第2話 陸と唯華2

SIDE 唯華


「そう言えばさ、陸くんとはどうなってるの?」


とあるお昼の時間、私の前に座るめいがそんな事を聞いてくる。


「どうって…?」


「何処まで行ったのかな?ってさ。エッチした?」


ごふっと、食べていた物を詰まらせかけた。


「何言ってんの?!ないないっ!そんなの無いって!」


「ぇー、男の子に我慢させてないでエッチ位、許してあげなよ〜。」


「だから!付き合っても居ないのにエッチなんてしないから!私の事、そんな淫乱だと思ってたの?!」


私の叫びにめいは、ポカーンって顔で私を見詰めてくる。

その顔がどんどん、驚愕に変わって行って………


「はぁぁぁぁぁぁあ?!マジで言ってんの?!え?えぇ?!あれだけ色々やっててまだ付き合ってないの?!うっそだぁぁ……」


そんな呆れた顔しなくても良いじゃん……


「いやだって…今更?何か?ねぇ?こうさ…」


「はぁぁぁ…あんたねぇ…私等もう直ぐ卒業だよ?このまま自然消滅で良いの?」


「それは、嫌だけど…そっか…卒業なんだよね…そっか…」


「そうよ?どうすんの?告白したら?好きなんでしょ?」


「うっ///それは…まぁ…その…はぃ…///でも、告白は…なぁ…ねぇ?」


「ねぇ?って言われても、こっちこそ、ねぇ?だよ。」


うぅ…分かっては居るけど、でも今更ね?告白とかしてもフラれるかもだし、陸くんからしてくれたら良いのになぁ… 


「でもそっか…もう直ぐこの制服ともお別れかぁ…」


私の呟きがとあるお昼休みの教室に消えて行った。


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「それで、どうしたら良いですかね?」


「そうだなぁ~…てか別に直ぐに言っても良いんじゃない?」


「だよねぇ…今更感も凄いし変に拘る事も無いと思うんだよね。」


「悠馬さんを目指してる陸さんですから、何か特別な告白をしたいと思うのは分かりますが…」


そうなんだよなぁ…ぶっちゃけ今更感が凄いんだよな。


「天音先輩の言う通りな部分もあります…悠馬先輩が星川先輩に告白したあの放送…あれは俺も後々話を聞いて、凄いと思いました。」


「あ、あれはぁさっ///今、それを持ち出されるとは思わなかったよぉ///」


好きを舐めるな!…ね…あの時は…なぁ…?


「あそこまでの事とは思いませんし、流石に出来ないですけど、それでも何か先輩の記憶に確りと残る様な告白がしたいとは思います…」


「構えすぎじゃ無いか?」


「え?どう言う事ですか?」


「あぁ、最初に言っておくけど別に陸の想いを軽く見てる訳じゃ無いからな?」


「はい。それは、まぁ…分かってますけど。」


「うん、俺が愛央に告白した時はさ……愛央、良いか?」


「うんっ。良いよ。」


「あの放送の前に俺は愛央をデートに誘って、ある公園で愛央に告白した。」


俺は愛央が好きだ。友達としてじゃなく一人の女の子として愛央が好きだと、俺で良かったら愛央の彼氏に、愛央と恋人になりたいと伝えたと…陸に伝えた。


「え?それなのに、あの放送したんですか?てっきりあの放送が告白でそれが切欠で付き合い始めたんだって思ってたんですけど。」


「フラれたんだよ。」


「えええ?!?!?!」


「あの時ね?私は自分に自信が無かった、何も特別が無いって思ってた…そんな私が特別の塊の様な悠馬の隣に立っても良いのか?ってそんな資格は私には無いんだって…そう思った、思ってしまったんだ。だから私は、一度、悠馬をフッた…」


「そんな事が…あれ?でもそんななのに悠馬先輩は何故?」


「泣いていたんだ。その時の愛央は、俺にごめんなさいと言った時の愛央は、泣いていた。」


愛央が泣いて居なければ母さんと話す事も無かったし、あんな放送もしなかっただろうな。


「だから俺は、愛央が何を気にしてるのか分からなくても何を思って俺にごめんなさいと言ったのかも一切聞いて無かったのもあって…だからそれなら全部ぶっとばしてやろうって思って、放送で俺の好きを舐めるな!ってやったんだよ。」


「そんな理由が…そんな事が…」


「健司も渚も舞台の整った場合で告白したし、翼は翼で付き合っては居ないみたいだけど、ほぼ恋人同士みたいな感じだから何かでってのは分かるけど……」


「そんなに構えなくて良いと思うよ。唯華はさ、高梨くんの事を何時も話してるし、その時の顔は私が悠馬くんの話をしてる時と同じだからさ。」


「あらっ。それなら何も心配はいらないですね。後は、高梨さんの気持ち次第ですね。」


「まぁ……今から残ってる舞台としては……ねっ?」


「はいっ!そこで決めます!遅いって怒られてもちゃんと伝えます!だって俺は…唯華さんが誰よりも好きだから!」


「それで良い。邪魔が入りそうなら俺等が何とでもしてやる。だから、決めちまえ!」


「はいっ!それじゃー話が纏まった所で激励会です!志保義姉さん、お茶いれなおして来ましょっ!」


「ふふっ。そうしましょうか。皆さん待っててくださいねっ。」


菜月と志保が部屋を出ていくのを見ながら俺は、頑張れよ!と心の中で応援した。


…………………………………………………………

先輩達と菜月さんに相談して数日した放課後、俺は唯華先輩と一緒に帰ってる。

一年グループ…稲穂組の皆にも俺の事を話してどうするかを話したら皆が皆、最初はまだなの?!と呆れられて、その後…応援してくれた。


「そ言えばっ!地味に久しぶりだよね?こうやって一緒に帰るの。」


考え事をしながら歩いて居たら先輩から声がかかった。


「確かにそうですね。卒業式の予行練習とかでしたもんね。」


「うん…卒業かぁ〜…早かったなぁ。」


「そうなんですか?」


「うんっ。最初の一年はそうでも無かったけど、去年からはね〜?」


「悠馬先輩です?」


「それは勿論そうなんだけど最初はYouMaの出現でしょ?それで騒いでる内に本人が学校に入学して来てさ〜。」


「確かに、慣れない内に本人の登場ですもんね。」


「そうそうっ!もう在校生は大混乱だよ?出来ない事あるの?!って男の子でYouMaでめっちゃフレンドリーで優しくて、こんな人居るんだ…って人がだもん。」


「それは確かに…今でもこの人は出来ない事あるの?って思いますし。」


「だよねぇ〜…そんな混乱がやっと落ち着いたと思ったら愛央ちゃんと付き合い始めて、それも落ち着いて来たと思ったら志保ちゃんの件があって…」


「伊集院先輩も恋人になって、説明会の事があってですもんね。」


「そうそうっ!!そして、大暴れしてくれた学園祭で…本当に一年が速かったよ。」


「分かる気がします。俺もこの一年は凄く速かったですし。」


うん、本当に速かった…初日から悠馬先輩達と絡んで毎日ワイワイ楽しくて、学園祭じゃ先輩の書いた話で映画を作って主人公をやって…


「悠馬先輩関係で振り回されての一年だったけど凄く楽しかったです。唯華先輩とも仲良く馴れましたし。」


「今年は今年で沢山の出会いがあって陸くんと仲良くなれて本当に速い一年で楽しくて…だから…だから…」


先輩は小声になりながら軽快な足が止まり立ち尽くす。


「だから……寂しいよ……卒業するのが清蘭の生徒じゃ無くなるのが、あり得ないくらい寂しい…」


気付けばぽろぽろと先輩は涙を流しながら立ち尽くす…俺はそんな先輩を見ていられずに、自然に抱きしめた。


「陸…くん…?」


「いきなり抱き締めてごめんなさい。でも、俺は先輩の悲しんだ泣き顔は見たく無いんです。ですから…泣き止むまで俺の胸を好きに使ってください。」


コクリと、一つ頷いた先輩は、俺の背中に手を回してキツく抱きついて…そのまま暫くの間、泣き続けた。


「大丈夫です。俺が居ます。ずっと側に居ますから、追いつくには少し時間が掛かりますけど、俺は先輩を追いかけますからね。だから先で待っててください。」


言いながら俺は一つの決意を固める。

寂しいと、吐露してくれた先輩の気持ちに俺が応える。

卒業するのはしかたない事だけど、貴女は一人じゃ無いと俺が支えますからと、繋がりを信じられる様に……


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