第6話 愛央の親戚2

ピンポーン…と鳴った音に反応した中の人が、「はーいっ!」と声を出しながら玄関に向けて来る足音が聞こえて来る。


「いらっしゃい!愛央!柚希!」


「1年振りだねー。夢衣むい。」


去年の法事で訪れた親戚の家に私は訪れてる。

そう……だ。私とお姉ちゃんだけじゃ無い。


「初めまして、今回はお世話になります。」


「…?!ぇ…?!えぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ?!」


「いきなり来てすいません。驚きましたよね?」


「YouMa様ぁ…?」


「はいっ。宜しくお願いしますね。」


あれ?反応が消えた?会いたい!会いたい!って言ってたのに…


「お~い?夢衣~?」


お姉ちゃんが目の前で手をふりふりと…はてな?


「なぁ…大丈夫か?気絶とかしてない?」


まさかぁ…ツンツンとお姉ちゃんが胸を押してるけど…そのまま…倒れた?!


「夢衣姉?!」


「ちょっと?!行き成り気絶しないでよ!!!」


「幸先が思いやられる…はぁ…」


うん、ごめんね?悠馬…でもね?流石にこれは私も予想外なんだ…


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「そ、そそ、そそそ、粗茶!!!ですがっ!!!!」


「ありがとうございます。そんなに緊張しないでください。」


「は、はは、ははは、はいぃぃぃ!」


駄目だこりゃ…まぁその内慣れるだろう…多分。


「はぁ…この子は…ごめんなさいね、悠馬くん。」


「いえいえっ!いきなり来た自分が悪いので。」


「そう言って貰えると助かるわ。それにしても何で急に?」


「昨年、愛央から話は聞いていまして、やっと色々と落ち着いたのでの事もありますからご親族に挨拶を…と思いまして。」


「今年は法事じゃ無いけどお墓参りついでに会ってくるって私が言ったら悠馬も行っても良いか?って言われたから来て貰ったのっ。」


「その内、親戚になるからね。今の内に慣れてもらおうと思ってねー。」


「慣れないでしょ……この子程じゃ無いけど私だって緊張してるもの……」


「いやいや!そんな緊張とかしないで貰えると!確かに有名人にはなってますけど別に芸能人とかでは無いので…!」


「分かっては居るんですけどぉぉぉ…それは流石にぃ〜む、むむ、無理で…でで…すぅぅ!」


「はぁぁぁぁ…取り敢えず夢衣姉の事は良いや。一息付いたらお墓参り行く?」


「そうだな。元々、それが目的だし一旦、一息入れた方が良さそうだし、これからの事は戻ってからって事で良いんじゃないかな?」


「私が!車!出しますぅぅ!!」


「駄目だっての!今の夢衣に運転何てさせたらどんな事になるか分かったもんじゃないし!」


うん、俺もちょっと怖い……


「うっ……せめて着いて行かせてくださいぃぃぃぃ……」


「あ、あはは…、まぁ、それくらいなら?」


「はぁぁ…不安しか無い…」


愛央の頭を撫で撫でしながら俺達は外に出る準備を始めた。


…………………………………………………………

SIDE 無衣


いきなり過ぎるんだよぉ〜……確かに会いたいとは言ってたよ?

去年の今はまだYouMa様の恋人が愛央だなんて思ってなかったし知らなかったし予想もして無かった。

てか、去年の時点で思いっきり誤魔化してたじゃん…仕方ないってのは分かってるけどさぁ…あの時点じゃ愛央だけだったし色々と秘密にしないと行けないのは分かるけど、教えてくれても良かったじゃんー。

あっ!車の中の空気は天国でした!車の買い替えしてもシートは今のにしたい!てかする!YouMa様のお座りになったシートだし!!!


「それで?実際に会ってみてどう?」


柚希が私にお墓までの道を歩きながら聞いてくる。


「画面越しに見るよりも素敵な人だし格好良いと思う。それにほら…あれ。」


愛央が歩きやすいように支えながら歩いてる。

特に急な斜面とかでは無いし集合墓地だからそれなりに整備もされてるけど傾斜が無い訳では無い。


「傾斜の度に愛央の事を支えてるしずっと手を繋いでるし、しかも親族の私達が居るからと無理してるとかの感じも無いのが凄い。」


そう、良い顔したくてやってるのでは無いのが分かるのだ。


「うん、アレが悠馬くんの自然だから、特に意識してやってないんだよね。」


「それが凄い。掲示板で誰かが言ってたけどYouMa様の前では誰もがお姫様に成れるってのが分かる気がする。」


「あぁ〜……何か書かれてた事あったね。悠馬くんは女性にとって何時でも王子様だって。」


「だからこそ3人の恋人さん達は世界一の幸せ者だってさ。」


二人目の子の時の戦いもそう…攫われたお姫様を助ける為に乗り込んで傷だらけになりながらも戦い抜いて…見事救い出した。

三人目の時も人聞きではあるけど女の園に乗り込んで見事にピンチを切り抜けさせたと聞いた。

そして……愛央の事…あの夏の日、愛央の因縁が襲い掛かって来たけど愛央は確りと決着を付けていた。

アレは、愛央の努力の賜物って見方が殆どではあるけど、私達からすれば違う…YouMa様の恋人になって強くなった事で愛央は自分で乗り越えたのだ。

もしも、YouMa様と知り合っても居なくて、恋人にもなって居なければあの結果は絶対にあり得ないと断言できる。

だからこそ、私達からすればYouMa様は守られるだけのお姫様達を側に置かない、一緒に成長する事が出来る人だけを側に置いて居るって分かるのだ。


「立派なお墓ですね。」


何時の間にか星川家のお墓に着いてたみたい…考え事をして居たから気付かなかった。


「疲れてませんか?結構歩いたし…」


「これくらい何でも無いですよ。愛央を筆頭に引っ張り回されてますからねー毎日。」


「ちょっと!引っ張り回すって何さぁ!悠馬だって引っ搔き回してるじゃんっ!」


「知らない話ですねぇ~…さって、掃除掃除っ!」


「ちょっ!こらぁ!まてぇー!」


愛央とYouMa様がじゃれ合いながら水を汲む場所に桶を持って走って行く。


「ぷっ…楽しそうで良いなぁ…怒ったふりしてるだけで笑顔じゃん、愛央。」


「仲が良いのは良い事よ。こっちも始めよ。」


柚希の言葉に私も母もお墓回りの掃除を開始する。

祖母も病気で早くに亡くなってしまった叔母も…可愛がっていた愛央の楽しそうな幸せそうな姿を満足気にきっと見てると思う……そう思うと、YouMa様が来てくれて良かったと思った。


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その後、お墓参りを終わらせて私達は帰宅した。

帰りの車の中じゃ、愛央はYouMa様に寄りかかって寝てるし、YouMa様も特に気にした様子も無く受け止めて偶に頭を撫でたりしていた。


「それにしても、愛央の甘えっぷり……」


「うっ…そこは気にしないでよ……色々な事が合って……」


「うん、丁度良いのでここに来た本来の目的を話しますね。」


YouMa様が姿勢を正し私達に向き合う、その空気に私も母も自然と背筋が伸びた。


「愛央と柚希さんに無理を言って付いて来させて貰った理由ですが……既に知って居るとは思いますけど、この間の清蘭学園の学園祭で、俺は愛央にプロポーズをしました。」


あぁ……それは知ってる……あの後、暫くは大騒ぎだった……ショックを受ける人も居れば、応援してお幸せに!と歓迎する人とファンが一気に騒いだ……まぁ…ショックを受けながらも否定したり悪意を持ったりしてる人が居なかったのは…流石のYouMaファンって感じだったけど。


「その結果、俺と愛央…そして、志保と清華と婚約者になりました。プロポーズをする前にそれぞれのお母さんにも許可は頂いて居ます。」


「茉優も良く許可したわね…確かに配信活動で既に十分すぎる程の資産もあるし余程の事が無ければ生活に困るって事は無いのは分かるけど、まだまだ子供の戯言だと言われても仕方ないでしょうに……」


「お母さん!YouMa様にそんな言い方!!!」


「いえ…その判断は当然です。俺が幾ら有名で資産もあるとは言え未だに社会に出て居ない子供である事は変わりません。子を持つ親であれば当然の判断でしょう。」


「そうね。それなのに何で茉優は許したのかしら?茉優だけじゃ無い他の二人のお母さんも…」


お母さんの言う事は分るけど……YouMa様なら何があっても乗り越えるでしょう……


「こう言う言い方はしたく無いんですが……俺が逆月だからでしょうね。俺の母の名前は葵と言います。」


「逆月…葵…?どこかで…」


マジか……家自体が凄いんじゃん……YouMa様……


「お母さん、あれだよ……あの下着メーカーの代表取締役だよ……ですよね?YouMa様。」


「はい。俺の母は、あの下着メーカーの代表取締役です。ですので、仮にナニか合っても大丈夫だと判断したのかと……」


愛央がYouMa様の手を握る……愛央もそう言う理由があるのは分かってるんだろうけどそれをYouMa様の口から出てくるのは嫌なんだろう……私だって嫌だ。


「ごめんなさい、嫌な事を言わせてしまいました。悠馬くんは良く分かりましたね?」


「流石に自分の立ち位置位は理解していますよ。何も知らない子供でも無いんですし、実際には妹の菜月が会社を継ぐとは言え、俺自身が社長令息である事には変わりませんからね。大人からすれば安心できる後ろ盾があるか無いかは大きいでしょう?」


「悠馬くんは……はぁぁ……大人と話してる気分になってきたわ。まぁ、でもそう言う一面もあるんでしょうけどね。分かりました、茉優が悠馬くんを認めた理由も何となく分かりましたしね。」


「そう言う理由だけじゃ無いよ。」


「愛央……?」


さっきまで黙っていた愛央が私達を確りと見詰めながら言葉を紡ぐ…その目には、強い意思が込められてて……


「お母さんが悠馬を認めたのは、確かに逆月だからって事もあるのは私も今なら分かる……だけど……」


「それ以上に、お母さんは悠馬くんを気に入ったの。単純にそれだけの事だよ。悠馬くんだから、愛央の相手として認めた。そして、悠馬くんと一緒に居る愛央は成長出来るし、同じ様に悠馬くんも成長する、それは皆も分かるよね?愛央を見ればさ。」


「そうね……愛央はとても強くなったものね。」


うん……愛央は確かに強くなった……それもこれもきっと……


「悠馬の隣に立っても恥ずかしくない様に……自信を持って隣に立って居られる自分で居る為に……悠馬への愛を私はそうやって伝えるんだ。」


「何時も伝わってるよ。」


そう言って同じように愛央の隣に立って、愛央と繋いで居た手に力を少し込めたのが私にも分かった。

それが嬉しくて仕方ないのか、愛央はとても嬉しそうな顔でYouMa様を見詰めていた。


「うん。YouMaが作られた物じゃ無く本当の悠馬くんと変わらないのは良く分かりました。改めて……ようこそ!悠馬くんっ!これから、宜しくねっ。」


「はいっ!こちらこそですっ!」


その日の夕飯は、愛央の婚約を祝って盛大にご馳走でお祝いして…次の日は街を少し見て回って……YouMa様の出現で少し騒ぎになったり……それでも嫌な顔をせずに対応して、写真を撮ったりサインしたりと対応もしっかりしていた。

私達も記念写真を撮ったりしながら過ごさせて貰って、柚希と愛央、YouMa様は帰って行った。


「本当に素敵な時間だったなぁ……」


「夢衣ー!ご飯よー!早く降りてきなさいー!」


「はーいっ!」


写真立てに、皆で揃って撮った写真が飾られてる、その隣には私も一緒に撮って貰った2ショットの写真が並んでるのを眺めた後、私は次に会えるのを楽しみにしながら部屋を後にしたのだった。


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