第14話 不機嫌
「おっはよー」
週が明け、登校した三咲が元気に声を掛けた。
「…おはよ」
絵梨はぶすっとして窓の外を見る。三咲は気を遣った。
「この間はごめんね。おじさん、簡単に言っちゃったけど、あの木ってお店のシンボルツリーなんだよね。後から気付いたんだ。そう簡単な話じゃないよね。絵梨のお父さんとお母さん、怒っちゃったんじゃないかって佳太おじさんも微妙に心配してた。そんなすぐに倒れるとか、ないみたいだし」
絵梨は机の上をじっと見て黙って聞いている。三咲は構わず続ける。
「だからさ、あたし、おじさんに聞いたんだ。延命方法はあるのかって。そしたらコブとか幹のガサガサになってるところに殺菌用のペースト塗ったりしたらいいかもって。ま、それでもさ…」
ガタッ。 突然絵梨が立ち上がった。
「あ? 絵梨?」
三咲は無言の絵梨に気圧される。
「放っておいてくれる? 悪いけど」
低い声で言うと絵梨は席を立ち教室を出てゆく。三咲は呆然と見送るしかなかった。
いや、もう始まるけど… ショートホームルーム。
間もなくチャイムが鳴って、先生が入って来た。教壇に立ち、教室をぐるりと見回す。
「あり? えっと、垣内の後ろって誰だっけ? あ、皆藤か。ん? 休みか?」
三咲は手を挙げる。
「いえ、ちょっとお腹痛いってトイレです! 彼女、重い方なので」
「重い? 体重か?」
「先生、酷いですねそれ。女の子特有の重い奴です!」
「あー、甘いもんの食い過ぎか。ま、いいや」
何をトンチンカンなことを…と思ったものの、三咲は敢えてそれ以上抗議しなかった。
「ほんじゃホームルーム始めるぞ。今朝、国道で事故があったみたいでな、他の先生が渋滞で遅れてんだよ。だから予定変えて1時間目はそのままホームルームを続ける。委員とか決めるの忘れてたからな、えっと出席番号の最初と最後のやつ、司会して、ここに書いてる委員を決めといてくれ。俺、これから3クラス回らんといかんから、付き合えないんだわ、悪いけど頼むわ」
先生は一方的に喋るとドカドカと出て行ってしまった。三咲は立ち上がり、先生からプリントを預かった出席番号1番の男子の所へ行った。
「ねえねえ、それちょっと見せて」
言いながらプリントをふんだくる。
「あ、じゃあさ、あたしと皆藤さんで、この生き物係やるから。よろしくお願いね」
三咲も一方的に喋ると教室を抜け出した。
「生き物係? そんなの、どこに書いてんだ?」
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