第8話 顔合わせ

ハァーハァーハァー・・・・・


【来るべき日】に備え前田が密かに用意したレッスン場で自分と向き合う『大空望(おおぞらのぞみ)』。


(なんでだろう・・・・・何万回と見て、何千回と練習してきたのに納得がいかない。これは・・・・・望さんじゃない。こんなんじゃ望さんとして舞台に立てない)


ガチャ・・・・・


振り向くと唯一自分のことを知る男が入って来た。


「社長・・・・・お疲れ様です」


「明日から、本格的に『スカイプロモーション』所属のアイドルとして活動していくぞ」


「!?待ってください!!まだ私、望さんのようには・・・・・・」


「心配するな、表舞台は当分先だ。まずは事務所のメンバーにお前を認知してもらう。勿論『大空望(おおぞらのぞみ)』としてな」


「・・・・・」


「舞台裏の『大空望(おおぞらのぞみ)』は頭に叩き込んだか」


「それは・・・・・はい」


「大丈夫だ。この前確認した限り余程のことが無い限り、正体がバレることはない」


「・・・・・」


「どの道お前がデビューするには事務所の奴らと顔合わせは必須だ。これは避けられない」


「それはそうですけど・・・・・」


「明日に備えて今日は休め。疲れでボロが出たら洒落にならないからな」


「わかりました」


伝えたいことを言えぬまま、『大空望(おおぞらのぞみ)』は取り残された。



「皆すまんな忙しい時に」


前田は『スカイプロモーション』の面々を集める。


「社長~。私ようやく決まった収録の時間あるので手短にお願いします!」


宮崎美空(みやざきみく)は時計を確認して前田を急かす。


「・・・・・地方のロケでしょ、そんなに張り切らなくていいでしょ」


園田真由美(そのだまゆみ)は溜息を溢しながら呟く。


「真由美ちゃん。1つ1つの仕事でベストを尽くすのが大事だよ!?ねっ社長?」


「そうだ。せめて結果を残してからそういう発言をしてくれ園田」


「・・・・・失礼しました」


「まあ宮崎の移動時間もあるからな手短に。・・・・・新人が入るから顔合わせだ!」


「お~~後輩だ~~」


時間を忘れ喜ぶ美空(みく)。


「よく雇えましたね」


真由美(まゆみ)は前田に毒づく。


「全く情けないわね。何よこの現状」


前田の後ろの扉が開くと事務所の元スターが何食わぬ顔で現れる。


「えっ・・・・・」


「のっ、望さん!?・・・・・望さーん!!」


『大空望(おおぞらのぞみ)』に抱き着く美空(みく)。


「美空(みく)。その元気の空回りスタイルはやめて少しは頭を使って立ち回りなさいって言ってるわよね?この間の『リバハー』またその場のノリだけになってたわよ!」


「望さん~~見てくれたんですか~~」


(キャー!!宮崎美空(みやざきみく)に私ハグされてる~~!!)


「お久しぶりです望さん」


「真由美(まゆみ)。事務所のタレントとして活動するんだから自分の志向だけじゃなくて、色々な方面にもっと力を入れなさい」


「・・・・・気を付けます」


(園田真由美(そのだまゆみ)さんにお説教しちゃった私~~~)


「・・・・・ところでどうされたんですか望さん?」


「うちの現状を憂いて復帰してくれることになった」


「本当ですか~~~!?」


テンションが限界突破する美空(みく)。


「仕事はセーブしていくつもりよ、あくまで今のうちの主役は貴女達だからね」


「私!頑張ります!!」


「マネージャーどうするんです。・・・・・・高西さんいませんけど」


(高西さん?・・・・・その人が望さんのマネージャーだったのかな?)


「心配無用だ。専属マネージャーは手配してる。お前達のマネージャーも変更は無い」


トントントン


「噂をすればだな。入ってくれ」


「失礼します」


丁度『大空望(おおぞらのぞみ)』の専属マネージャーが部屋に入る。


「!?」


入ってきたのはサングラスをかけた。一人の女性だった。





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