第10話 敵は二度と歯向かえないように潰します

キーンコーンカーンコーン……授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

生徒達の挨拶を終えて、教師がここからの流れを話し始める。


「本日はここまでになります。この後、保護者達の懇親会がありますので、保護者の皆様は別室でおまちください。」


担任がそう言って次に進めようとするが…このまま終わらせる訳が無い、俺はそんなに甘くない。


「あぁ…すいません、先生。少し宜しいでしょうか?」


突然の俺の言葉に驚きはして居るが嫌な顔もせず…と言うか明らかにネットリとした顔で俺の提案を受け入れる。


「勿論ですよっ!ナニかありましたか?YouMaさんっ。」


「ありがとうございます。お母様の皆様も自分の我が儘でお時間を取らせてしまいますが宜しいでしょうか?」


少し、困惑顔はして居るが、取り敢えず拒否感が無さそうな反応があっちこっちから上がる。


「勿論ですよ。YouMaさんのお話を聞かせてください。」、「全然問題無いです!どうぞ!どうぞ!」、「何故ここに居るのかの説明とかですよね?」等々……


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えまして……」


俺は夏凜さん、愛央、志保、清華に目配せをした後におもむろに陽依里ちゃんの側に近寄った。


「悠馬さん…?」


そんな俺に対して不思議そうな顔をして見詰めてくる。


「良く、頑張ったな。後は任せろ。」


俺の言葉に、呆然とした後に……ぽろぽろと、自然と涙が零れて来る陽依里ちゃんを俺は優しく顔を隠す様に抱きしめた。


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SIDE 陽依里


やっぱりだった。

やっぱり悠馬さんは知ってしまったんだ…私の現状を…だから今回、こんな無理矢理な方法で今、教室ここに居るんだ。


「ふぐっ…ぐすっ…うぅぅ…」


悠馬さんの言葉に自然と意識せずに涙が零れた私を、ふわりと優しく抱きしめてくれて、私の涙を隠してくれる。

こう言う事を自然と出来てしまうから、だからこの人は……


「俺が今回こんな無理矢理な方法でここに居る理由はたった一つです。とある人から陽依里が酷いを受けて居ると教えられたからだ。」


犯罪行為?イジメは受けてるけど犯罪行為は……


「あの…話の腰を折って申し訳無いのですが…娘から聞いた話ではイジメだと……」


「認識が甘いんですよ。イジメなんて軽い言い方をして居るのがそもそもの間違いだ。イジメは全てれっきとした犯罪行為だ。」


ビリビリと悠馬さんから、ぴりついた空気が零れ始める。


「暴行、傷害、窃盗、器物損壊、名誉棄損……イジメと言って居る事象には分かりやすく良く聞く名称でもこれだけの事が当て嵌まります。」


チラっと周りを見た。

当事者は全員、真っ青な顔をして居る。


「どんな理由、立場だろうと犯罪者である事は変わらない!そして!!!」


怒りを隠す事もしなくなった悠馬さんの雰囲気に教室中が飲まれていくのが分かる。


「俺に会えない、会った事も無い、仲が良いのが許せないと言うくだらない理由で犯罪者に落ちたそこのガキ共と、まともに取り合わない担任教師……全て掴んでるぞ?」


悠馬さんの言葉に顔を真っ青にする担任教師。

さっきまで悠馬さんをニヤニヤとねちっこい顔で見ていたのにね……


「とは言え…俺も流石に驚いたねぇ〜……ねぇ?先生、昨夜はお楽しみだったみたいですね?5人から搾り取ったのはさぞや楽しかったでしょう?」


「な、なな、何で…それを…?!」


「色ボケも結構ですが…貴女にパーティーをやる余裕があるとは思えませんし?パトロンが居るのは分かりますが、まさかこんな事程度で、人生終わりを選ぶなんて俺には理解できませんわ。」


ヒソヒソとお母様方が話してるのを尻目に数人が教室から逃げようとしている。

勿論、そんな事を悠馬さんが許す訳も無く……


「逃げられると思ってるんですか?」


「何の為に私達がここに居るとでも?」


「馬鹿な考えは止めなさい。逃げても何も変わりませんよ?」


私をイジメていた奴等の親が逃げようと教室から出て行くのを愛央さん達がしっかりと引き止めた。


「さて…先ずはどうぞ、入ってください。」


悠馬さんの声に反応して直ぐに警官達が教室に入ってくる。


「失礼します。先生……ご同行をお願いします。貴女には、未成年略取誘拐、暴行、障害、強制猥褻等など、複数の逮捕状が出ています。」


「なっ?!何故私に?!あれはお互いに了承の上で!?」


「話は署で聞かせていただきます。こちらへ、どうぞ。」


「暴れたりしない方が良いぞ?公務執行妨害も付くしな。無罪だと言うなら証明してみろや。」


まぁ、子供とセックスした時点、保護者の許可無く密室にいれた時点で犯罪だよね…?

項垂れながら、警官に連れて行かれる担任を生徒達わたしたちは静かに見送っている。


「さて…次は…っと…」


ピンポンパンポーン……


「保護者の皆様、生徒の皆さん。私は校長の……」


校内放送で、校長からの放送が入る。


「今回、この様な放送を行うのは…現在、校内において蔓延っている権力の暴走とそれによって生じている犯罪行為と行っている犯罪者を一掃すると言う意思表示の為です。」


「悠馬さん…?」


「大丈夫。予定通りだからねぇ~。」


「我が校の教師による不純異性交遊…」


校長の放送が続く…状況を理解した親がどんどん騒ぎ出す。


「こんな事したら…学校の評判が…」


「はっ!評判だと?評判が下がるのは実際に犯罪を行っていた奴等だけさ。」


どういう事なんだろう?学校の評判も下がるんじゃ?


「陽依里ちゃんも分からないか…簡単に言うとな?この手の問題で学校の評判が下がる理由は、学校が逃げるからなんだよ。」


逃げるから…?どう言う意味なんだろう?


「逃げて何もしないから叩かれる。だからこそ逆に認めて徹底的に犯罪者を潰し、一切許さないって言う姿勢を貫く。」


あっ!そっか!教師がそう言う対応をするって分かれば!!!


「そう。仮にイジメが起こっても教師が、校長が徹底的に戦う姿勢を表せば…これから入学させようと考えてる親はどう思うかな?」


「安心して預ける事が出来る…それに善悪も道徳も確りと教わる事が出来る…」


「正解だっ。そして…」


悠馬さんが私をイジメて居た奴らを睨み付けると、ビクンッ!と思いっきり身体を震わせたのが分かった。


「これで、お前等は終わりだ。下らない理由でこれからの人生は馬鹿にして居た最底辺よりも下になれたな。おめでとう。」


おめでとうって……流石に可哀想なんだけどなぁ……


「あぁ、折角だから一つ教えてやるよ。お前等が俺に会えなかった理由はな?お前等の親が屑だからだよ。ゴミ屑犯罪者だから俺の母親がシャットアウトして居たってだけだ。恨むなら、俺や陽依里ちゃんじゃなく、自分の親を怨む事だな。」


「ふう…全く暴れないでください。こうなった以上、無意味な抵抗はお止めなさい。」


し、志保さん…?え?制圧したんですか…?


「怪我は無いか?志保。面倒をかけてすまん。」


「いえっ。悪いのはこのさん達なので。悠馬さんがお気になさる事では無いですよ。それに…」


「悠馬くんが暴れるよりは静かに終わるしね。」


「うんうん。悠馬が相手をしたら身体どころか心も折れちゃうもんねっ。」


身体と心って……


「うん?二人共、酷く無いかい?逃げようとしたら軽く両腕、両足を砕く程度だよ?その後、徹底的に罵倒して心もぐっちゃぐっちゃにするだけだしさ。」


「だけだしさ!じゃないっての!まぁ…そうなっても止める気は無いけどね。」


止めないんだ……


「そうね。自業自得だし死なないだけ幸せだしね。」


えっと…愛央さん?志保さん?清華さん?悠馬さん…?


「陽依里ちゃんを傷付けた奴は俺の敵だ。敵には容赦はしない。これは今回だけじゃないぞ!全員覚えておけ!俺の友に!仲間に!家族に!恋人に!危害を加えるなら相応の覚悟を持つ事だ!」


「あの…私をイジメて居たのはそいつらだけなので……」


「わかってるよ。今のは念の為ってだけさ。流石にこれ以上の馬鹿は出てこないと思ってるさ。怖がらせてごめんな。」


流石にちょっと怖かったです……


「はぃ…怖かったです…」


「うへぁ…ごめんよ!本当にごめんなぁぁ!」


ふふっ。そんなに焦らなくてもっ。


「そんなに焦らなくても大丈夫ですっ。私の為にしてくれた事ですから!あっ!でもでもっ!一つだけで良いのでお願い聞いて貰えませんか?」


「お願い?まぁ…俺に出来る事なら…」


「はいっ!悠馬さんにしか出来ない事ですっ。お願い何ですけど…」


私のお願いに驚きながらも悠馬さんは了承してくれて…私は一つの約束を取り付けた。


「それと…その包帯は?お怪我ですか?」


「あぁ…その何て言うか…陽依里ちゃんの話を聞いていた時に自然と力が入ってそのまま持ってたグラスを割っちゃったんだよね……それでちょっと…ね?」


「な、成る程…?えっと、凄い事?なんだと思いますし私の為に怒ってくれたの嬉しいですけど、怪我は嫌ですよ……」


「あぁ、うん。気を付けるから許してくれ。」


仕方無い人です……怒ってくれたのは嬉しいけど怪我して欲しくは無いです……でも、そんなに怒ってくれたんだぁって。ちょっと嬉しくなってしまったのでした。


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