コント現代狂言 雷様

星一悟

ある雨の日

チャラ男「(チャラい格好で上を見る)うわー、夕立ゆうだちがふってきた。ないわー。」


雷様「ぴかーり!」


チャラ男「まぶしい!」


雷様「ぴかーり!ぐわらぐわらぐわら!がらがらがらがらがらがらがらがら!」


(雷様、ガラガラと言いつつ、その場で手を交互に上げ下げする。そして背中からコケる)


チャラ男「うわ、雷が落ちた!」


(雷様起き上がる)


雷様「いたやいたや…。」


チャラ男「ん?」


雷様「(手を袴にそえて大仰に)われは雷神らいじん雷様かみなりさまなるぞ。」


チャラ男「なんか出たよ」


雷様「雲間から地に落ちしときに、腰の骨をしたたかに打ちつければ、今の世は野があすふぁるとにて、筆舌しがたき痛さ。」


チャラ男「中途半端に言葉が古くね!?そこの派手な人、大丈夫すか?」


雷様「(ゆっくり大仰に)こしのほねを、したたかに」

チャラ男「腰打っちゃったんすね。分かります分かりますから、ハロウィンの人すか。」


雷様「西洋仮装とは片腹痛い。我はお主が生まれる前の、地球に酸素がないころから生きているものじゃ。」


チャラ男「無駄に壮大だな!どうしようかな…。そうだ!俺実は医者なんすよ。」


雷様「その風体でか?」


チャラ男「はぁ。まぁ仕事オフの日なんで。」


雷様「テイデーボーイというやつか?」


チャラ男「テイデーってなんすかそれ?」


雷様「東京大学」


チャラ男「東大すね、それ。慶應ボーイみたいに言っちゃってるけど。どっちの大学にも失礼だな。」


雷様「どこぞの者かは知らねども、腰の骨を治してくれぬかのう。(身を屈めて腰をチャラ男に傾ける)」


チャラ男「はいはい。けど、俺、専門は美容整形なんだよな。(雷様の腰を触る)この辺っすか?」


雷様「あなや!」


チャラ男「それともこの辺?」


雷様「あなやあなや!」


チャラ男「うめき声の癖が強い!でもこれ多分骨にヒビとか入ってないですよ。多分打撲じゃないかな。」


雷様「多分というのは、なしで。」


チャラ男「いや、ヒビってCTとかしないと分かんないですよ。」


雷様「CTとは?」


チャラ男「身体を調べる機械だけど。」


雷様「この雷の世話をするのに、機械で電気に鞭打つは、神として何たるドS。」


チャラ男「ドSとかどこで知ったんですか。仕方ない。そこのドラッグストアで湿布買いますんで、貼れば少しは楽になりますよ。」


雷様「湿布か。数百年前落ちた時に、どこぞの者に鍼治療された時よりマシかのう。」


チャラ男「何度も落ちてるのかよ。(ちょっと場から離れて戻り、袋から取り出す動作をする)はい、湿布。」


雷様「とくとく(早く早く)貼れい(腰をクイクイ動かす)。」


チャラ男「はいはい(湿布を貼る)。」


雷様「おお、効いてきた効いてきた。」


チャラ男「大丈夫すか?」


雷様「これはお礼をせねばなるまいな。」


チャラ男「あ、じゃあ湿布代だけでいいすよ?」


雷様「我は神ゆえ手持ちの金はないが、お礼に100年ほど日照りなく豊作にしてやる。」


チャラ男「スケールでかいな!でも、ぶっちゃけお金じゃないと嬉しくないなぁ。」


雷様「なんと!(真面目な顔で)神を有難がることなく、人心荒じんしんすさんで金が欲しいとは、今の人の世は哀れなものよ。ならば、我がどらっぐすとあの店員に…。」


チャラ男「バイトされても、お金の気持ちが重くて使いにくいよ!」


雷様「ならば、仕方あるまい。我の力で電気代を向こう100年ほどお安くしてやる。」


チャラ男「マジすか。あざーす(チャラチャラする)。」


雷様「は?(ジロリとチャラ男を見る)…今、なんと言った?」


チャラ男「いや、あざーす(首だけで礼をする)」


雷様「神の加護を前にして、感謝の念を感じぬその言葉と態度、少し修正してやろう。びりびりびりびり。」


チャラ男「痛い痛い!何か、お笑い芸人のビリビリより痛い!」


雷様「雷だけに早く気が変わった。お主の電気代安くするは今月の分だけじゃ。」


チャラ男「そんなぁ。」


雷様「さらばじゃ、ウハハハハ!」



(終わり)

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