第8話 悠馬は握力でコップも割れます
ピキピキ…パキ……バリンッ!!!
俺の手の中でコップが砕け散る。
ぽた…ぽた…ぽた…と、掌から血が滴り落ちる。
「悠馬?!ちょ!?ちょ?!」
「ゆ、悠馬さん!?手、手を見せてください!直ぐに治療しないと!!」
「欠片は?!刺さってるのはある?!」
「もう一度、言って貰えるか?」
俺は手から滴る血も慌てる愛央達も気にせず俺に、俺達に話を持ってきた奴を睨む。
「は、はぃ……陽依里ちゃんを助けて欲しいんです。今の現状を変える為にYouMa様の力を貸してください。あの子を……助ける為には私の…私達の力じゃ無理だから…お願いします!!」
そう……嘗て愛央をイジメていた奴等が揃って俺達の前に現れ、ステイルで土下座をし始めたのだ、店内でそんな事されても迷惑以外の何でも無いから、話を聞いたのだが……その内容が……まさか…俺のせいで、陽依里ちゃんが大変な事になってるって内容だった。
しかも…限度も超えている!!
だから、話を聞いて行く内に俺の手には自然と力が入り…そのままグラスを握り潰した。
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「おし……!行かないと!」
陽依里ちゃんと心配して早退して来たお友達から話を聞き終えた私は、あんまりな状況に完全に頭に血が登った。
そんなだから、陽依里ちゃんをイジメている奴等を処分しようと思って、仲間に連絡を取り話をしたら、気持ちは分かるし、殺したいのも分かるけど、ソレは駄目だと仲間二人に止められて…何とか踏み止まった。
そして、三人で話し合い出た答えは…自分達じゃ校外であれば兎も角、校内では何も出来ないって答えは変わらなかった…!その代わりでは無いし、本当なら会える余地も顔も資格も無いけど……今回は…!今回だけは!!YouMa様を頼る事にした。あの人なら、私達に出来ない解決方法も思い付くと思ったから……
「ステイルか…初めて来たけど…こんなタイミングになるなんてね……」
天音の実家、星川も伊集院さん?もYouMa様も、他の友人やファンの人達も良く来店するお店。
今じゃ、この街で大人気の喫茶店だ。
「そうだね…来れなかったし、来る資格も無いからね、私達…」
「少なくても天音は居ると思うし、お願いしてみるだけお願いしないとね。」
うん、仮にYouMa様が居なくても天音は居るだろうしお願いを届けて貰うだけでもしないと。
私達は顔を見合わせて頷いた後、チリンチリンと涼やかな音を鳴らして扉を開き、落ち着くBGMが流れる店内に足を踏み入れた。
…………………………………………………………
「いらっしゃい……ませ……」
直ぐに天音が気付いて声を掛けてくるけど、私達を認識するのと同時に険しい顔に変わる。
「あ……天音、その…良いかな?話したい事があってさ。」
「ふぅ…取り敢えずいらっしゃいませ。お席にどうぞ。」
うぅぅ…分かっては居るけど塩対応だ……
「ご注文が決まりましたら声をお掛けください。それでは…」
「ま、待って!お願い!今日来たのはちゃんと理由があるんだ!!」
「どの
「それは!分かってる!でもお願い!話を聞いて欲しいんだ!」
「貴女達と話す事なん…「志保、落ち着け。」…悠馬さん……」
「私なら大丈夫だから、落ち着いて志保さん。」
良かった!YouMa様も居てくれた!恋人の三人が揃ってる!!
「YouMa様!お願いがあります!私達に力を貸してください!!」
「こんなお願いをする立場では無い事は分かってます!それでも私達じゃどうしようも無くて!!」
「ここに来る資格も無い事も分かっています!でも!!今回は!今回だけは!どうか!!」
私達は自然と席から立ち上がり床に土下座して声を張り上げた。
私達程度の土下座に何の価値も無いのは分かってるし踏んだり蹴ったりされても仕方ないけど陽依里ちゃんの為なら!!
「お前ら……はぁぁ…良いから立ち上がれ。店内でそんな事される方が迷惑だ。自分達の立場を分かって居ても俺に聞いて欲しい事があるんだな?」
「「「はい!!!」」」
「分かった。良いよ、話くらいは聞いてやる。」
「あぁ…ありが…「だが…くだらない内容なら分かってるだろうな…?」……はいっ。」
凄い雰囲気……あの夏の日のヤンキー達なんて大した事無いんだって位…目の前に居るだけで身体が震えてる。
「奥の方借りるぞ?志保。」
「はい…私もご一緒します。」
「私も!悠馬くんと志保だけにしておけないよ。」
「私も…心配してくれてるのは分かるけど、私だって悠馬の恋人なんだから、悠馬を頼ってるのを見過ごせないよ。」
「分かった…ほら!奥の方行くぞ。着いて来い。」
立ち上がった私達はYoMa様達の後ろを着いていく…ここから…ここから何としても助けを取り付けないと……決意はしていたけどまさか…この話でYouMa様があんなに怒りを顕わにするなんて……
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「確認するぞ?最初にその女の子を助けたのは公園で、突き飛ばされて怪我をさせられて居たから見て居られず止めに入った。」
「そうです…その時にくそ生意気な奴が…」
話を進めるとYouMa様の雰囲気がどんどんピリピリしていく。
「それで治療した後に、少し話して別れた。それで、今日…」
「朝に見掛けて、学校の筈なのにそんな所に居たので気になって…それで……」
声をかけて話を聞いたら教室の机の上に花瓶が置いてあった事…担任も唯の冗談だと一切、相手にしなかったと伝えた。
「名前…その子の名前は…?」
YouMa様の持つコップがピキピキと音が出てない…?
「えっと…陽依里…雪村陽依里ちゃん…です……」
そう伝えた瞬間…YouMa様の持つコップが、バリンッ!と音を立てて割れた…こわぁ……握力だけで……?
「そうか……どうやらそいつ等は死にたいらしいなぁ……」
天音が直ぐに悠馬さんの手のひらの治療を始めるけど……
「少し外すぞ。志保、後で良い。」
そう言ってYouMa様は席を立って手のひらを洗い流しながらスマホで何処かに連絡を取る。
「えっと…YouMa様は陽依里ちゃんの事を知ってるの…?」
「知ってるよ。前に車に轢かれそうになってた陽依里ちゃんを助けた事あってその関係で雪村家のパーティーに呼ばれた事あるの。それ以来、偶に会ったりお茶したりしてるみたい。お姉さんも込みでね。」
パーティー……住む世界が違いすぎる……でも、そう言うの憧れるなぁ……
「色々な芸能人とか企業の社長とか沢山の著名人が居たらしいです。それにしても…そうですか…あの子が……」
「許せないし、限度も越えてる。これだから勘違いした子供はっ!!!」
天音も伊集院さんも本当に嫌そうな顔をして呪詛でも吐くかの様に呟いてる。
「ありがとね。」
星川が私達に向かってお礼を言って来て、驚いた顔をして私達は星川を見詰めた。
「陽依里ちゃんの事、教えてくれて。最悪になる前に何とかなるよ。だからありがとう。」
「えっと…その…」
「そうですね。元クラスメイトから少しは聞いて居ましたが、謝罪の他に愛央さんに言われた様に人助けをしていたのですね。」
「それは…その…こんな事が贖罪になるとは思ってないけど……それでも少しだけでも……」
「私達がして来た事は、許されない事だからさ…とは言え、こんな事で許されるなんて思ってない。でもさ……」
「私達みたいなのでも目の前の人に手を差し伸べる事は出来るからって思って……」
私達の間に静かな時間が過ぎて行く……離れた所ではYouMa様が、何かを誰かと話してる。
「うん。そうだね、私も絶対に許さない。それはこれからも変わらないけど、その事に捕らわれたりはしない。私も目の前の人に手を差し伸べる事は出来るから、それは間違えて無いよ。」
「そうだな。お前達に出来る事は……いや、俺もだけど誰だって目の前の誰かに手を差し伸べるだけで精一杯だ。だから、忘れるな。それすらもしなくなったら、そいつには何の価値も無いと俺は思う。」
「悠馬くん、どうなったの?」
「あぁ……やる事は決まった。愛央、志保、清華、付き合って貰えるか?」
「ふふっ。当たり前ですよ?悠馬さん一人に戦わせるなんてしません。先ずは……治療からですけどね……」
「そだねぇ~……それにそんな事したらどんな事になるか分かったもんじゃ無いしっ。」
「もうっ。愛央もそんな言い方しなくても……悠馬くんも黙って付いて来い!でも良いんだよ?」
「そんな事、言う訳無いだろ。今回は3人にも力を借りたいんだ。」
任せなさい!と3人は嬉しそうに、楽しそうに、YouMa様と話してるけど……その光景はとても幸せそうで、3人もYouMa様もお互いにお互いを信じて、頼ってるのが良く分かる関係性だ。
本当に……羨ましい……私達も星川をイジメたりして無ければ……いや、こんな生き方じゃ無ければあの中に入れていたのかな……そう考えたら、凄く悲しくて悔しいと感じた。
「知らせてくれてありがとうな。後は俺が片付ける。任せてくれ。」
「陽依里ちゃんの事……宜しくお願いします。」
私達は揃ってYouMa様に頭を下げる。
自信に満ち溢れたYouMa様の姿を見ると、もう大丈夫だと、何故か思う事が出来たのだった。
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握力は50kgを超えていると物にも依りますがグラスの耐久限界を超える圧力を加える事が出来ます。
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