第7話 陽依里と……

「チョーシに乗ってんな!!」


ドンッ!と突き飛ばされて私は転んでしまう。


「痛っ!」


公園で絡まれて、突き飛ばされた私は尻もちをついてしまい手の平からザシュと音が鳴る。


「ダッサッ!こんなんで倒れるとかっ!」


「コレに懲りたらYouMa様と仲が良い何て嘘つくの止めろ!」


「う、嘘じゃ無い……」


睨まれながら見下されてるけど私は嘘は言ってない…悠馬さんとは仲良くさせてもらってるもんっ!


「私ですら会えた事無いのにあんたが会って仲良いとかあり得ないし!!」


確かに家よりも会社としては上かも知れないしお金もあると思うけど、それでも悠馬さんには会えて無いらしい。


「そんな事、私に言われても…」


「ハァァァァ?!この私が!!会えて無いのに!!!アンタが会える訳も仲良く成れる訳も無いって言ってんの!!!!」


だから、それは私には関係ない……そっちの親の問題でしょ?多分、後は業種とか……


「雪村程度に不可能な事を当然の様に言うなっ!!!」


「はぁぁ…信じないならお好きにどうぞ。私はどうでも良いので。」


「このっ!その態度がチョーシに乗ってんのよ!!」


ぶんっ…と手を振り上げて叩こうとしているのが見えて、目を閉じて痛みに耐えようとする。

だけど……衝撃は来なくて、寧ろ逆に「ギャンっ!」と犬が蹴られたりした時みたいな声を出して彼女は、殴られたのか頬を赤くさせながら…「はなせえぇぇぇ!」と暴れてる。


「大丈夫だった?間に合ったと思うけど……」


目を開けると、私の隣に一人、彼女の腕を掴んでる人が一人、逃げない様に、睨み付けながら撮影してる人が一人居た。

見た目はギャルって感じで凄くイカツイ感じ…あれ?この人達何処かで……


…………………………………………………………

「離せよ!負け犬のくそ底辺!!お前ら!!私にこんな事して唯で済むと思ってる訳!!」


「好きにしな。アンタが何をしていたのか、何をしようとしていたのか全部撮影してるしナニかしてくるなら遠慮無くばら撒くだけだし?」


「底辺のゴミ共が!負け惜しみいってんじゃねぇ!殺すぞ!!!」


「ふ〜ん…それなら先に殺そう。殺そうとするんだから殺される覚悟もあるんだよなぁ?クソガキ!」


もう遠慮無く睨み付けながら近づいていく私の隣に居たお姉さん。


「そうだな。ナニを勘違いしてるか知らないけど調子に乗り過ぎだなこのガキ。」


「痛い目程度じゃ理解出来ないだろうし死ななきゃ治らないってやつじゃん?」


「ひぃっ…!わ、私に手を出したら!ママが黙って無いんだから!あんた達みたいな最底辺なんて簡単に処分出来るんだからね!く、くるなぁ!」


「それが?アンタを殺せばこの子はこれから安心して過ごせるし別に良いじゃん?」


「後さぁ〜、死体も見つからなきゃ分かんないよね?まぁ…バラすのは面倒だから山にでも捨ててくるけど手足折って、出血させておけば肉食の子達が生きたまま食べてくれるしね。」


猿轡さるぐつわしてれば声も響かないしな。変死体見つかるって程度で済むでしょ。」


す、凄い事言ってる……助けてもらえた?んだろうけど言ってる事が怖すぎる……


「や、やめ…近づかない…や、ヤダぁ……」


ジワァと股間が濡れていくのが見える。

余りの恐怖に失禁したまま倒れ込んだ……え…?気絶したの?失禁して??


「ハッ!ダサすぎ…萎えた。」


「ほんとな。ほら!こんなの放っておいてさっさと行くよ!」


「え?え?あ、あの?」


私の怪我をして居ない方の手を引いて混乱している私を引っ張っていきました。


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「いたぃ…うぅぅ…」


「ごめんけど、我慢して。擦り傷だけみたいだけど傷口に土とか石とか入ったままになると綺麗に治らないから洗い流さないとだし。」


「はぃぃ…ありがとうございます…」


「別に…偶々通りかかっただけだし…」


えっと…怖い人?って思ってたけど、何か可愛い?照れてる…?


「あの、私、雪村陽依里って言います。助けてくれてありがとうございました。」


「雪村ちゃんね。雪村って…確か…詩音の?」


「はい。悠馬さんが動いた事で詩音さんは会社の芸能事業部に所属しました。」


「やっぱり…私達の事は気にしないで…ちょっとあって悠馬さんの関係者に自己紹介は…その…」


何かあるのかな…?まさか敵対してたとか…?


「えっと…良く分かりませんけど、助けて貰えたのは事実なので私は感謝してます。ありがとうございました!」


「えっと、はぁ…うん。」


「兎に角、早く帰って病院にいきなー。怪我してるんだし。」


「そだね。あぁ、はいこれ!何かあったら直ぐに連絡してね。こんな私等でも少し位は力になれるだろうしさっ。」


そう言って私を助けてくれた3人は帰って行った。

不思議な人達だったし、見た目は怖いけど優しい人達だった。


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「あの子、大丈夫かな?」


「さぁ?まぁ、あれでは終わらないだろうね。」


「何かさ…改めて思うんだけど、私等ってマジで星川に酷い事してたんだって思った。」


うん、私等が顔を突っ込んだのはあのイジメをやってたのが昔の自分達に重なったから。


「本当に最低だよね、私達……」


「うん……昔のクラスメイトももう一度行ったら話だけは聞いてくれたけど、それもこれも全部…」


星川とYouMa様のお陰だった、あの二人に言われたから話だけは聞いてやるって最初に言われて、それで何とか謝罪だけは出来た。


「許されたとは思ってないけど、少し胸のつかえが取れたのも事実だよね。」


「後、一度…後一度だけでも良いから星川に会ってちゃんと謝りたいなぁ……」


それは私達3人の共通の考えだった、例え唯の自己満足だったとしても……


「星川にぶん殴られた方がまだマシだったかもね…あの時…」


あの夏の日、あのままだったら多分死んでたか、良くても大怪我だったのに、星川が庇ってくれて、更に悠馬さんまで現れて、私達は救われた。


「何にしても、あの子の事は次に見掛けたら助けるなり声を掛けるなりしないとね。助けられるなら助けたい。」


それが…それだけが、ずっと人を傷つけて来た私達に出来る唯一の償いだと思うから。


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あの後、帰宅して直ぐに、お母さんとお姉ちゃんが私を病院に連れて行ってくれた。

手の平を怪我しただけだから大袈裟だって思うけど、そこまで心配してくれるのは嬉しかった。


「それにしても、そいつら許さない!ぶち殺してやる!」


「落ち着きなさい。気持ちは同じだけど、それじゃこちらが悪い事になるでしょう?」


「悔しくないの!!!陽依里をイジメてる奴等がのさばってるのも!怪我させてもヘラヘラしてるんだよ?!殺すのが駄目なら刑事告訴する!!!」


それは流石に可哀想……


「それでも良いけど、下手をしたらあっちの会社で働いて居る人達が路頭に迷うでしょ……」


あれでも、お母さんもあいつらが~…ってのは気にしてないね。


「もう良いよ。助けて貰えたし、そのお姉さん達の連絡先も貰ってるし、何かあったら直ぐに連絡してって言われてるから……」


「今度、お礼しないとね。何が良いかしらねぇ……」


家に帰りながら車内でそんな話をして居たけどお姉ちゃんはずっと怒りっぱなしだった。


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週明けの無言の教室内にクスクスと笑い声が響いてる。

私をイジメてる奴等が、私の机に彫刻刀で落書きして、更に花瓶まで……


こんな事までして唯で済むと思ってるのだろうか……


「陽依里……大丈夫…な、訳無いよね…ごめんね?登校したらもうこんなでさ……」


「良いよ。はぁ…どうしようコレ…こんな机じゃ使い物にならないじゃん……」


「酷すぎ……てか、こんなの唯で済む訳無いじゃん。」


キャハハハハハッ!と馬鹿笑いとニヤニヤとした顔で私を見てるけど、何でそんなに余裕で居られるんだろう?

私はバレない様に、動画で机の状態と見て嗤ってる奴等を撮影しておく。

登校前にお姉ちゃんに隠しカメラを渡されてたけど直ぐに役に立つなんて……


「はいはいー!席に着きなさい!」


担任が教室に入って来る。


「雪村さん、何ですかそれは?ふざけてないで早く片付けなさい。」


ポカーンと、教室内の生徒が担任を見てる…何を言ってるんだこの人は?


「先生!本気で言ってるんですか?!」


「本気も何も唯の悪ふざけでしょう?そんな事で騒がないの!」


狂ってるこの人…こんなのが担任とか…駄目だこいつ…とクラスメイトが口々に零す。

でも、それは一切無視して出欠を取ってそのまま……


「1時間目が始まる前に片付けなさいね。それと、倉庫から新しい机と椅子を持ってくる様に。」


たったそれだけ言って出て行った……


「ギャハハハハハハハハハハハハハ!!!ざんねんーーー!教師も私達の味方ですぅ!YouMa様と仲が良いとか嘘つく嘘つき何て知らないそうですー!」


信じられない……もう良いや、今日は帰ろう……


「ごめん、私帰るね。こんなんじゃ勉強何て出来ないし、流石に無理……」


「ひ、陽依里?!ま、待って!私も帰る!一人で帰る何て危なすぎるって!!!あいつらが殺し屋雇っててもおかしく無いもん!」


そんな事する訳ねぇだろう!!って何か叫んでるけど、私は気にせずに鞄を持って教室から出る。

友達もそんな私を追いかけて教室から出てくれて、私達は一緒に帰る事になった。


後で聞いたけど私の机は他の友達が交換してくれて綺麗なやつに変わったらしい。


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「はぁ……何でこんな事になったんだろう……」


「あいつらマジで許せない……確かに会社は大きいかも知れないけど、それはあいつの力じゃ無いじゃん!それなのに!担任まで買収されてさ!!!!マジであり得ないんだけど!!!」


「ごめんね、付き合って貰って…もう明日から関わらない方が良いよ。同じ目に合うかもだしさ。」


「おバカ!仮にそんな事になったとしても、私は陽依里を見捨てたりしない!他のクラスメイトだって陽依里が正しい事も分かってるんだから!あいつ等よりも親の会社が小さいから強めに出れないだけでほんとはさ……」


それは私も分かってる、雪村位じゃ無いと対抗出来ないのもね……雪村とあいつらよりも上だとしたらそれは……


「ねぇ…YouMa様にお願い出来ないの?」


「駄目だよ……話したじゃん?最初に凄い迷惑かけてるのにこんな事で更に迷惑なんてかけられないよ……」


「でも、このままじゃさ……私ヤダよ……陽依里に万が一があったりしたらさ……」


私だって、頼れるなら頼りたいけど……


「あれ?雪村ちゃんじゃん。こんな時間にどうしたの?学校は?」


「あっ!この間のお姉さん……」


「てか、怪我の方は大丈夫?」


「ぁ…はい…そっちは特には…」


「知り合い…?その、何か怖い人…なんだけど…」


あぁ…うん、見た目はギャルで厳ついからね……


「この間さ、あいつ等から私を助けてくれた一人だよ。怖い見た目かも知れないけど手当までしてくれて優しいお姉さんだよ。」


「べ、別に優しくなんか……ってそれは良いの!それよりどうしたの?」


「そ、それが……」


私はお姉さんに何があったのかを全部話す事になる。

最初は言わない様にしてたんだけど、怖い顔で詰め寄って来るから……つい……


心配してくれてるのは分かるけど……その……やっぱり少し怖いです……と心の中で私は思うのだった。


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