれはするが、騒がれたりはしてない。


「えっと!えっと!先ずは!先ずは!」


俺と手を繋ぎながら歩く陽依里ちゃんを苦笑いしながら一緒に歩く。


「落ち着きなって。アトラクションも逃げないから。」


「そうですけど!楽しみ何ですもん!」


無理をして居る感じは無いし陽依里ちゃんを支えてくれる友達も居るしもう大丈夫みたいだな。

それじゃ!俺も変な事は考えないで楽しむかな!


…………………………………………………………

コーヒーカップ


「きゃぁぁぁ!悠馬さん!回しすぎですぅぅぅぅ!!」

「おう!!勢い付けるのがお約束だろ?!」

「そ、そんなお約束知らないですぅぅぅぅ!!」


メリーゴーランド


「悠馬さ〜〜んっ!!」

「はいよー!可愛いぞー!」

「白馬に乗った悠馬さんも格好良いですー!」


ゴーカート


「上手いな!!陽依里ちゃん!!」

「えっへへ!!ゲームも好きなので!!」

「くぅぅ!負けてらんねぇ!!待てぇぇい!」

「先に行きますよ!追い付いてみてください!!」


空中ブランコ


「ひぃぃぃっ!足が付かないの怖いです!!」

「あははっ!直ぐに慣れるさっ!」

「は、はぃぃぃ!でも気持ち良いですぅ!!」


お化け屋敷


「手を!離さないでくださいよ!?離したら嫌いになりますからね!?」

「分かってるよ。ちゃんと掴まってな。」

「うぅぅぅ……思ったより怖いですぅぅ。」

「お化け屋敷だしねぇ……」

「な、何で平気なんですかぁぁ!?」

「まぁ……男だし?作り物って分かってるし?」

「そ、それはそうかも知れませんけどぉぉぉっ!」

「ウバァァァァァァ《イチャイチャするなぁぁ》!」

「キャァァァァァア!!」

「ォォォォオオオッ《羨ましいんじゃぁぁぁぁ》!!」

「何か…副音声聞こえるな……」 


ジェットコースター


「キャァァァァァア!!」

「うぇ〜〜〜いっ!!あ!そう言えば……」

「何ですかぁ〜〜〜?!」

「天辺で止まって逆走して脱線してどんどん死んでいくって、未来を見てジェットコースターに乗らないで助かったけど、助かった人がどんどん死んでいくって、映画思い出した!」

「ヒィィィ!!今言わないでくださいよーー!!怖くなるじゃ無いですかぁぁぁ!」

「ぉ、ぉぅ…ごめん…」


レストラン


「美味しいですっ!ちゃんと力いれてますねっ。」

「うむ。確かに良い味だな。こっちも良い味だよ?ほらっ。あーんっ。」

「ぁぅっ///ぁ、ぁーんっ///」

「どう?結構美味しいでしょ?」

「恥かしくて味が分かりません……///」

「ぷっ。くくくっ。」

「わ、笑わないでくださいよぉ!!」

「ご、ごめんってっ。くくっ…ふっぷぷっ。」

「もうっ!知りませんっ!!!」

「あはははっ。ごめんごめんっ。」


…………………………………………………………

「流石にそろそろ帰らないとかな?夕方だし、直ぐに暗くなっちゃうしな。」


デートの最後に俺と陽依里ちゃんは観覧車に乗って景色を楽しんでいた。


「そうですね…ありがとうございました。凄く楽しくて最高の思い出になりました。」


「大袈裟だよ。別に今回だけじゃ無いでしょ?予定さえ合えば遊園地くらい、付き合うぞ?」


俺は陽依里ちゃんを見詰めながら言葉に答える。


「はいっ。でも、流石に愛央お姉さん達に悪いですし……」


「気にしすぎだよ。実際に愛央達も笑顔で送り出してたろ?別に無理もしてなかったぞ。」


「それは…そうかもですけど…。本当に、誘っても良いんですか?」


「勿論だ。二人っきりが気になるなら他の皆も誘っても良いんだしさ。」


「はいっ!それじゃー、また今度、誘わせて貰いますね!今日は……いえ、今日だけじゃ無くずっと知り合った時からお世話になりっぱなしでご迷惑ばかりかけて……」


なんて言うなよ?俺が聞きたいのはその言葉じゃ無いな。」


「ぁっ…はいっ!ありがとうございますっ!」


天辺に到達した瞬間に陽依里ちゃんから飛び出したその言葉は夕日の明かりに照らされて、陽依里ちゃんの容姿と相まってとても綺麗に見えた。

そんな姿に俺は見惚れてしまっていて、陽依里ちゃんが近付いて来た事に気付くのが遅れた。


だから……


「んっ。……えへへっ///私の気持ちですっ///初めてですからね…?///」


陽依里ちゃんの思い切った行動を止める事も出来ずにそのまま受け止めた。


「いや…っ///これはさぁ///ズルく無いか…?///」


陽依里ちゃんからのキス……にだけど、間違い無くキスされた。


「やったっ。悠馬さんをドキドキさせられましたっ///」


「全く…俺の負けだよ…やれやれ……おませさんめっ!お返しな?」


ちゅっ!と陽依里ちゃんの前髪を片手で上げて、おでこに軽くキスをしてやり返す。


「ひゃぁぁぁぁぁ///」


観覧車の中に陽依里ちゃんの叫びが轟いた。


…………………………………………………………

SIDE 陽依里


むぅぅぅ……悠馬さんをドキドキさせられたと思ったのに直ぐにやり返されてしまいました。

まだまだ勝てませんね……でも、それでこそ悠馬さんだと思うし、だからこそ悠馬さんは皆から憧れられるんだと思う。

私はそっと、繋がれてる手を見詰める。

こうやって繋いだ手からの温もり、私を救ってくれた温もり……この手を放したくない。

まだまだ子供な私だけど、何時か何時か……一人の女として見て貰いたいなぁ。


「さて、良い時間だしこのまま帰ろうか。夕飯も一緒に食べたい所だけど、柄の悪いのも増えてくる時間だし陽依里ちゃんを連れては危険かな。」


自分が…じゃ無いんですよねぇ…


「あのっ!後、一か所だけ付き合って欲しい所があるんですけど、良いですか?」


「うん?勿論だけど…?何処に行くんだ?」


私は悠馬さんの手を引いて、タクシーを捕まえた後に場所を話し……何かを言いたそうな悠馬さんを無視して無言で落ち着いて座った。


それから目的地に着いた後、悠馬さんを引き連れてとある場所に向かう。


「ちゃっと、待った。この先は駄目だ。治安が悪い事で有名な場所だぞ?」


「分かってます。私もそこまで子供じゃありません。でも、この先に会いたい人が…人達が居るんです。」


「会いたい人達ね……はぁぁぁ、分かったよ。付き合ってやる。ただし!俺から離れない事!良いな?」


「はい。ご迷惑をおかけしますけどお願いします。」


悠馬さんを引っ張って路地裏に入って行く。

そんな私を小馬鹿にした様な顔で見た後に悠馬さんを見て一気に女の目になる人達。

分りやす過ぎます……気にしても仕方無いですし、さっさと行きましょう。

そう、私の目的の場所は、とある路地裏……そこには私を助けてくれたお姉さん達。

でも…その姿を見た悠馬さんはギリっと音が鳴るほど歯を嚙み締めた。


…………………………………………………………

「お前ら!そこまでだ!陽依里ちゃんを頼むぞ!護衛さん達!!」


パッと手を離し一気に距離を詰めた俺はアイツ等を囲んでる頭だと思われる女の腕を掴む。


「ぐっ!!……誰だ!!!って?!?!」


「生きてるか?お前等。」


「悠馬さん…?何で…?」


「陽依里ちゃんに連れられてな。」


後ろに目を向けると陽依里ちゃんの事は確りと護衛のお姉さん達が保護してくれてる。

それを確認した俺は腕を掴んでいる奴を睨み付ける。


「YouMa?何でそいつ等を?いや、何でここに…?」


「くそ下らねぇ事しやがって!動けるか?お前等。」


「は、はい!何とか……!」


「って駄目ですよ!こんな所に来たら!!」


「そうですって!こんな掃き溜めに!」


「だったら下らねぇ事に巻き込まれてるんじゃねーよ。ところで?こいつ等は俺の依頼者なんだけど?何してくれてる訳?」


ビリビリと気迫を込めて睨むのと同時に掴んでいる腕に力が入りギリギリと締め付ける。


「う、腕…痛…こいつらは!……離して!!離せって!!」


俺の腕を振り解いて距離少しだけ取ったのを見て俺は庇う様にあいつ等の前に立った。

陽依里ちゃんと護衛達も俺の側に来て護衛さん達は陽依里ちゃんを後ろに庇う形になり俺の直ぐ後ろに立つ。


「こいつ等は!チームを抜けると言うから!落とし前を付けさせてるだけ!関係ない奴が!YouMa様でも関わるな!これは私等の問題だ!」


「さっき言ったよな?こいつ等は俺の依頼者だと。つまり、関係者なんだよ!」


「だとしても!!こいつ等に落とし前は付けさせる!!それがチームを抜ける条件だ!!」


「何が!条件だ!私刑リンチが条件だってのか!?そんなルールなら知った事じゃねぇ!!」


「だったら…どうすんの?私等とやり合う?この数相手に足手纏いまで居て何とかなると思ってんの?YouMa様!」


頭の言葉に「えっ?!YouMa様とやり合うの?!」と周りの奴等も驚いた顔をして俺と頭の遣り取りを眺めてる。


「必要ならやってやるよ、をな!悔恨かいこんなんざ残さねぇ!皆殺しにしてやる!」


「こ、殺し合いって……」と、俺の言葉にも周りの奴等がビビった空気を醸し出す。

俺も視線に殺意を込めて睨む。

護衛の人達も、それぞれシャキンと、警棒を伸ばしたり…スタンロッドを取り出してスイッチをいれてバチバチと音を出して臨戦態勢になり、睨み合いが少しの間、続いた。


「チッ!止めだ!止め!ここでやり合っても良い事なんか何もねーし、YouMa様に勝っても負けても割に合わねぇわ。どっちの結果になってもYouMaファンに色々な意味でボコボコにされるだけで良い事無いわ。」


「何だ?やらねーのか?」


「やりません!もう良いよ。そいつ等が抜けるのは認めてやるからさっさとこっから出ていきな。」


「そうか。って事らしいし、行くぞお前等?ほら!さっさと立って歩け!陽依里ちゃんの事も頼むぞ。」


先頭を歩かせてその後ろに護衛の一人、陽依里ちゃん、護衛の一人の順番で歩き始める。

それを見送って俺と、最後の護衛の一人と歩き出す。


「良い気迫でした。冷や汗かいたのなんて初めてですよ。」


「やめーや。俺なんか大した事ねーよ。騒がして悪かったな。」


お互いにすれ違うタイミングでそれだけを交わし俺は表通りに向かいそのまま路地裏を後にした。


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