第4話 フィンランドは本物だった
また、ある日陽三の父親がフィンランド人の友達(Korhonen通称コルホネ)を連れてきた。葉脈を切り取る息子の話を会社でしたところフィンランド人が興味があるというので自宅に招いたそうだ。北欧は他の地域と比較するとメンタル疾患の数も多くその系の論文も多くあるので興味深いと僕は陽三に語ったことがある。陽三はちゃんと覚えていてくれた、フィンランド人が我が家に来るので一緒に会わないかと誘ってくれたのだ。
陽三はコルホネ(凝る骨)とイメージし、筋骨隆々タイプを想像していたそうだ。実際のコルホネ氏は背の高い痩せた白人だった。イギリス人であれフランス人、いやアメリカ人と言われても全くわからなかったと思うくらいに色素の薄い人種。しかも会話に困らない程度には日本語をしゃべることができた。
陽三が「葉っぱのにおいが好きだ」と言うと、コルホネ氏は祖国フィンランドでの白樺の葉っぱの話をするのであった。白樺の葉が茂るころ、フィンランドでは葉の付いた枝を集め片手で持てる程度の束をつくり、乾燥させる。その束のことを「ヴィヒタ」 と呼ぶ。サウナで使う時に、水でもどし、やわらかくなった「ヴィヒタ」で皮膚を刺激する。サウナの中に自然の香気が立ち込めて多幸感をもたらす。
陽三は白樺の葉脈をひたすら掘り起こしたいと望んだ、コルホネ氏はフィンランドの自宅に招待してくれるという。なんと自宅にはサウナがついているそうだ。コルホネ氏と陽三が初めて会ってから3週間後、陽三はフィンランドに行き、「ヴィヒタ」付きサウナを体験をすることになった。
帰国した陽三は15歳の少年が知りうるだけの言葉で「気持ちが良い」「癒された」「居心地が良い」「気分が良い」「すごく良い」と語ってくれた。フィンランドから帰国した陽三と僕は、なんとなくお互いの進むべき道を見つけた安堵感に満たされた。陽三はフィンランドの植栽、森林が放つ香気に完全にはまってしまったそうだ。
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