第4話 彼女との出会い

地下アイドルとしてのライブが控える『大空望(おおぞらのぞみ)』と別れた叶と前田はひっそりと『スカイプロモーション』に戻った。


「彼女を認めてくれて助かった。ありがとう」


社長室に入って早々。前田はお辞儀する。


「説明していただけますよね?」


表情を変えず恩人を見下す叶。前田は頭をあげると慎重に語り始めた。


「始めに言っておくがあの娘の事は、俺とお前以外誰も知らない」


「えっ?」


「俺がプロデュースし、他の事務所のタレントと遭遇しないように最新の注意を払っているからな」


「……………」 


「今は『大空望(おおぞらのぞみ)』似のアイドルとして地下でのみ活動しているがゆくゆくは『大空望(おおぞらのぞみ)』として表舞台に立たせる」


「そんなこと可能なのですか?」


「望みは薄い。俺のプロデュースだけでは限界があるからな」


「でしょうね。今のネットの情報拡散力舐め過ぎです」


「……………辛辣だな」


前田は棚に置いてあるウオッカを取り出すと氷を入れたコップを2つ用意し注ぐ、叶は手をつけなかった。


「だが、お前が協力してくれたら話しは別だ」


「私が協力!?」


余りにも想定外の案に唖然とする叶。


「お前に半月、1周間…………いや3日でもいい。みっちりレッスンしてあの娘を『大空望(おおぞらのぞみ)』にして欲しい」


「なんで私が?」


「『大空望(おおぞらのぞみ)』を継承するには、『大空望(おおぞらのぞみ)』が直接指導しなきゃそれはもう『大空望(おおぞらのぞみ)』じゃない」


「……………何故そこまであの『大空望(おおぞらのぞみ)』に拘るんですか?」


「さっき話した通りあの娘が門を叩いたのが2週間前だ……………」




その日。前田は1人社長室で苦悩していた。


(売上500万……………利益換算すると200万か。これ以上人件費を減らすのは死活問題だ。どこを削る?いやどこが削れるんだ……………俺の給料これ以上下げれないが、あいつらもギリギリまで給料減らしてもらってるからそんな提案はもう出来ない。事務所を縮小しようにも引越しの予算も無い。どうすれば………)


降りしきる雨は何も答えてはくれない。そんな中


ピンポーン・・・・・ピンポーン・・・・・


(・・・・・誰だこんな時間に、・・・・・・全員上がってるな。)


「はい。『スカイプロモーション』です」


「・・・・・・・」


「どちらさん?」


「・・・・・・」


(いたずらか?フード被ってて顔がわからない)


不信がりながら扉を開ける前田は、その容姿に驚きを隠せない。


「・・・・・お前なにしてる?そんなずぶ濡れで」


そこには自分が手塩をかけて育てたトップアイドルが立っていた。


「芸能事務所『スカイプロモーション』の社長の前田俊典(まえだとしのり)さんですよね?」


(!?あいつじゃないのか?にしては顔も声もそっくりだ・・・・・・)


「私を・・・・・『大空望(おおぞらのぞみ)』として、プロデュースしていただけませんか?」


ずぶ濡れの少女は雨が降りしきる中高らかとそう宣言した。

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