第9話 進撃の悠馬くん
「さて……行きますね。」
とある平日、俺を始めとした恋人の3人、雪村家の二人は小学校の校門前に現れていた。
「んじゃ、手筈通り、俺と玖美子さんは校長室。夏凜さんと愛央達は陽依里ちゃんの教室に。」
そう、どうにか違和感無く校内に入れる時が無いか?と玖美子さんに聞いた所、授業参観があると分かったからそれを利用する事にした。
そうでも無いと俺が来た時点で何事?!と騒ぎに成るのは目に見えてる。
まぁ……どんなタイミングでもYouMaが現れた時点で騒がれるってツッコミは無しの方向で。
「そっちは、任せた。陽依里ちゃんを安心させてやってくれ。」
「分かってる。悠馬も気を付けて。」
「私達が現れただけで陽依里さんの話に信憑性が生まれますからね。」
「てか、私もだけど皆も学校を休む事に一切躊躇わなかったのが…!」
「当然です!悠馬の力に成れるんだから最優先ですっ。」
「そういう事ですね。では、そろそろ行きましょう。」
「あぁ、また後で。」
俺と玖美子さんは校長室へ、愛央達と夏凜さんは教室へ、夏凜さんが俺の恋人達を連れて現れたらそれだけで陽依里ちゃんが俺と仲が良いと言う話に信憑性か出る、恋人達と仲が良いならYouMaとも当然会ってるのだから……
さて……こっちは戦闘モードで行きますか……場合に寄っては……ね……?
…………………………………………………………
SIDE 玖美子
「と言う訳なんですが、娘の、陽依里の現状を把握してますか?そしてどの様に対処するおつもりですか?」
校長室…真っ先に悠馬さんがノックして遠慮なく扉を開いて中に入って行った、私はそれを慌てて追いかけて、中に居た校長先生に声を掛け時間を取って貰った後、悠馬さんの一声で教頭先生も呼び出され一緒に話す事になった。
流石に、自分の娘の事を任せる訳にも行かず、先ずは私が率先して話しているんだけど…隣の悠馬さんの…雰囲気が…
「我が校の生徒が…その様な…ですが…それは当人達と担任教師が先ずは話し合うべきで合って…」
ぞわぁ!!!……悠馬さんからの雰囲気が一気に重くなった…背筋に冷たい汗が流れる…それは前に居る校長と教頭も同じらしくしどろもどろになって居る。
「成る程…では、それが学校としての公式回答で構いませんね?」
「えっと…それは…その…」
「何もしない。当人同士で解決しろ。自分達には無関係。負ける方、イジメられる方が悪い。これが学校の公式回答ですね?」
「そ、そそ、そそそ…その様な事はっ。」
いや、そう言う事ですよね?関わりたくないと言ってるのと同じでしたし?
「しっかりと、情報を集め…「あぁ、そうそう…」……はぃ…?」
「ご存じかは分かりませんが、自分は少し前にとある雑誌にモデルとして載った事があるんですよ。」
あぁ…その旅行雑誌での天音さんのお店の……
「勿論!存じ上げて居ます!」
「そうですか。ありがとうございます。それで何ですけど、その時の記者さんとも懇意にさせて戴いておりまして、その方のお知り合いには、報道の方も、新聞記者の方もいらっしゃる様なんですよね。」
「そ、それは…脅迫ですか…?」
うん、その言い方は脅迫になるよ?
「脅迫?まさかぁ…まぁでも、今回は実は自分も危ない橋を渡っておりましてね?こんな情報もあるんですよ。あぁ、勿論ですけど委員会には既に通達済みです。この意味、分かりますよね?」
そう言ってテーブルの上に書類を放り投げる悠馬さん。
それを、校長も教頭も手に取って中身を見て…真っ青になる。
「それを見て貰って分かると思うんですけど、もしもそれが大っぴらになったら学校もかなーり不味く無いですか?」
カタカタと震えながら書類と悠馬さんを交互に見てる。
「なので…貴女達が取れる選択肢はそう多くは無いのでは?」
「何を見せたの…?」
こそっと悠馬さんにだけ聞こえる様に呟いた私に「後で見せますよ。」とだけ返答して更に校長と教頭を追い詰めにかかりながら、何故かテーブルにある複数の知恵の輪を手に取る悠馬さん。
「一つ目…さっき言ってた通り我関せずで、流れに全てを任せる方法。」
カランと…音を立てながらサッと解いた知恵の輪の一つ目をテーブルに置く。
「二つ目…担任を切り捨てて何も知らなかった事にする。まぁ…これもお勧めは出来ませんがね。」
カラン…二つ目の知恵の輪を解いてテーブルに並べる悠馬さん。
「三つ目…俺達に協力して此方側に付く事。その場合は、一切の反論は認めませんけどね。」
カラン…最後の一つを解いて同じ様にテーブルに並べる。
「さぁ…どれを選びます?個人的なお勧めは三つ目ですかねぇ…悪くはならないし、悪い様にもしませんよ…?」
この子は……何て恐ろしいんだろう……私は最初の出会いで感じた以上の恐怖を感じる……でも、それ以上に……陽依里の為にここまで怒ってくれるのを嬉しく…そして頼もしく思う。
「全て…協力させて戴きます…どうか、何卒……」
折れた…学校のトップ二人が高校生の男の子に折れて負けた。
「そうですか。ではその様に…貴女達にはこれから動いて貰いますが、こちらの言う事以上の事はしなくて良いので、よしなに。これで、平穏な老後を迎えられそうで良かったですね。」
ガクリと項垂れながら…悠馬さんに頭を下げる二人を見ながら、本当に悠馬さんが味方で良かったと心の底から私は思った。
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SIDE 夏凜
悠馬さんと母と別れた後、私達は揃って、陽依里の教室の扉の前に立った。
もう授業は始まって居て、ここから入るのは少し躊躇われる。
「失礼します。遅くなって申し訳ありません。」
ちょ?!星川さん!?躊躇いも遠慮も無いの?!
「失礼いたします。」
「遅くなりました。申し訳ありません。」
天音さん?!伊集院さん?!何でそんな簡単に?!
「あの…申し訳無いのですが…どちらのご親族でしょうか…?」
「あぁ…私達は、付き添いになります。えっと…夏凜さん?」
「はい!すいません、雪村です。」
「あぁ…どうぞ。」
ガヤガヤと教室が騒がしくなる、「ねぇ…あの人達ってさ?」、「3女神…?」、「うわぁぁ…綺麗…憧れるなぁ…」、「先生さぁ……これってもしかして…」とあっちこっちで聞こえて来る。
「はぁぁ…小学生にも3女神なんて言われてるんだ……」
星川さんが溜息と共に呟くのを天音さんも伊集院さんも諦めたかの様に一緒に頷いて居る。
そして……この事を何も知らなかった陽依里は…ポカーンと私達を見詰めている。
「あ、陽依里ちゃん~っ。」、「頑張ってくださいっ。」、「やっほっ!やっほっ!」と、3人共、陽依里に声をかけてるのを周りのクラスメイトもポカンとした顔で見詰めていた。
そして………「あり得ない…絶対にあり得ない…」、「3女神が居るって事は…そんな…」、「嘘だ…嘘だ…嘘だ…」と顔を青くしながら呟いてるのも居る…そう、あいつ等って訳ね。
「ふーん…アレ等ね。」、「腐った顔してますね。」、「まぁまぁ、今はまだ…ね?」と星川さん達も目星を付けた様だった。
「はいはい!授業を再開します。雪村さん?達も後ろの方で見学して居てください。」
そう言った担任は授業を再開していく、私達も取り敢えずは静かにしながら教室の後ろへと行き、他のお母様方に交じり陽依里の頑張りを見学していた。
「では、次の問題を……」
担任が生徒を指名して黒板の問題を解かせている…それを私達は見て居るけど周りも少し慣れたのか、星川さん達に話しかけたりしている。
「あの…YouMaさんの恋人の方達ですよね?今日はもしかして…?」、「えっと…雪村さんとは?噂通り懇意に?」、「雪村さん?玖美子さんは?YouMaさんも一緒に来てらっしゃるのですか?」等々……3人は基本的には無視してるけど……
「夏凜さん、もしかしてあの事で?家の子から少し聞いて居るのですけど…陽依里ちゃん関係ですか?」
陽依里の友達のお母さんが私に話しかけてくる。
「まぁ…色々とありまして…それと、母は少し後で来ます。先に寄る所がありますので……」
言葉を濁して伝えるけど、それだけである程度察したらしく……
「これは、楽しくなりそうねぇ……」
私達のやり取りを聞いて居た周りのお母様達、「もしかしてかなり不味い事に…?」、「娘の言って居た話がまさかYouMaさんの耳に…?」、「恋人さん達がここに居るのが全ての答えでしょ?」
流石に気付かれるよね……と言うか悠馬さんはこの後どうするんでしょう?
教室がザワザワと騒がしくなる、担任も静かにさせようと声を出して居るけど、余り効果は無い。
ガラガラ…と教室の扉が開く、そこには当然…母の玖美子と悠馬さんが…特に周りの空気を気にする事も無く教室に入ってきた。
…………………………………………………………
SIDE 陽依里
悠馬さん…?それにお母さんも……何で?
愛央お姉さんも、志保お姉さんも、清華お姉さんも来てくれて、お姉ちゃんだけでも来てくれら嬉しいって思ってたのに……
「頑張れっ。陽依里ちゃんっ。」
「っ////」
笑顔で私に応援を小声だけど飛ばしてくれて私は喜びや羞恥で真っ赤になって俯いてしまう。
「わぁわぁわぁっ///YouMa様だっ。本物だっ。陽依里っ!陽依里っ!本物のYouMa様だよっ!」
分かってるから!本物の悠馬さんだってのは分かってるからっ!来てくれた…でも何で?もしかしてお姉さん達?
「お騒がせして申し訳ありません。こちらはお気になさらずに授業を進めてください。」
そう言って頭を下げて悠馬さんは、愛央お姉さん達の所に行った、お姉さん達は悠馬さんを真ん中にして周りを固めて立ってる。
と言うか……お母さん組の目がハートになってるし…はぁ…悠馬さんはそんな事は気にしない様子でぐるりと教室内を見回した。
でも…愛央お姉さんがコソコソと悠馬さんに耳打ちした後に教室内の一点を見たと思ったら、一瞬だけ、物凄く冷たい目をしたのを私は見逃さなかった。
これは、確実に何かあるし、このまま平和に何事も無くこの授業参観は絶対に終わらない……私はそう確信した。
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