第5話 陸と唯華4
卒業式が終わった…悠馬先輩のお話で俺達1年の男子も自然と立ち上がって、卒業生にお礼を言う何て言う突発な事も起こったけど、滞りなく式は進行して終わる事が出来た。
まぁ…でも、特に打ち合わせした訳でも無いのにあんな行動をしてしまって、自然とさせられて……
「これも悠馬先輩のカリスマって事なのかな…?」
そんな事を考えながら俺は学校の階段を上って行く、一段ずつ上る内にどんどんと心臓が早鐘を打って行く…
「はは…悠馬先輩も、健司も渚も、こんな緊張を乗り越えたのか…」
すげーな…マジですげぇ…
「でも、何もしないでこのまま無かった事になるも自然消滅するのも絶対に嫌だ…」
回りからの視線を感じながらも先輩の教室の前に辿り着く。
俺は勢いのまま中から聞こえてくる喧騒も気にせず、コンコンとノックした後に扉に手をかける…ガラガラと音を立てて、その音に反応したのか中に居た先輩達の視線が俺に集中して、少し後退り……
「すいません!双海先輩はいらっしゃいますか!」
視線を気にしても仕方ないと、これからやる事を考えたら何だと言うのかと頭をフル回転させて聞こえる様に声を張り上げた。
「り、陸くん?!ど、どうしたの?!」
席から立ち上がった先輩が軽快な足取りで扉の所に居るの俺の前まで来て驚いた顔をしながら聞いてきた。
「すいません、時間良いですか?」
「大丈夫だけど…もしかして迎えに?」
「はい。全部終わってからと思ったんですけど…打ち上げとかもあるでしょうし途中参加にならない様にと思いまして…」
「もうっ!そんな事気にしなくて良いのに…でも、ありがとっ!えっと…それで…その…」
少し顔を赤くして俺を見てくる双海先輩に見惚れながら俺は言葉を紡ぐ。
「付いてきて貰っても良いですか…?」
「は、はいっ!///喜んでっ!///」
これは何を言うかバレてるやつかな〜?期待もされてるかな…?
「えっと…皆ごめん!そういう訳でちょっと……その…//」
「「「「はいはい…いってらっしゃ~い!!!ケッ!!!!!」」」」
うわぉ…バレてーらぁ…流石にこれは俺も恥ずかしいぞ……
「そ、それじゃ!///行きましょうか?!」
「ふぁい!!///」と、真っ赤な顔で返事をしてくれた双海先輩の手を引いて俺は、恥ずかしさもあってズンズンと歩き出す。
他の教室の卒業生の人達も見に出てきて居て、ニヤニヤしながら俺達を見送ってくれてる。
その中に伊集院先輩も居て、声には出さずに頑張ってねっ!!と、口が動いたのが分かった。
…………………………………………………………
〜屋上〜
先輩の手を引いて屋上までやって来た。
俺達の他に人は居なくて柵越しに、先輩は街の景色を眺めてる。
「この景色も今日でお別れかぁ〜。無事に卒業出来たのは良いけど、やっぱり寂しいなぁ。」
憂いを帯びた顔の先輩を見ながら俺も隣に立って同じ様に景色を眺める。
一緒にこの景色を見るのは最後だと思うと確かに寂しい。
「先輩にはそんな顔は似合わないです。」
ふと、俺の口から自然とそんな言葉が溢れる。
「先輩は本当に笑顔が素敵で俺は何時もそんな先輩の…周りを元気にする笑顔に救われて居て元気を貰っていて…何度も救われました。だから…先輩には笑顔で居て欲しい。」
自然と俺の口から零れた言葉に先輩は驚いた顔をして、意味を理解したのかどんどんと顔が赤くなって……
「俺は双海先輩…いえ、唯華さんが好きです。あの映画を作った時から、何時も支えてくれて笑顔をくれた唯華さんが大好きです。」
「ぁぅ…ぁぇ///」
「卒業してしまうから同じ学校では無くなりますし同じ時間を過ごすのも減るかも知れませんけど、学祭の時の言葉に嘘はありません、それに俺じゃまだ頼りないですけど、唯華さんを支えさせてください。俺は唯華さんが好きです、俺と付き合ってください。」
…………………………………………………………
SIDE 唯華
「陸くん…っ///」
はっきりと私に気持ちを伝えてくれた陸くんは真っ直ぐに私を見詰めてくれてる。
私の事が好きだと、付き合って欲しいと間違いなく自分の想いを伝えてくれた。
堂々とした姿だけど、彼の瞳には不安が現れて居て…ハッキリと揺れているのが私には分かる。
だから、私は…
「あの日、「俺じゃ駄目ですか?先輩の側に居るのが俺じゃ駄目ですか?」って言ってくれたの、本当に嬉しかったんだ。」
静かに私の言葉を聞いてくれてる陸くんに私は言葉を紡ぐ。
「あぁ…私なんかをこんなに見てくれる人が居る、私を支えようとしてくれる人が居る、私を想ってくれる人が居るって本当に嬉しかった。」
「唯華さん…俺は本当に星川先輩にとっての悠馬先輩の立場になりたいって思ってます。」
「うんっ。伝わってるよ。だからね?だから私もそんな陸くんを見ていたんだ。」
「唯華さん…俺は…俺はっ!」
コツっと靴音を鳴らして一歩近づく…そうして私は人差し指で陸くんの唇を押さえる。
「高梨…陸さん…私は貴方が好きです。誰よりも大好きです。」
「ゆ、唯華さんっ///」
顔を赤くして驚いた顔をする陸くんを見詰めながら言葉を紡ぐ。
「私を貴方の恋人にしてくださいっ!貴方の側に居させてくださいっ。」
ぽすっと陸くんの胸元に顔を埋めながらぎゅっと抱き着きながら、自分の想いを確りと大切な、大好きな彼に伝えた。
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先輩からの答え、それは俺が望んだ答え。
これは、夢?それとも現実?今、俺の胸の中に居る彼女は本当に現実なんだろうか…?
俺の胸の中に居る誰よりも大切な人の存在を確かめる様に…抱きしめてくれて居る彼女を抱きしめ返す。
その細い身体が壊れてしまわない様に優しく…けれど、確かにそこに居るんだと分かるように…
「唯華さん…大好きです。俺は貴女が大好きです、改めて宜しくお願いします。」
「はい…私の想いは陸くんだけに、二人並んで…」
「はい、俺の想いも唯華さんだけに…って言ってられないんですよねぇ…」
法律もあるしなぁ…とは言え今は…
「ふふっ。そこは仕方ないけど…でも愛されてるのが分かればそれで良いのっ。」
「でも今は…今暫くは、唯華さんだけに…」
「うんっ。大好きだよっ。」
スッと背伸びをして、唯華さんの顔が俺に近づく…俺はそれに合わせて目を閉じる。
それと同時に、先輩の、唯華さんの唇と俺の唇が、合わさって…俺達はあの日の続きの様に優しいキスをした。
少ししてゆっくりと俺達の唇が離れる…二人共、恥ずかしそうで、でも嬉しそうで、幸せそうな顔で俺を見詰める唯華先輩。
多分、俺も似たような顔をしてると思うし…お互い様だよね。
「えへへっ///」
俺の隣に立つ唯華さんが繋いだ手に少し力を入れてぎゅって握って来る。
それに、俺もぎゅって少し力を入れて返事をする…たったそれだけ、それだけなのに、凄く幸せな気持ちになるから、不思議だ。
「そろそろ、戻りましょうか…皆さん待ってるでしょうしお母さんも…」
俺の言葉にムスっとした顔をする唯華さん。
「な、何ですか…?」
「丁寧語禁止!もう先輩と後輩じゃ無いんだから!か、かか、彼氏!でしょ!!!」
「は、はいっ!じゃない!うん、分かったっ。唯華さ…唯華っ///」
「それで良し!り、りり…陸っ!///」
ぐぉぉぉぉ!!恥ずかしいぃぃぃぃ!
「ほらっ!さっさと行くおっ!…うぅぅぅぅぅっ///」
噛んだ!!!可愛いけども!!恥ずかしそうに俺の手を引っ張って屋上から二人で出る。
俺も隣に追い付いて手を確りと繋いだまま、唯華の隣を歩く…俺達の姿を見た他の生徒達、卒業生や在校生の驚く顔と、やっぱりなぁ〜…みたいな顔、マジで?!って顔をしているのを見ながら先ずは唯華の教室に行った。
そうすると、当然の如く……こうなる訳で…
「おめでとーーー!!良かったねぇぇぇぇぇ!!」「やっとかぁぁぁ!おめでたぁぁぁぁ!!」
「この後は違う卒業式ですかねぇ?!ケッ!!」
と、まぁ…騒ぎになる訳で…
悠馬先輩もこんな感じだったのかなぁ…としみじみと思うのだった……
「違う卒業式って……っ///」
「ん?どう言う事…?分かる?唯華。」
「きゃぁぁぁぁっ!唯華だってぇ!」
うっ…ついつい…
「わ、分かるけど…それは、その…ねぇ?///」
あっ!そう言う意味か!!いやでも、いきなりは流石に…
「はいはい!皆も唯華を揶揄わないの!あんた等もさっさと行きなさい!母親も待ってるでしょ?」
「めい…うん、また後でねっ!いこっ!陸!」
「あ、うんっ!それじゃ先輩、また今度!」
ハイハイ…さっさと行きなさい!と、宮島先輩が俺と唯華を追い出した。
その後、自分の教室に行って皆からのおめでとうを貰って…自分の荷物を持った俺は唯華の手を引いて校舎の外へと歩いて行く…そこには、優しそうな素敵な笑顔の女性が待っていて……
「唯華、卒業おめでとう。それと…」
女性が俺の方を向く、唯華を大人にした様な人でこの人がきっと…
「お母さん。ありがとう、それとこの人が私の…」
唯華の言葉を遮って俺は前に出る。
「初めまして、高梨陸と言います。唯華さんとお付き合いさせて戴く事になりました。」
「あらあらっ。礼儀正しい子じゃない!良かったわねぇ?唯華。」
「う、うんっ///えっと、そのさ…」
「陸くんだったよね?これから時間ある?」
「は、はい!大丈夫です!」
「それならっ!ご飯でも食べながらお話しましょ!唯華の何処を好きになったのかとか、どう言う出会いだったのかとか聞きたい事が沢山あるんだからっ!」
ほらほらっ!行くわよ!と俺と唯華の背中を押して歩き始めるのに逆らわずに俺達は、車に乗り込んで……連れて行って貰ったお店で根掘り葉掘り聞かれて…大変だったけど、凄く楽しい時間を過ごした。
「それじゃぁ…連絡するね?」
「うん。待ってるから、今日は打ち上げを楽しんできて。また今度。」
「陸くん!今度はお家に遊びにいらっしゃいね?待ってるからね?」
「はい!近い内にお邪魔させて貰います。今日はご馳走様でした!」
先に家まで送られた俺は少し話した後に唯華とお母さんを見送って、自宅に入る。
一応…自分の親と妹でもある彩花にも報告して、根掘り葉掘り聞かれて……こっちはこっちで疲れたけど、俺はこれから始まる新しい時間と関係にワクワクしながら今までで一番って位に頑張った日を、唯華との関係が変わった日を噛み締めながら眠りについたのだった。
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