第14話 憎しみ

2018年2月6日 AM7:00


「うっ・・・」

目が覚めた時、絵美は隣に眠っている男を見つけた。


あの時。

6年前に混乱させられた風景である。


ここはラブホテルのベッドの上。

痺れる頭はカクテルに入れられた睡眠薬のせい。


あの時は。

混乱するまま、部屋を飛び出した。


呼び止める男から逃れるように。


だが、遅かった。

男の子種を宿してしまったのだ。


身体の痛みを感じながら絵美は衣服を身に着けた。

今更遅いが、騒いで逃げるのも嫌だと思った。


男は、夫であった宏はスヤスヤと眠っている。

憎しみが湧きあがる。


自分と優君の恋を踏みにじり、人生を狂わせた男に。


12月23日に絵美はタイムワープした。

コンパに出席し、優太と一夜を共にするために。


だが結局、踏み出すことはできなかった。

娘が、唯奈がこの世から消えることに耐えられなかったから。


絵美は悲痛な想いで決心したのだ。

「初めて」を宏に奪われ、子種を宿すことを。


優太には真実は告げられない。

歴史が変わり、唯奈を受精することが出来なくなるからだ。


ほんの少しの変化も作ってはいけない。

過去と同様、ラインには触らないようにしよう。


6年前も優太は悩んで連絡してこなかったから。


会いたい。

優太に会いたい。


でも。

唯奈のために我慢するのだ。


そして。

2月6日の今日。


ようやく、優太に真実を打ち明けらえる。


信じないかもしれない。

それでも、いい。


その時は、一人で唯奈を育てる。


少なくとも不幸な結婚は避けられる。

優太も沙也加と縁を切ることができるだろう。


だけど。

不条理な想いがこみあがる。


宏と沙也加。

二人の策略に人生を狂わされたのだ。


怒りで震える感情を押さえながら。

絵美はホテルのドアを開けて、出て行くのだった。

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